女子プロレスラーSKE48荒井優希インタビュー 後編(前編:プロレスデビューからの1年を告白。「最前列で観戦してたら、やろうとは思わなかった」>>) プロレスデビュー1周年を迎えたSKE48荒井優希。「2021年度プロレス大賞」で新人賞を受…

女子プロレスラー
SKE48荒井優希インタビュー 後編

(前編:プロレスデビューからの1年を告白。「最前列で観戦してたら、やろうとは思わなかった」>>)

 プロレスデビュー1周年を迎えたSKE48荒井優希。「2021年度プロレス大賞」で新人賞を受賞し、今年3月、初のタイトルマッチに挑むまでに成長した。

前編では、プロレスを始めるに当たり「試合で殴られると思っていなかった」という衝撃の事実を話してくれた。後編では、同じくアイドル出身の伊藤麻希への思い、6月12日(日)にさいたまスーパーアリーナで開催される「サイバーファイトフェス」への意気込みなどを語る――。


プロレスデビューからの1年を振り返ったSKE48の荒井優希

 photo by 林ユバ

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――3.19両国国技館大会における、伊藤麻希選手とのシングルマッチは最高でした。インターナショナル・プリンセス選手権試合で、荒井選手にとっては初めてのタイトルマッチ。自ら挑戦者に名乗りを上げたんですよね。

荒井:たくさん先輩がいる中で、伊藤さんは自分の中ですごく意識している先輩なんです。デビュー戦で「伊藤麻希を潰しに来い」という言葉をいただいて、その言葉があったから強くなりたいと思うようになった。どうしても勝ちたい相手だったけど、シングルマッチもやったことなかったし、試合自体もほとんど当たらなかったので、伊藤さんが「だれでもいいから挑戦してほしい」って言った時に、自分が行きたいと思いました。

――ものすごくいい試合でした。デビュー10ヶ月であれだけ感情むき出しのファイトはなかなかできないです。

荒井:初めて自分から動いた場面でもあったので頑張ったんですけど、伊藤さんの腰攻めのレパートリーが本当に多くて......負けちゃってすごく悔しかったです。

プロレスでファンの大切さを再認識


伊藤(左)に豪快な蹴りを見舞う荒井

 photo by 東京女子プロレス

――以前、伊藤選手にインタビューをした際、「自分が人気者になるよりも、後輩をもっと輝かせたい」と言って、荒井選手の名前を出していたんですよ。

荒井:その記事、読みました! それまで、伊藤さんって圧倒的に強くてリング上ですごく怖いから、あんまり話しかけられなかったんですけど、その記事を読んでからちょっと話しかけられるようになったんです。伊藤さんから私の名前が出るということがすごく嬉しかったです。

――それは本当によかったです......!

荒井:伊藤さんは同じルートを辿ってきたというか、経験してきたことが似ている部分もあるので、伊藤さんにしか聞けないこともあるし、伊藤さんだけに話したいこともあるんですよね。

――伊藤選手はLinQ(福岡県を拠点にしたローカルアイドルグループ)をクビになって、そこからプロレスで這い上がったことが"すごさ"だと思いますが、荒井選手とはアイドルとしての立ち位置がちょっと違うのかなと思っていました。

荒井:私もSKE48という大きいグループにはいますけど、センターみたいな感じではないし、100%いい道を辿って来たかと言ったらそうでもない。SKE48にいられるだけでラッキーなのかもしれないし、人によって考え方は違うかもしれないんですけど、やっぱり伊藤さんの言葉は響きます。

――今年3月に新曲の選抜メンバーに入らなかったことについて、「プロレスをやったから選抜落ちしたと思われるのが悔しかった」と話されています。

荒井:ファンの方はあんまり言わないんですけど、やっぱり文字だけを見た時に、プロレスをやっているから落ちたんじゃないかとか、何も知らない人は思うんじゃないかと......。そうなっちゃうタイミングでもあったし、仕方ない部分でもあったと思うんですが、自分が選んだことを否定された感じが悔しくて。

――今はどういう心境ですか?

荒井:必要なことだったんだなと思いますね。今までずっと平坦というか、ただ続けているという感じだったので、こうやってきっかけをくれたことで、ファンの方の大切さとかいろんなことに気づけたタイミングでもありました。「選抜」は失ったんですけど、他に得るものはいっぱいあったので、長い目で見たらプラスかなと。

初めての後輩との闘い

――6月12日(日)、「サイバーファイトフェス」に出場されます。山下実優&伊藤麻希&長野じゅりあvs乃蒼ヒカリ&鈴芽&荒井優希という6人タッグマッチですが、かなり手強い相手ですよね。長野選手は3月にデビューしたばかりですが、空手家ですし。

荒井:初めて後輩と闘うんですよ。長野さんは私と違って格闘技をやっていたので、本当に動きもすごいし、もともと持っているものが違うというところは、すごく羨ましい。でも、やっぱり私のほうが1年くらい先に始めているので、絶対負けたくないし、先輩・後輩は関係なく勝ちたいですね。

――山下選手は荒井選手にプロレスを教えてくれた人で、伊藤選手もデビュー戦から意識してきた相手ですね。

荒井:山下さんと伊藤さんは、私の1年目のプロレス人生においてすごく大きな存在だった2人です。もちろん2人の強さは知っているし、長野さんの強さもまだ経験したことはないけど感じてはいるので、「怖いな」と思う部分もあるんですけど、ヒカリさんと鈴芽さんが一緒なので心強い。ともに自分のベストを出して、勝ちたいです。

――山下選手とは、12.18名古屋大会のメインイベントでシングルマッチをされました。やはり強かったですか?

荒井:めちゃめちゃ強かったし、痛かったです。いろんなところから蹴られて、「どっから蹴った!?」みたいな。やっぱりすごいですね。

――山下選手は荒井選手にとってどんな存在ですか?

荒井:一番初めにお会いした選手で、私が何もできない時からゆっくり教えてくれた先輩です。なので他の方には話せないことも話せるし、相談もよくさせてもらっています。山下さんが東京女子の一番先輩なんですけど、後輩たちのことをすごく気にしていたり、みんなのことを考えて行動していたりする姿を見ると、本当にいい団体だなあと思う。「山下さんに成長した姿を見せたい」という気持ちは大きいです。

――荒井選手はプロレスをすごく楽しんでらっしゃるのが素敵だなあと思うのですが、プロレスをしていて、つらさやもどかしさは感じることはないですか?

荒井:あります。例えば、すばしっこい選手もいますよね。そういうふうには自分は動けないし、人よりは運動できるタイプではあったけど、運動不足だったので練習で走るとなると「うわあ......」と思う。あと、プロレスって勉強とかと違って、わかったらできるものじゃないから難しいなって。理解はできるけど、私の体じゃできない、みたいな。でも、ほとんどのことは楽しめてるので、私の性格にめちゃめちゃ合ってたんだろうなと思います。

――どういう性格?

荒井:たぶん人よりも「つらい」と思わないし、嫌なことも少ない。(SKE48の)レッスンが終わって、メンバーに「このあと何するの?」って聞かれて「東京でプロレスの練習するよ」って言うと驚かれるんですけど、私は嫌だなと思ったことはなくて。「移動大変だよね」と心配されても、「移動中は動画観てるから大丈夫だよ?」みたいな感じ。意外と何でも楽しめちゃうんです。

――ただただ、めちゃめちゃいい性格ですね! メンタルが強いのはプロレスラー向きだと思います。将来は、どういうプロレスラーになりたいですか?

荒井:もっと早くプロレスを知りたかったなって思うんです。SKE48のファンの方も試合を観に来てくれるんですけど、ハマってくれる人がいっぱいいて、「もっと早く知りたかった」って言ってくれる。プロレスを観たことがない人に、たくさん届けたいなって思ってます。私のことを知っていてプロレスを知らない人はもちろん、私を知らない人にも届けたい気持ちがあるので、「女子プロと言えばこの子だよね」と言われるくらい、もっと大きくなれるように頑張りたいと思います。

【プロフィール】
■荒井優希(あらい・ゆき)
1998年5月7日、京都府生まれ。167cm。SKE48チームKIIのメンバー。2021年5月4日、東京女子プロレス後楽園ホール大会にてプロレスデビュー(渡辺未詩&荒井優希vs伊藤麻希&遠藤有栖)。東京スポーツ主催「2021年度プロレス大賞」で新人賞を受賞。