PayPayドームのアサヒビールで月間1位に輝いた「ななか」さん ペナントレース開幕から2か月半が経過した2022年のプロ野球。新型コロナウイルスの影響で2年間は無観客や入場制限の中での試合が続いた。まだ感染防止策の徹底は必要なものの、今季…
PayPayドームのアサヒビールで月間1位に輝いた「ななか」さん
ペナントレース開幕から2か月半が経過した2022年のプロ野球。新型コロナウイルスの影響で2年間は無観客や入場制限の中での試合が続いた。まだ感染防止策の徹底は必要なものの、今季は3年ぶりに入場制限が撤廃され、スタンドには満員の観客が戻り、スタジアムが熱気に包まれるようになった。
ソフトバンクの本拠地PayPayドームでも、それは同じ。入場制限が撤廃され、6月11日と12日に行われた「タカガール・デー」では3年ぶりの満員御礼となった。野球ファンにとって待ち望んだ満員のスタジアム。これを喜んでいたのは各球場の“華”となるビール売り子も同じだ。
PayPayドームのアサヒビール、キリンビールの“トップ売り子”たちは、ファンが戻ってきたスタジアムで、どんな思いで働いているのか。ビールの売り上げは、コロナ禍前の近い水準まで回復してきたという。そんな中で両メーカーでトップと言われる売り子はどうやって売り上げを伸ばすのか。連載「福岡発 売り子名鑑2022」として、トップ売り子たちの思考に迫る。
第1回はアサヒビールの4月度、5月度売り上げNo1の「ななか」さん。
高校生の頃に訪れたPayPayドームで見かけた売り子に心奪われたななかさん。「1回だけ友達に誘われてドームに来たら、凄く可愛い売り子さんがいて……。私も売り子になれば、その人と友達になれるかなと思って」。大学入学を機に売り子に挑戦し、今季がラストシーズンとなる。
「売り子の動きが早いエリアは売れている。そういうのも見て判断しています」
「とにかく楽しいです。確かにキツいのもありますけど、いろんなお客様がいて、色んな人と話せるし、普通の飲食店ではできないような経験ができていると思います」と売り子の魅力を語る。今季実施された「ビール半額デー」では、自己最高売り上げとなる1日409杯を記録した。
なぜ、ななかさんはトップ売り子に上り詰めることができたのか。「自信を持つことだと思います。私が背負っているビールは他のものよりも50円高く、断られることもあります。ただ、それをマイナスに捉えず、自分のビールに自信持ち、自分が一番楽しむことが大事。自分が1番楽しそうにしていることも大事だと思います」という。
もちろん周囲を見る観察力、洞察力も必要だ。ドーム内の人の流れ、売り子の動きを読むことは売り子に必須だ。「それは1、2年目の時に無意識にできるようになりました。あまり自分は考えて動くタイプではなく勘で動くタイプ。ただ、売り子の動きが早い、早く歩いているエリアは売れているエリア。そういうのも見て判断しています」とななかさんは言う。
昨季までの2年間はコロナ禍で、ほぼ売り子として活動することはできなかった。「他のバイトをしたりもしましたし、コンコースの売店でビールを売ったりもしました。でも、それは売り子じゃない。やっぱり売り子をしたいという気持ちはありました。自分が卒業の年だったら相当キツかっただろうな。そうやって辞めていった先輩たちもいたので」と振り返る。
5月度もアサヒビール全体で売り上げ1位に輝いた。「3月、4月と1位にならせていただいて、その時から、今季は毎月1位を獲ることを目標にやっています」と残る“売り子人生”に意気込む。トレードマークは金の装飾が施された帽子。先輩売り子から代々受け継がれているものだ。コロナ禍の苦しみを味わったからこそ分かる満員のありがたみ。売り子たちも喜びを感じながら、スタジアムでビールを売っている。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)