昨年に引き続き、今年も6.12さいたまスーパーアリーナでCyberFight傘下4団体(DDTプロレス、プロレスリング・ノア、東京女子プロレス、ガンバレ☆プロレス)による合同興行「CyberFight Festival 2022」が開催され…

昨年に引き続き、今年も6.12さいたまスーパーアリーナでCyberFight傘下4団体(DDTプロレス、プロレスリング・ノア、東京女子プロレス、ガンバレ☆プロレス)による合同興行「CyberFight Festival 2022」が開催される。佐々木大輔vs拳王のハードコアマッチノーDQルール戦を始め全14試合、魅了溢れるカードが出揃った。対抗戦も4試合行われNOAH中嶋勝彦、小峠篤司、稲村愛輝と戦うのは新生バーニングの遠藤哲哉、秋山準、そしてEruptionの樋口和貞だ。DDTでは敵同士のユニットが肩を組みNOAH軍と戦うことができるのか?そんな樋口に取材を敢行。現在の心境を聞いた。

――樋口選手の取材は1年ぶりになります。前回はKING OF DDT 2021 FINAL!!で火野裕士選手と戦う前にお話しを伺いました。

樋口:火野裕士に力と力の対決を挑みましたが、自分の力不足。身長こそ自分の方が大きいですが身体の厚みが違う。それに体幹の強さがハンパない。最後はラリアットからFuckin'BOMBで叩きつけられフォール負けでしたね。

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――そうでしたか。この1年、坂口征夫選手の負傷欠場もあり、リング上でのEruption、特に樋口選手から大人しい印象を受けます。2年前は大暴れしていた記憶があります。シングルでは遠藤哲哉選手と挑戦剣を賭けた戦いが繰り広げられ、Eruptionとしても2020年6月に第41代KO-D6人タッグ王者、2020年10月に第68代KO-Dタッグ王者を戴冠。一時期Eruptionは2冠王だった時期もありました。ご本人的にいかがでしょうか?

樋口:個人的なことで言えば2021年3月当時KO-D無差別級王者の秋山準に挑み敗れたところで時間が止まっています。翌月の4月にHARASHIMAさんと岡林裕二にKO-Dタッグも獲られています。KING OF DDT 2021も準決勝まで進み火野裕士に敗れた。2021年末のD王GPも結果を出せなかった。自分でも「秋山準戦を境に沈んでしまったな」と感じています。

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――今お話にあった第5回D王GPは2勝3敗(HARASHIMA、クリス・ブルックスに勝利。竹下幸之介、MAO、岡林裕二に敗戦)でした。

樋口:MAOに負けたのが予想外でした。両足で頭を絞め上げられた。完全に油断していたと思います。

印象に残っているのは大阪の岡林裕二戦、正面からぶつかりましたがパワーで押されてしまった。岡林裕二は体格が火野裕士と似ています。

あとD王GP最後の竹下幸之介戦、あの試合お互い短期決戦を狙っていました。結果、竹下幸之介のヒザ蹴りからのサプライズローズ(変型フィッシャーマンバスター)で負けました。

――少し時間を戻して2021年3月のKO-D無差別級王座の試合後、樋口選手は秋山準選手の腰にベルトを巻きました。ご自身も感じているように、あの時から何かを失ったように思います。ワンピースのルフィーが戦いの中でギアを上げる瞬間がありますが、秋山選手との戦いまで樋口選手のギアを上げる瞬間をリング上で見ることができました。ただあの試合を境にギアを上げるというか覚醒する姿を見れなくなった気がします。

樋口:その通りだと思います。現状EruptionはDDTの中で目立った結果を残していない。Eruptionは坂口さん、赤井沙希さん、自分、そして岡谷英樹の4人。やっぱり自分が登り調子だった時、Eruptionの状態も良くKO-DタッグとKO-D6人タッグのベルトを保持しDDTのリングの中心にいました。

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しかし自分の調子が悪くなるとEruptionの勢いが落ちたように見えるのかと感じます。もちろん坂口さんの怪我もありましたけど。

――その坂口選手は樋口選手、赤井沙希選手と組んで12.26代々木大会3カ月ぶりの復帰戦を行いました。対戦相手は鈴木みのる選手、伊藤麻希選手、クリス・ブルックス選手。鈴木選手と伊藤選手は対戦するのが初めてですよね。

樋口:そうです。あの試合、鈴木みのるの凄みを感じたのと、それを操っていた伊藤麻希のしたたかを感じましたね。

――鈴木みのる選手は技が多いわけではありません。でも独特の凄みがある。レスラーの方が感じる鈴木選手の「凄み」とはなんですか?

樋口:やはり1発1発の重さですね。鈴木みのると対峙した時、今までくぐり抜けて来た修羅場の数の違いを感じたんです。それが鈴木みのるというレスラーの凄みに繋がっているんだろうと。

相撲の例えになりますが幕下と横綱が並んだ場合、明らかに横綱の方が凄さを感じるじゃないですか。それは戦った相手の数や舞台が違うからです。それに近いものを感じました。

あと鈴木みのるの場合、技の無駄な部分を削ぎ落とし一つ一つを研ぎ澄ました結果だと思います。

――なるほど、実際にリング上で戦っている樋口選手の意見は説得力がありますね。ところで今年に入り1月後半よりUltimate Tag League 2022がスタートし、岡谷英樹選手と出場しました。これまでと違い、樋口選手が岡谷選手を引っ張っていく立場にあったと思います。

樋口:これまでのパートナーは経験豊富な坂口さん、今回は若手の岡谷英樹でした。自分としては「しっかりしなければいけないな」と気持ちを引き締めてリーグ戦に臨みました。でも、「岡谷に任せても大丈夫だ」と思える場面が多かった。岡谷も自分とシングルを戦い、レスラーとして認めたからEruptionに加入した。日々、リーグ戦で岡谷の成長も感じました。だから「引張っていく」ではなく「2人でタッグリーグを戦おう」と気持ちが変化しましたね。

――Eruption加入前の岡谷選手の映像と比較したら、顔つきが変わりましたよね。

樋口:そうなんですよ。だから「お前の好きなように戦えよ」とコーナーに立ちながら岡谷の背中を見ています。

【DDTプロレス HARASHIMA】 CyberFight FESではDDTを昔から観ているファンの方にも届けたかった

――そして5.1横浜武道館、HARASHIMA選手と佐藤光留選手が組み、坂口選手、樋口選手とのタッグ対決。この試合を詳しく教えて頂きたいのですが、後半の樋口選手のテンションの上がり方が尋常ではなく久しぶりに「覚醒した樋口和貞」を見ることができた気がします。あの試合で何を感じましたか?

樋口:あの試合で自分と坂口さんに火を付けてくれたのは佐藤光留です。自分にとって佐藤光留のイメージは「観客として観ていた頃、DDTで戦っていた選手」です。試合前から、その選手と戦うので気持ちが高ぶっていました。リング上で対峙したら佐藤光留は素晴らしいレスラーで、観ていた頃の懐かしさやバチバチの戦いで火が付きましたね。

――その姿を見て、なぜかブレーンクローを使い始めた頃の樋口選手を思い出しました。

樋口:最後HARASHIMAさんからブレーンクローでフォールを奪いましたが、やっとブレーンクローが自分に馴染んだ気がしました。

この1年はしっくりこなかった。もちろん自分の技だし大事な場面で使っていました。でも本当に5.1横浜で初めてグッと来たというか、「自分の技」になったと感じましたね。

――僕はあの試合を見てCyberFight Festival 2022で遠藤哲哉選手のKO-D無差別級ベルトに樋口選手が挑むと確信しました。でも発表されたカードは遠藤哲哉選手と秋山準選手の新生バーニングと組んでプロレスリング・ノアの対抗戦に出場。発表された時の樋口選手の気持ちを教えて下さい。

樋口:それこそ、「なんでだよ!」と。会社は自分の気持ちを何も考えていないのかと思いました。正直バーニングの隣に立ちたくないですから。

【DDTプロレス 遠藤哲哉】約1年ぶりのKO-D無差別級王座戴冠へ

――2020年、樋口選手と遠藤選手の挑戦剣を賭けた戦いが行われました。結果、遠藤選手が挑戦剣を手にして田中将斗選手に挑みKO-D無差別級王座奪取。昨年はKING OF DDT 2021の2回戦、樋口選手が遠藤選手から勝利しています。もう1人のパートナーが因縁浅からぬ秋山選手。隣に立ちたく…

樋口:嫌でした。対抗戦のカードが発表された時、「俺が1人で戦ってやるよ」が素直な気持ちです。でもDDT代表として対抗戦に出場するのであれば、絶対に勝たなければいけない。

少し心変わりしたのは5.30川崎クラブチッタで稲村愛輝と戦った時です。結果15分ドロー。正直「こいつはすごい」と感じました。対抗戦に勝つために自分1人で戦ってはダメだと。

――稲村選手とは初対決でしたか?

樋口:2019年6月「Fortune Dream 6」で、タッグで対戦しました。その時、稲村愛輝はデビュー2年目。あの時と比べて身体もデカくなりスピードも重さも増えましたね。「こいつとあと2人を自分1人で対応するのは難しい」と、ちょっとだけ考えましたね。

【6.6 CyberFight FESTIVAL 2021】DDT vs NOAH対抗戦 竹下&上野vs 清宮&稲村

そして6.1後楽園です。バーニングの2人と同じコーナーに立つのは気が乗らなかった。でも試合後、坂口さんに「去年を思い出せ。DDTとして3人で立ち向かわないとダメだろう」と言葉をかけられました。

自分1人の意思で挑んでも何も残らない。DDTの選手としてやるべきことをやろうと思い直しました。結果、遠藤哲哉と秋山準と握手を交わしましたね。

――この握手はあくまで対抗戦、対プロレスリング・ノアに向けてですよね。

樋口:そうです。対ノアに向けての共闘。個人の感情は置いといて、といった感じです。

――その対抗戦の相手である丸藤正道選手が負傷欠場、代わって中嶋勝彦選手が出場します。

樋口:昨年CyberFight FesでDDT vs金剛の対抗戦で戦いました。今年は戦わないと思ったけど、丸藤正道の負傷で中嶋勝彦が出てきた。プロレスの面白いところですね。

――丸藤選手と中嶋選手、どちらと戦いたいですか?

樋口:どちらともシングル対決して、どっちにも負けているんですよ。中嶋勝彦はデビュー間もない2015年9月新宿。丸藤正道は2018年2月後楽園で負けている。だからどちらにもリベンジをしたい気持ちが強い。

――樋口選手の口から「リベンジ」と言う言葉がでましたが、1番の樋口選手がリベンジすべき相手は秋山選手。勝利しベルトを巻かせたいですよね。

樋口:本当にそう。でも現実的にそれはできない(苦笑)。ですから休戦して共闘の道を選びましたけど、今後一緒にタッグを組むわけではない。2021年3月の秋山準戦で自分の中の何かが止まっている。そこをリベンジしないと先に進めない。でも今回の対抗戦は「樋口和貞」の感情はとりあえず置いておきます。

――DDTのために自分の感情を封印するのですね。ところでもう1人の対戦相手である小峠篤司選手の印象を教えて下さい。

樋口:2018年11月NOAHの「GLOBAL LEAGUE 2018」に自分が出場し公式戦で戦い勝ちました。ただ油断はできないですね。小峠篤司はNOAHでしっかり結果を残している。DDTは無差別で自分より小さい選手に苦杯をなめている。自分より軽い選手の怖さを知っているつもりです。だから油断できない。

――この大会の後はKING OF DDT 2022もありますからね。

樋口:今年「こそ」ですね。それこそ秋山準戦で止まった針を動かさないと先に進めない。キッカケは5.10横浜武道館でありました。あの時止まった針は確実に動き始めている。

【DDTプロレス KING OF DDT 2021】KING OF DDT 2020覇者・遠藤哲哉 vs 前KO-Dタッグ王者 樋口和貞

――以前、樋口選手は「トーナメント戦は鬼門だ」とお話しされていました。

樋口:鬼門ですね。ほぼベスト4、KING OF DDTの準決勝までは行くんです。その先に進めない。最後の後楽園が鬼門なんです。今年34歳、「ここで上に行かないと」と言う気持ちが、いつも以上に強い。毎年「ラストチャンス」と思っているけど、今回は特に重く受け止めています。

――最後にCyberFight Festival 2022の対抗戦に向けてDDTファンに一言お願いします。

樋口:紆余曲折ありましたが、一貫しているのは「NOAHを取る」。そこはブレないですね。6.12さいたまスーパーアリーナではDDTの強さを見せて勝ちに行きます。

<インフォメーション>
6.12さいたまスーパーアリーナ「CYBER FIGHT FESTIVAL 2022」にてNOAH vs DDT対抗戦、遠藤哲哉&秋山準&樋口和貞vs中嶋勝彦&小峠篤司&稲村愛輝が行われます。

また6.16新宿FACEから「KING OF DDT 2022」が始まります。樋口選手は鬼門と語る準決勝を勝ち進み、今年こそ決勝のリング立てるのか!詳細はDDTプロレスリング公式サイトをご覧ください!
試合は動画配信サービスWRESTLE UNIVERSEで配信されます。

樋口和貞 Twitter
DDTプロレスリング Twitter

取材・文・編集/大楽聡詞
写真提供/DDTプロレスリング