真中満インタビュー前編「新監督の序盤戦通信簿」2022年シーズンは、北海道日本ハムファイターズ、福岡ソフトバンクホークス…
真中満インタビュー
前編「新監督の序盤戦通信簿」
2022年シーズンは、北海道日本ハムファイターズ、福岡ソフトバンクホークス、そして中日ドラゴンズの3球団が新監督の下、ペナントレースに臨んでいる。それぞれ新庄剛志、藤本博史、立浪和義の3新監督について、自身も監督としてヤクルトスワローズを優勝に導いた経験がある野球解説者の真中満氏に、ここまでの戦いぶりを評価してもらった。

開幕前に話題を呼んだ新庄剛志監督の評価は?
「ビッグボスにひとつだけ注文がある」
ーー開幕から2カ月以上が経過した今、それぞれの新監督について解説していただこうと思います。
真中満(以下、真中) 今シーズンは開幕前から「ビッグボス」の話題で持ちきりだったから、まずは日本ハムのビッグボス、新庄剛志監督からいきましょうか。キャンプ、オープン戦はほぼビッグボスの話題ばかりでしたよね。もともと、彼はエンターテイナーだからメディアの使い方がとてもうまい。どうすれば話題になるのかということを知り抜いていますよね。
ーー実際にペナントレースが始まって、ここまでの戦いをどう見ていますか?
真中 ちょっと失礼な言い方になるけど、今年の日本ハムの、特に野手の場合は「レギュラー確定」と言える選手は近藤健介くらいしかいなかった。その近藤も故障で離脱してしまった。ビッグボスとしては手探り状態のまま若手を起用せざるを得なかった。それが実際のところだったと思うんです。そうしたなかでは順調にきていると思いますね。
ーーどういう点が順調だと思いますか?
真中 清宮幸太郎、万波中正、野村佑希、今川優馬......、こうした若手たちに刺激を与えながら競わせつつ積極的に起用して、それぞれが成長のきっかけをつかんでいる点は順調だと思いますよ。

インタビューに応じる真中満氏
photo by Sportiva
ーー確かに、去年までのメンバーとはガラリと変わって若手の台頭が目立っています。交流戦が始まったヤクルト戦での熱戦など、善戦も続いている印象があります。
真中 その点は監督1年目の戦い方でいいと思うんです。今はまだ様子見の部分もあります。手探りで選手たちの適性を見極めたり、可能性を探ったりしながら、善戦して経験を積んでいけばいい。でも、2年目からは勝ちに徹する采配が求められていく。本当の真価は、新球場が完成する来年以降じゃないのかな? 采配面じゃないけど、僕からもビッグボスに注文があるんですよ。
ーーどんな注文でしょうか?
真中 彼の場合、キャラクター的に弱いところを見せられないタイプでしょう。だから勝った時はいいけど、負けた時は広報を通じてコメントしたり、時にはノーコメントだったりすることもある。でも、たとえ負けたとしても、自ら表に出てコメントしたほうがいいと思うんですよね。僕ら伝える側も、最大限にビッグボスの思いを伝えるように頑張るから、ぜひ「生の声」を聞かせてほしいんですよね。
ベテランと若手の新陳代謝を図るソフトバンク
ーーでは、ソフトバンク・藤本博史監督はいかがでしょうか?
真中 前任の工藤公康監督もそうだし、その前の秋山幸二監督もそうだったけど、ソフトバンクの場合は豪打が注目されがちだけど、基本的には投手を中心に守備力で守り勝つ野球なんですよ。そういう意味では、藤本監督も歴代監督を踏襲している感じがしますね。
ーー戦い方については、大きな変化は見られませんか?
真中 もともと、戦力も充実して強いチームが、去年はたまたまBクラスになっただけだから、大きく変える必要もないし、選手たちも実力のある選手ばかりですから。ただ、そうしたなかでも栗原陵矢の負傷離脱があったりしたことで、若手選手をさらに積極的に起用しようとしている姿は見受けられますね。
ーー今年は高卒6年目の三森大貴選手、大卒3年目の柳町達選手など、若手選手の出場機会も増えていますね。
真中 松田宣浩も39歳になったし、柳田悠岐も34歳になる。黄金時代のメンバーに代わる次の世代を育てようという意思は感じますよね。千賀滉大、石川柊太、武田翔太がまだ健在のうちに、守りながら若手の台頭を待つ。そういう意図が感じられます。
ーー現在、楽天と首位争いをしていますが、今年のソフトバンクは新陳代謝を図りながら、優勝争いに絡んでいきそうな気配を見せています。
真中 楽天も投手がそろっているし、それほどソフトバンクを苦にしていないから、いい勝負をすると思いますよ。先ほどのビッグボスもそうだけど、藤本監督も「今後はこうやって戦っていこう」という方向性は見つけていると思いますね。その点、中日の立浪監督はまだ手探り状態が続いている気がしますね。
「我慢」が続く、中日・立浪監督
ーーでは、その中日・立浪和義監督については、どんな印象をお持ちですか?
真中 立浪監督は「我慢」という印象ですね。これからチームを背負っていく石川昂弥や岡林勇希を積極的に使っているし、試合終盤でも交代させようとしませんよね。たとえば、平田良介や福留孝介が控えていても、石川、岡林に経験を積ませようとしています。これはやっぱり、「我慢」ということだと思いますね。
ーーシーズン序盤には、試合中に京田陽太選手の2軍降格を決め、「強制送還」したこともありました。
真中 立浪監督と京田の間に何があったのか、どんな会話をしていたのかは僕にはわかりません。僕もあのプレーは見ていたけど、確かに京田の動きは緩慢に見えました。でも、彼をかばうわけじゃないけど、2軍では故障で休んでいたわけだから、足の状態はよくなかったと思います。当然、立浪さんもそれは知っていたはずだから、やっぱり京田に発破をかける意味だったと思いますね。
ーー一方では、中村紀洋コーチを1軍から2軍へ配置転換したことも話題となりました。
真中 これも、外から本当のことはよくわからないけど、シーズン中にコーチの配置転換をするというのは異例なこと。僕だったら、ちょっとためらうと思います。でも、理由はどうであれ、コーチのテコ入れを企図するなど、立浪監督は決断力があって行動力があるのは間違いない。リーダーらしいリーダーだと言えるかもしれないですね。
ーー先ほど、立浪監督については「手探り状態が続いている」とのことでしたが、あらためて詳しく教えてください。
真中 先ほど名前を挙げた石川や岡林、あるいはルーキーの鵜飼航丞など、期待の若手はいっぱいいます。長年、「バッティングが課題だ」と言われてきた中日にとって、若手野手の育成は急務です。そうした現状下で、これらの若手野手をどこまで使い続けることができるのか? もし、結果が出なかった時のテコ入れをどのタイミングでするのか? このあたりは立浪監督の決断力、判断力が問われるところだと思いますね。
ーーその点が日本ハム・ビッグボス、ソフトバンク・藤本監督との違いでしょうか?
真中 日本ハムはいい意味でも悪い意味でも、若手を使うしかない。チームの顔ぶれがガラッと変わってしまった以上、現有戦力を見極めながら戦っていくしかないわけです。ソフトバンクも若手とベテランとを織り交ぜながらチームの新陳代謝を図っていくことを意図しています。そういう意味では日本ハム、ソフトバンクはすでに戦い方の方向性を定めているけど、中日は戦いながら方向性を決めていくことになると思いますね。立浪監督がどんな決断をするのか、これからの注目ポイントだと思いますね。
(中編「セ・リーグ上位チーム戦力分析」につづく)
【プロフィール】
真中満 まなか・みつる
1971年、栃木県生まれ。宇都宮学園、日本大を卒業後、1992年ドラフト3位でヤクルトスワローズに入団。2001年には打率.312でリーグ優勝、日本一に貢献した。計4回の日本一を経験し、2008年に現役引退。その後、ヤクルトの一軍チーフ打撃コーチなどを経て、監督に就任。2015年にはチームをリーグ優勝に導いた。現在は、野球解説者として活躍している。