並木月海インタビュー(前編) 東京五輪ボクシング女子フライ級で銅メダルを獲得した並木月海は、幼少の頃に那須川天心と出会い、以来、交友を深めてきた。その天心が、6月19日に開催される『THE MATCH』にて武尊と世紀の一戦を行なう。そんな大…
並木月海インタビュー(前編)
東京五輪ボクシング女子フライ級で銅メダルを獲得した並木月海は、幼少の頃に那須川天心と出会い、以来、交友を深めてきた。その天心が、6月19日に開催される『THE MATCH』にて武尊と世紀の一戦を行なう。そんな大一番を前に、幼馴染である並木は何を思うのか。
東京五輪ボクシング女子フライ級で銅メダルを獲得した並木月海
天心は少しずつチャラくなった
── 東京五輪ボクシング女子フライ級で銅メダルを獲得した並木選手ですが、あの那須川天心選手と幼馴染みだとか。
「はい。4歳の時に兄姉の影響で極真カラテを始めたんですけど、それが縁で知り合いになりました。初めて出場した幼稚園の年長クラスの試合の決勝で天心と対戦して、負けたんです。その後も小学校2〜3年生のクラスの決勝で対戦してまた負けちゃったんですよね。所属していた道場は違ったのですが、対戦をしたことをきっかけに親同士が仲良くなって、それ以来、家族ぐるみでおつき合いするようになったんです」
── そうだったんですね。その後、小学校4年生の時に那須川選手に誘われてキックボクシングを始めたと聞いています。格闘技が身近にあったんですね。
「格闘技が生活の中心にあるのは当たり前だったので、小学生の頃はなにも不思議に思わなかったんですね」
── 極真カラテはルール上、顔面への突きが禁止されていますが、キックをやってすぐに顔面には対応はできたんですか。
「あまり考えてなかったというか、スッと入れた印象でした(笑)」
── さすがです(笑)。那須川選手は当時、どんな少年でしたか?
「小さい時はかわいかったんですけどね(笑)。身長も私と同じぐらいで、チビふたりみたいな感じだったんです。ただ途中から、少しずつチャラくなっていきました(笑)。同時に口も達者になっていった。でも注目を浴びる立場になると、ちゃんと発言できなきゃいけないですからね。私自身、以前よりはしゃべれるようになりましたけど、まだまだなので、そこはすごいなと思います」
── いや、十分しゃべれてますよ(笑)。その後、並木選手は中学生の時にボクシングに転向するわけですが、競技が変わっても那須川選手との交流はあったのですか?
「とくに高校時代は天心のジムによく通って一緒にスパーリングをしていました。アマチュアボクシングは試合が少ないので、天心とのトレーニングは、自分のプラスになりましたし、すごくいい刺激になりましたね」
── その頃は格闘技界で那須川選手の知名度が上がっていった時期ですね。スターになりかけている那須川選手をどんな思いで見ていたのですか。
「いや、とくに(笑)。本当、幼馴染みすぎて、有名人とは思えないというか......。テレビとかで見かけても普通に『あ、また出てるわ』みたいな感覚だったんですよ。ただ、同じ格闘技をやる人間として、天心がこの業界を盛り上げようとしているのはすごくわかったし、私も負けてられないなって思わせてくれる存在だったことは間違いありません。とはいえ、『小さい時から変わらないなあ』と思っていつも見てましたけど(笑)」
武尊との一戦は...楽しんでほしい
── そんな那須川選手が6月19日に開催される『THE MATCH』で武尊選手と対戦します。もちろん那須川選手を応援すると思いますが、どんな戦いをしてほしいですか。
「うーん、別にKO勝ちしてもらいたいとかは思わないんです。私自身、競技をやっているからこその感覚なのかもしれませんが、まずは楽しんでほしいなっていうのが本心です。すみません、つまらなくて(笑)」
── いやいや、よく知る人間だからこそのリアルだと思います。プライベートで食事とかする時に「武尊選手と戦いたい」みたいな話とかは出ていたんでしょうか?
「そういう話も軽くはするんですけど、お互い『格闘技の話はちょっとおいといて』みたいな感じなんですよ。だから共通の知り合いの話題とか、本当に他愛のない話ばかりなんです」
── そんな身近な人間が東京ドームの試合でメインを張るわけですから、何だかすごい話ですよね。
「それはホント、素直にすごいと思います。なかなかそこまで世間に注目を浴びるってことはないじゃないですか。だから刺激を受けるんですよね」
── 並木選手は「女子ボクシングの知名度を上げたい」という思いがあると聞いています。
「そうですね。プロとの差ばかりでなく、アマチュアボクシングは日本と海外でも認知度が違うんです。選手として海外に行くと、試合場にすごいお客さんが集まっていて盛り上がっている。日本で世界選手権を開催しても、なかなかそうはいきません。そういった海外の環境を肌で知っているからこそ、私としてはもっと女子ボクシングを知ってもらったり、盛り上げることができたらなって。そういう意味で、天心のやっていることはすごいなって思うし、とにかく本人が満足のいく試合をしてもらいたいなって」
── 那須川選手はこの試合を最後にキックからボクシングに転向しますが、ボクサーとして並木さんからご覧になって、どれほどの可能性を感じていますか。
「センスも高いですし、努力家でもあるので、きっと頑張ってくれると思います。プロとアマの違いはありますが、また一緒の競技になるということで、この世界を盛り上げていけたらなと思います。刺激しあえる仲として、私自身、おいていかれないように頑張っていきたいと思います」
後編につづく>>
並木月海(なみき・つきみ)
1998年9月17日生まれ、千葉県成田市出身。153㎝・フライ級。自衛隊体育学校所属。家族の影響で4歳から極真カラテ、小学4年から幼馴染である那須川天心の誘いでキックボクシングを始め、中学2年から本格的にボクシングに取り組む。花咲徳栄高校時代に全日本女子選手権ジュニアの部、全国高校選抜で優勝。2018年の世界選手権では銅メダルを獲得。昨夏の東京五輪で銅メダルに輝く。