U−19日本代表「ダイヤの原石」@海外組編 南フランス開催のモーリスレベロトーナメント(旧トゥーロン国際大会)に参加した…
U−19日本代表「ダイヤの原石」@海外組編
南フランス開催のモーリスレベロトーナメント(旧トゥーロン国際大会)に参加したU−19日本代表を率いるのは、東京ヴェルディの監督やレアル・ソシエダの育成部門で研修した経験を持つ冨樫剛一監督。彼の脇を固めるスタッフには、船越優蔵コーチ、川口能活GKコーチ、内田篤人ロールモデルコーチと、現役時代に活躍した人物が揃う。
2003年1月1日以降に生まれた世代を集めた今回のU−19日本代表には、海外クラブに所属する選手も招集された。そのうちふたりは、日本国内ではなく海外現地育ち。国際色の豊かな"令和らしい"代表でもある。前回の「国内組」に続いて、次は「海外組」の3人を紹介する。
「日の丸を背負って"キャラ変"した選手も...」

バルサの下部でプレーする16歳のDF髙橋センダゴルタ仁胡
★髙橋センダゴルタ仁胡(たかはし・センダゴルタ・にこ/DF/16歳/バルセロナ・フベニールB)
2005年8月16日生まれ、スペイン・バルセロナ出身。日本人の母親とアルゼンチン人の父親の間に生まれた。今回招集されたU−19日本代表メンバーのなかでは最年少で、バルセロナのフベニールB(U−18に相当)に所属している。
日本に住んだことはないと言う。しかし、「いつもお母さんとは日本語をしゃべっとるけど、難しい言葉はもしかしたら......」と、ペラペラな関西弁を操るアンバランスさが面白い。
現在はスペイン、アルゼンチン、日本と、3つのパスポートを持つ。2001年にはU−16スペイン代表に招集されたこともあったが、日本代表を目指すために日本を選択することになるだろう、とのこと。
幼少期はフットサルにも親しんだ。その影響もあってか、左足の正確なキックを武器とし、今大会のコモロ戦には左サイドバックとして先発出場している。
代表でのプレーについて、髙橋はこう語る。
「バルセロナとちょっと(やり方は)違うけど、ちょっとずつ慣れていくところ。バルセロナはもっとボールが動く。でも、代表には代表のサッカーがあるから、僕がアダプト(適応)せないかんと思います。
日本代表ってインテンシティが高い。ちゃんとチームで働かなきゃあかん。プレッシャーに行くのも日本のほうが多いかも」
コモロ戦での先発起用に関し、船越優蔵コーチは「体も細いし、まだまだなところはありますけど、よくやってくれたと思います。いいものを持っているから先発に起用したし、この短い期間でもぐっと成長してくれるんじゃないかなと思います」と期待を寄せていた。
髙橋も今後の活躍を誓う。
「全部100パーセント出したけど、試合はちょっと違う結果(0−0の末にPK負け)になっちゃった。みんな頑張って勝てると思ったし、チャンスはあったけど、ちゃんとゴールしなかったから負けちゃった。次はもうちょっとボール(を大事にすること)かな。それでチャンスある時はちゃんとゴールする」
★前田ハドー慈英(まえだ・ハドー・じえい/DF/18歳/ブラックバーン・ローバーズU18)
2004年4月2日生まれ、香港出身。日本人の母とイギリス人の父を持ち、12歳でイギリスに渡った。イングランド・チャンピオンシップ(2部相当)に所属するブラックバーンのU18チームに所属し、すでにU23チームでもデビューを果たしている。
言語は英語と日本語だけでなく、「インターナショナルスクールだったので、広東語でなくてマンダリン(中国語の標準語)」も操る。彼も「難しい話は......」と前置きしつつ、取材に対応した。
日本代表への思いは人一倍熱い。「子どもの頃からいつも日本(のことを考えていた)。2歳の時から日本サッカーのシャツを着たりしていた。これ(日本代表に入ること)は夢。日本は私の心です」と目をキラキラと輝かせる。
ポジションは右サイドバック。フィジカルの強さとアグレッシブな上下動で、パワフルなプレーを見せてくれる。
ブラックバーンでは、いわゆるイングランドのフィジカルサッカーの色が強いようで、日本代表でのプレーは新鮮だという。
「めっちゃいいです。みんなのサッカーの技術のレベルがめちゃめちゃ高くて、私はそれに習っている。いい経験ができています。私の感想ですが、イギリスのクラブよりも技術レベルはとても高い。イギリスはフィジカルだけ。日本はエネルギーとかフィットネスとか、考えるスピードとか全部高いと思う」
また、チームプレーや戦術的な戦い方も印象に残るようだ。
「めちゃタクティカルで、集中してチームワークが高い」
出場したアルジェリア戦やコモロ戦では、攻められ続けながらもチームとしてなんとかはねのけた(アルジェリア戦は1−0、コモロ戦はPK負け)
「90分間、一生懸命にチームとして頑張れるのは日本のよさだと思います。日本人はそういうとこ、めちゃ強いと思う」
自身については「私のスタイルはフィジカルの強さであったり、アグレッシブなプレーであったり。イギリスのスタイルですね。クロスを見てほしい。今、代表活動をとても楽しんでいます。みんな優しく、いい経験ができているので、クラブに帰ったらここでの経験を使ってもっと頑張ります!」
今後に期待大だ。
★二田理央(にった・りお/FW/19歳/ヴァッカー・インスブルックU−23)
2003年4月10日生まれ、大分県佐伯市出身。中学卒業後からサガン鳥栖U−18に所属し、2021年6月の横浜F・マリノス戦でJリーグデビューを果たす。
同年7月にはオーストリア2部のヴァッカー・インスブルックの練習に参加。そのままU−23チームへの期限付き移籍が決まり、今年1月からインスブルックのトップチーム所属となる。現在5試合に出場(うち先発2試合)して1得点を挙げている。
「裏抜けが得意」な俊足フォワードだが、「パスや時間を作ることも、ここ(U−19日本代表)では求められる」と、プレーの幅を広げようとしているようだ。
「この代表チームはうまい選手ばかりで、チームプレーという感じがとても強い。自分のチームと全然違うんですけど、日頃の練習からコミュニケーションをとって、試合を重ねるごとに仲間と合わせていければいいかなと思います」
前出のふたりと同じく、個ではなくチームでの戦術的な戦いが印象深いようだ。また、10代で日本も欧州も両方経験しているからこそ感じるものもある。
「やっぱり代表は、ひとつひとつのプレーに質の高さがあります。海外では少しパスが雑になったりすることもあるんですけど、自分のチームではある程度雑なプレーでもそのままやっちゃうんで、トラップを失敗したらトラップした人のせいになっちゃう。
一方、ここでは緊張感があるというか、パスもしっかり出して、練習中から本当に集中してやらないといけない。そういうのが本当に徹底されていて、すごいなと。でも、そうすることでうまくなることはあると思う」
インスブルックに行っても、日本国内の状況は気になっていたという。
「これだけJリーグに出て活躍している同世代の選手を見ると、やっぱすごいなと思う。自分も負けてられないなという感じになります」
二田の期限付き移籍は6月30日いっぱいで、今後については未定なのだという。現在、インスブルックは破産を発表しており、クラブ存続の危機に立たされている。
「欧州でチャレンジできるところまで行きたい、やっぱりヨーロッパで活躍したい。でも、日本でプレーしたい気持ちもあるんです」
可能性は、欧州にも日本にも広がっている。
反町康治技術委員長によれば、海外在住でJFAの情報網にキャッチされてこなかった現地拠点の日本人選手は、まだまだいるとのこと。今回紹介した彼らも、もちろん国内組のメンバーも、うかうかしてはいられない。