2020年のコロナ禍中に始まった日本発・世界初のダンスリーグであるDリーグは、様々な制約や規制下においても2年の月日を走りぬけ、去る6月5日に無事セカンドシーズンのフィナーレとなるチャンピオンシップを終えた。 この日のチケットはリーグ創設以…

2020年のコロナ禍中に始まった日本発・世界初のダンスリーグであるDリーグは、様々な制約や規制下においても2年の月日を走りぬけ、去る6月5日に無事セカンドシーズンのフィナーレとなるチャンピオンシップを終えた。

この日のチケットはリーグ創設以来、初の完売。会場となった有明・東京ガーデンシアターの8000を超える観客席は最上階までダンスファンによって埋め尽くされ、ラストショーにふさわしい熱気と共に、ここまで勝ち進んだ6つのチームによる決戦が繰り広げられた。

チャンピオンシップは、レギュラーシーズンのように各チームの獲得点で順位が決まる方式ではなくトーナメント制が採用され、テリー伊藤さんをはじめとする8名のジャッジ票と、オーディエンスの投票を集計して決まるオーディエンス・ジャッジ1票分を合わせた全9票のうち、より多くの票を獲得した方のチームが勝ち進み、セミファイナル、ファイナルを経て優勝チームの確定となる。

このようなトーナメント式は、観る側にとっては、毎回各チームが1対1で闘って上位に勝ち進むため、ゲーム性が増し盛り上がる仕掛けになっていると言えるが、闘う側にとっては、自分たちが決勝に勝ち進むことまでを想定し、ルール上3種の、すべて違ったナンバーで臨む準備をしなくてはいけないことを意味する。これまでも、2週間隔で設定された12ラウンドのすべてを別ナンバーで闘う過酷さについて再三述べてきた“心のダンサー”である私としても、このチャンピオンシップに至っては、ラウンド12が終了した5月18日から6月5日までのわずか17日の間に、3つのナンバーを新たに作り上げ、踊り込み、完成させるという過酷に過酷を足して、ぐつぐつと煮込んだような最早、それがいったいどのような“境地”なのか、想像すら難しい大仕事だ。それを、この6チームは成し遂げてチャンピオンシップに臨んできたことになる。

◆【フィナーレの映像】エイトロックスを王者へと導いたISSEIの勇姿と引退の言葉

■チャンピオンシップに続く”地獄の道のり”

あらためて、チャンピオンシップに進出したチームを挙げると、ラウンド12までのトータルランキングで1位から4位までの、セガサミー・ルクス、フルキャスト・レイザーズ、コーセー・エイトロックス、エイベックス・ロイヤルブラッツ。そして、ワイルドカード枠で出場のセプテーニ・ラプチャーズとディップ・バトルズの計6チームである。

(C)D.LEAGUE 21-22

オリンピックは長年、「参加することに意義がある」と言われてきたが、まだ結成2年目ながら、このDリーグの容赦なき期間内での過酷な闘いは、言わば『参加するだけでも命懸け』。レギュラージャッジのテリ―伊藤さんも「チャンピオンシップへの道のりは地獄だったと思う」と表現した通り、全選手が命を削ってきたとしても過言ではないだろう。

そんな過酷な状況下でのチャンピオンシップを勝ち抜き、見事セカンドシーズンの優勝を果たしたのは、最後までブレイキンの真髄からブレずに力を出し切ったコーセー・エイトロックスだった。

これまでも、ブレイキンならではのパワームーブと、身体が千切れてしまうのではないかと心配してしまうほどの大技で、観る者を“ロック”し続けてきたエイトロックスだが、今回はサックスが奏でるジャジーで洒落た曲と共に、軽やかさと力強さを兼ね備えながら、まるで彼らが時空を自在に操っているかのような錯覚を覚える作品で観る者を圧倒し、見事玉座に上り詰めた。

ダンサージャッジのPEETさんも、「トップロックのルーティンの追い上げ感の凄みとともに、ブレイキンでここまでショーアップ出来たということが素晴らしい!」と絶賛。ゲスト・エンターテイナージャッジの安藤美姫さんも「身体から音楽が出ているように見えた」と語ったように、このエイトロックスの演技で、満席のガーデンシアターは地鳴りに震えるかの如く大きく沸くこととなった。会場で実際にこのような大いなる盛り上りに触れてみると、これこそが1000万人以上いると言われるダンス人口を持つ日本での、Dリーグ本来の姿であると感じることが出来た。コロナも落ち着くであろう次の2022-23シーズンでは、この盛り上りが「当たり前」となってくれることを心から祈らずにはいられない。

アクロバチックな演技を連発、観客を魅了したKOSE 8ROCKS(C)D.LEAGUE 21-22

■満員となった東京ガーデンシアター

そして、今回優勝は逃したもののファイナルでエイトロックスと戦ったロイヤルブラッツの輝きにも触れておきたい。彼らの、観る者を圧倒的にハッピーな気分にさせて「一緒に踊りたい」と思わせる持ち味は他チームの追随を許さず、そして、そのような親しみやすさの中にも実は物凄いスキルが詰まっている様は、ダンスのさらなる可能性を感じさせてくれる、尊く得難いチームである。

また、セミファイナルでロイヤルブラッツと戦ったセガサミー・ルクスも、濃厚な色気とスタイリッシュさで、彼らでしか出せないグラマラスな世界を展開し観客を魅了した。同様にセミファイナルでエイトロックスと戦ったフルキャスト・レイザーズも、クランプというジャンルでどこまでゆけるのかという、彼らだけのスタイルを極め挑戦しながらフルスロットルのダンスを展開。荒ぶる男たちの重みと迫力はやはり満席の会場に深く伝播し、空間を大いに震わせていたことも伝えておきたい。

さらに、毎回、新鮮味とセンスの良さが際立つディップ・バトルズも、ダンサブルで愉しさが弾けるセプテーニ・ラプチャーズも、チャンピオンシップ進出となった6チームの演技はどれも本当に素晴らしく、どのチームかに限らず、トーナメントによって各チームが敗退していく場面では、彼らが文字通り骨身を削ったであろう努力や願いに思いを馳せ、胸を痛めることとなったファンも多かったことだろう

チャンピオンシップの闘い後の挨拶で、Dリーグの神田勘太郎COOも言及していたように、ダンスで東京ガーデンシアターのような大会場が完売御礼の満席となり、ダンサー以外の一般的な人々の話題にまで上るというシーンは今までなかったこと。「ダンスを日常に」をスローガンに始まったDリーグは、間違いなくここからさらに熱量をあげ、改善を重ねながら、大きな波となり日本のスポーツエンターテイメント界を席捲してゆくに違いない。

開幕からわずか2シーズンの間にも様々なドラマが生まれ、高まりを見せた熱量がダンスファンの枠を超え、これまでダンスに触れてこなかった人々にも深く伝播してゆくという未来までがくっきりと見えた気のする今季のDリーグ。チャンピオンシップの熱は未だ冷めやらぬままだが、闘いはここで一度幕を引き、数カ月の間を置いて10月に新シーズンがスタートする。

休息の時を経て、さらに研ぎ澄まされ磨き込まれるであろう全Dリーガーの成長と、今シーズン、過酷な闘いのなかで故障してしまった数名のDリーガーの回復も祈りながら、間違いなく進化を遂げるであろう2022-23サードシーズンの開幕の時を待ちたい。

◆2代目王者はコーセーエイトロックス、ブレイキンで賞金3000万円獲得 感涙の嵐のうちに幕

◆THE GREAT HEART of“8ROCKS” ブレイキン世界一のISSEI率いる熱き魂

◆開幕初年を終えたプロダンス、「ギラギラしながらキラキラと輝く」セカンドシーズンへ

著者プロフィール

Naomi Ogawa Ross●クリエイティブ・ディレクター、ライター

『CREA Traveller』『週刊文春』のファッション&ライフスタイル・ディレクター、『文學界』の文藝編集者など、長年多岐に亘る雑誌メディア業に従事。宮古島ハイビスカス産業や再生可能エネルギー業界のクリエイティブ・ディレクターとしても活躍中。齢3歳で、松竹で歌舞伎プロデューサーをしていた亡父の導きのもと尾上流家元に日舞を習い始めた時からサルサに嵌る現在まで、心の本業はダンサー。


KOSÉ 8ROCKS / ISSEI
退団インタビュー

21-22 SEASON限りで@kose8rocksを退団するISSEI

ディレクターとして、チームを悲願のSEASON CHAMPIONへと導き、個人ではMVDにも輝く👑✨

そんな彼のCHAMPIONSHIP終了後の心境とは

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— Dリーグ (D.LEAGUE) (@dleague_jp) June 7, 2022