西武は投手陣が奮闘、5月の救援防御率は0.99だった 最大で16ゲーム差あった首位と最下位との差が、月末には10ゲーム差…

西武は投手陣が奮闘、5月の救援防御率は0.99だった

 最大で16ゲーム差あった首位と最下位との差が、月末には10ゲーム差に。激戦が続いた5月のパ・リーグ「月間MVP」をセイバーメトリクスの指標で選出してみる。選出基準は打者の場合、得点圏打率や猛打賞回数なども加味されるが、基本はNPB公式記録が用いられる。ただ、打点や勝利数といった公式記録は、セイバーメトリクスでは個人の能力を如実に反映する指標と扱わない。そのため、セイバーメトリクス的にどれだけ個人の選手がチームに貢献したかを示す指標で選べば、公式に発表されるMVPとは異なる選手が選ばれることもある。

 5月のパ・リーグ6球団の月間成績を振り返る。

ソフトバンク:15勝8敗、打率.288、OPS.764、本塁打15、先発防御率2.69、QS率30.4%、救援防御率1.94

西武:13勝10敗、打率.237、OPS.660、本塁打17、先発防御率2.91、QS率56.5%、救援防御率0.99

楽天:13勝13敗、打率.236、OPS.644、本塁打12、先発防御率3.00、QS率53.8%、救援防御率2.51

日本ハム:12勝12敗、打率.243、OPS.673、本塁打21、先発防御率2.78、QS率37.5%、救援防御率3.39

ロッテ:11勝15敗、打率.219、OPS.601、本塁打16、先発防御率3.21、QS率57.7%、救援防御率4.47

オリックス:9勝15敗、打率.245、OPS.642、本塁打9、先発防御率2.86、QS率54.2%、救援防御率4.29

 ソフトバンクが7つの貯金をつくった。3つの勝ち越しとなった西武は打線は低迷したが、投手陣が踏ん張り、リーグ1位の月間防御率2.22をマークした。救援防御率は0.99で、特に8回の失点率が8.5%と他チームに大きな差をつけた。

 月間MVPは6月9日発表予定。ここでは、セイバーメトリクスの指標による5月の月間MVP選出を試みる。

上沢直之は4勝0敗、東浜巨は5・11西武戦でノーヒットノーランを達成した

 投手評価には、平均的な投手に比べてどれだけ失点を防いだかを示す「RSAA」を用いる。ここでのRSAAは「tRA」ベースで算出。tRAとは、被本塁打、与四死球、奪三振に加え、投手が打たれたゴロ、ライナー、内野フライ、外野フライの本数も集計しており、チームの守備能力と切り離した投手個人の失点率を推定する指標となっている。

 RSAA=(リーグ平均tRAー選手個人のtRA)×投球回数/9

 tRA={(0.297×四球+0.327×死球-0.108×奪三振+1.401×被本塁打+0.036×ゴロ-0.124×内野フライ+0.132×外野フライ+0.289×ライナー)/(奪三振+0.745×ゴロ+0.304×ライナー+0.994×内野フライ+0.675×外野フライ)×27}+定数

 各チームのRSAA上位2投手は以下の通り。

ソフトバンク:和田毅4.76、東浜巨4.30
楽天:田中将大2.90、宋家豪1.89
オリックス:山岡泰輔5.63、宮城大弥2.49
西武:與座海人4.70、森脇亮介2.45
ロッテ:佐々木朗希6.46、ゲレーロ1.99
日本ハム:上沢直之3.62、伊藤大海2.46

 5月11日の西武戦でノーヒットノーランを達成したソフトバンク・東浜巨投手のインパクトも強い。だが、NPB公式での最有力候補となれば、やはり月間4勝0敗をマークした上沢直之投手になるだろう。2投手の月間成績は以下の通り。

上沢直之:登板4、31回、防御率0.58、QS率100%、被本塁打1、奪三振率6.68、K/BB2.88、被打率.127、被OPS.382、WHIP0.68

東浜巨:登板4、26回、防御率0.69、QS率75%、被本塁打0、奪三振率5.54、K/BB2.67、被打率.111、被OPS.319、WHIP0.58

 しかし、この2投手以上に大きな貢献度を示したのはロッテ・佐々木朗希投手だった。

佐々木朗希:登板4、25回、防御率1.08、QS率100%、被本塁打0、奪三振率10.46、K/BB11.33、被打率.217、被OPS.522、WHIP0.92

 月間の規定投球回数に1イニング足りなかったものの、申し分のない成績だった。特に月間奪三振34はリーグ1位。与四球も僅か3つで、3.5を超えれば優秀とされるK/BBが11.33となっており、球速もさることながら安定したコントロールで打者を封じ込めている。3、4月に比べればコンタクト率は上がったものの、他の投手を圧倒する内容の投球を披露した佐々木朗希をセイバーメトリクス目線で選ぶ5月の月間MVPに推薦する。

鷹・今宮は月間打率.419、ハム・清宮の長打率.569は西武・山川に次いで2位

 打者評価には、平均的な打者が同じ打席数に立ったと仮定した場合よりもどれだけその選手が得点を増やしたかを示す「wRAA」を用いる。

wRAA=(wOBA-リーグ平均wOBA)/1.24×打席。wOBA={0.69×(四球-敬遠)+0.73×死球+0.97×失策出塁+0.87×単打+1.33×二塁打+1.73×三塁打+2.07×本塁打}/(打数+四球-故意四球+死球+犠飛)

 各チームのwRAA上位2選手は以下の通り。

ソフトバンク:牧原大成10.39、今宮健太9.15
楽天:島内宏明7.95、辰己涼介6.76
オリックス:杉本裕太郎4.24、伏見寅威4.11
西武:山川穂高12.37、中村剛也2.60
ロッテ:岡大海3.65、高部瑛斗2.79
日本ハム:松本剛6.07、清宮幸太郎5.67

 5月の月間OPSランキングは以下の通り。

山川穂高(西武)1.118
今宮健太(ソフトバンク)1.008
清宮幸太郎(日本ハム).929

 今宮は月間打率.419と5月の首位打者で、好調ホークス打線を牽引した。清宮は5月に16試合に先発出場。その内12試合で3番を務め、OPS0.9超えの活躍を見せた。月間打率は.262だったが4本塁打、1三塁打、6二塁打と長打が目立ち、長打率.569は山川に次いでリーグ2位だった。四球率も12.3%と高く、出塁率も.360と高水準だった。ただ、月間得点圏打率は.174だった。

 5月で最もwRAAが高くチームへの貢献が高かったのは山川穂高だった。3、4月に8本塁打を放っていた山川は5月もリーグトップの9本塁打を放った。OPSも、1.335だった3、4月に続いて1超えを記録しており、スタメンに定着し始めた2017年後半から2018年にかけての勢いを彷彿とさせる活躍を見せた。チーム月間打率.237と低迷した中で孤軍奮闘の活躍を見せた山川穂高を、セイバー目線で選出する5月の月間MVP パ・リーグ打者部門に推薦する。

 ちなみに、山川は6月5日時点で18本塁打を記録しており、本塁打率8.06(145打数÷18本塁打)は過去のシーズン記録の中でも3位のハイペースだ。

シーズン本塁打率ランキング(規定打席到達者のみ)

1位:バレンティン(ヤクルト)7.32、シーズン60本(2013年)
2位:王貞治(巨人)7.86、シーズン49本(1974年)
3位:カブレラ(西武)8.13、シーズン55本(2002年)鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ番組の監修や、「AKB48選抜じゃんけん大会」の組み合わせなどエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。近著に『統計学が見つけた野球の真理』(講談社ブルーバックス)『世の中は奇跡であふれている』(WAVE出版)がある。