日本中の、いや世界中のボクシング・ファンの注目を集めた井上尚弥(大橋)vsノニト・ドネア(フィリピン)の世界バンタム級王座3団体統一戦は、井上が切れ味鋭い連打で2ラウンド1分24秒でのTKO勝ちをおさめた。 第1ラウンド、オープニングブロー…

日本中の、いや世界中のボクシング・ファンの注目を集めた井上尚弥(大橋)vsノニト・ドネア(フィリピン)の世界バンタム級王座3団体統一戦は、井上が切れ味鋭い連打で2ラウンド1分24秒でのTKO勝ちをおさめた。

第1ラウンド、オープニングブローはドネアの左フックだった。最初から強いプレッシャーをかけていくドネアの意思表示であり、井上が試合後のインタビューで「あのパンチで緊張感が高まった」と語ったように、早々に両選手のファイティング・スピリッツに火がついた。

◆【勝利後のインタビュー】井上尚弥、ドネアへの感謝と「4団体統一か、スーパーバンタム挑戦か」を明言

両者はジャブの突き合いによる主導権争いに入る。しかし、どちらにも様子を見るパンチは一切なく、ダメージを与えるパンチを交換。「瞬き厳禁」、目が離せない展開となった。特にドネアの前に出て打つワンツーは踏み込みが鋭く、井上は下がりながらストレート系のパンチで応戦。試合が早く終わりそうな予感が漂った。

■危険な距離でのスリリングな打ち合い

1ラウンド2分過ぎ、危険な距離でのスリリングな打ち合いとなる。そのなかで放たれたのが、モンスターの右ストレートだった。左をフェイント気味に出して打ち下ろしたショートパンチが見事にドネアのテンプルを直撃。この一撃でドネアは崩れるようにマットに沈んだ。

右ストレートのカウンターはこれまでもフィニッシュ・ブローになってきたが、井上が「練習してきたことが正しかった」と振り返ったように、まさに動きのなかで自然に出たパンチだった。「あまり手応えがなかった」というコメントも、その裏返しだろう。ドネアはゴングに救われたが、リプレイを見直すとダメージがかなり深刻だったことがわかる。

■貪欲にKOを狙った会心のフィニッシュ

2ラウンド、モンスターが試合を決めにかかる。得意の左フック、ワンツーを強く振り、ここ数戦、練習を重ねてきた左アッパーを交えたコンビネーションでドネアを追い詰める。「一方的に勝つ。ドラマにするつもりはない」という言葉通りに、かつてないほど貪欲にKOを狙う。

ドネアも起死回生の左フックを振るうが、井上の体のキレがこのパンチをきれいにかわす。ドネアはたまらず体を寄せてパンチを殺すが、井上はそれを許さない。そして、1分過ぎ、ガードをかわすように放った左フックがクリーンヒット。ドネアが棒立ちになると、コンビネーションを畳みかけ、最後はワンツーフックで見事にライバルを仕留めた。2回1分24秒。会心のフィニッシュに、試合後のチャンピオンの弁舌も爽やかだった。

■4団体統一を目指す 標的はポール・バトラー

日本人初の3団体統一王者になったモンスター。

気になるのは今後のスケジュールだが、リング上で明確なビジョンを明かしてくれた。それによると、次の標的はポール・バトラー(イギリス)が持つWBOのベルト。年内にこれを奪取して、最大の目標としてきた世界バンタム級4団体統一を果たすという。

バトラーは33歳の正統派タイプで、戦績は36戦34勝(15KO)2敗。昨年、ジョンリル・カシメロの代役で出場したジョナス・スルタン(ともにフィリピン)を判定で退けて正式なWBOチャンピオンになったが、この試合ではスルタンに押し込まれるシーンも目立った。また、過去には体重超過で失格になった前科もある。井上の相手としては、ドネアより数段、実力は下。対戦が実現すればモンスターの左フックが試合を決めるだろう。

もし、年内に対戦が叶わなければ、スーパーバンタム級へ上げることも明言した。この場合は、6月4日に難敵のダニー・ローマンを圧倒してWBC、WBOのタイトルを防衛したステファン・フルトン Jr.(ともにアメリカ)が目標となりそうだ。

フルトンの戦績は21戦全勝(8KO)、「(井上からのオファーがあれば)よろこんで戦う。いつか実現するだろう」と答えている。パンチ力に劣るフルトンは井上にとって、くみしやすい相手とみる。体格の違いを克服できれば、十分に攻略できるだろう。

なお、『リング』誌が発表しているパウンド・フォー・パウンドで、現在、井上は第3位。1位はオレクサンドル・ウシク(ウクライナ)、2位はテレンス・クロフォード(アメリカ)。今回の衝撃的なKO勝利、さらに4団体統一となれば、さらに上があるだろう。

◆【実際の映像】井上尚弥、瞬き厳禁の圧巻ラッシュでドネアが大の字KO!「井上尚弥vs.ノニト・ドネア2」モンスターTKO勝利の瞬間

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◆2回圧巻TKO勝利の井上尚弥「この先のステージにいけると思う」「ドネアがいたから輝けた」

著者プロフィール

牧野森太郎●フリーライター

ライフスタイル誌、アウトドア誌の編集長を経て、執筆活動を続ける。キャンピングカーでアメリカの国立公園を訪ねるのがライフワーク。著書に「アメリカ国立公園 絶景・大自然の旅」「森の聖人 ソローとミューアの言葉 自分自身を生きるには」(ともに産業編集センター)がある。デルタ航空機内誌「sky」に掲載された「カリフォルニア・ロングトレイル」が、2020年「カリフォルニア・メディア・アンバサダー大賞 スポーツ部門」の最優秀賞を受賞。

🎤 @NaoyaInoue_410's immediate reaction to the KO victory. #InoueDonaire2 pic.twitter.com/vCov1rFRYD

— Top Rank Boxing (@trboxing) June 7, 2022