日韓W杯20周年×スポルティーバ20周年企画「日本サッカーの過去・現在、そして未来」日本を熱狂の渦に巻き込んだ、サッカー…

日韓W杯20周年×スポルティーバ20周年企画
「日本サッカーの過去・現在、そして未来」

日本を熱狂の渦に巻き込んだ、サッカーの2002年日韓W杯から20年が経った。この特集では、当時のサッカー界の模様を様々な角度から振り返っていく。
デビッド・ベッカム(イングランド)やイルハン・マンスズ(トルコ)ら、サッカー界を飛び越えて注目を浴びた選手がいた日韓W杯。ほかにもたくさんのスター選手が集ったが、その多くが思うような結果を出せなかった大会でもあった。ここでは、大会で活躍したベスト11人と期待外れの11人を挙げ、20年前の記憶を呼び戻す。

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2002年日韓W杯得点王のロナウド(左)とケガで活躍できなかったジダン(右)

カーンが最優秀GK&MVP

 史上初めてアジアで開催された2002年日韓W杯は、いい意味でも悪い意味でもサプライズの多い大会だった。

 まず、優勝候補と目されていた1998年自国でのW杯優勝のフランスを筆頭に、当時南米最強と評されていたアルゼンチン、さらにはペレが優勝候補に挙げていたポルトガルが、揃ってグループリーグ敗退。

 決勝トーナメントに勝ち残ったなかで過去にW杯優勝経験のあるチームは、ブラジル、ドイツ、イタリア、イングランドの4チームのみで、そのイタリアもラウンド16で韓国に敗れ去っている。

 逆に予想外の健闘を見せたのが、開催国の韓国をはじめ、トルコ、セネガル、アメリカといった新興国だった。そのうち韓国とトルコが準決勝まで勝ち進んだことが、2002年大会最大のサプライズ。

 とりわけ、主審のジャッジが物議を醸したとはいえ、3位決定戦でトルコに敗れた韓国が4位になるとは、大会前には誰も予想できない展開だった。

 結局、W杯史上初めて実現したブラジル対ドイツの対戦となった決勝は、ブラジルがロナウドの2ゴールにより通算5度目の世界制覇を達成。両チームとも下馬評では優勝候補にも挙がっていなかっただけに、最後までサプライズ続きの大会という印象が残った。

 そんな波乱続きの日韓W杯の大会ベスト11を選出してみたい。



2002年日韓W杯で活躍が目立った11人

 ベストGKは、ドイツの守護神オリバー・カーンで異論はないだろう。トルコのリュストゥ・レチベルも捨てがたいが、カーンは準決勝までの6試合でわずか1失点。

 抜群の存在感でドイツの堅守を支え、ゴールデンボール(大会MVP)とレフ・ヤシン賞(最優秀GK賞)をダブル受賞すると、その野性的な魅力もあいまって、日本国内でカーン・ブームが巻き起こったほどの知名度と人気を博した。

優勝したブラジルの攻撃を担った「3R」

 DFラインは、1~3位チームの守備の要となったエジミウソン(ブラジル)、カルステン・ラメロウ(ドイツ)、アルパイ・オザラン(トルコ)の3人を選出したい。

 エジミウソンは、優勝したブラジルの弱点とされていたディフェンスの大黒柱として大活躍した、陰のMVP的存在。同じくラメロウも、カーンの陰に隠れてしまったが、大会ナンバーワンの堅守を誇ったドイツの守備を支えた功労者だ。

 そして、トルコの躍進を支えたのが、のちに浦和レッズでプレー(2004~05年)することになったアルパイ。大会前は故障で出場が危ぶまれていたなか、相手を圧倒するハードな守備でチームに安定感をもたらせた。

 DF部門の次点には、ブラジルの両ウイングバックのロベルト・カルロスとカフーほか、ホン・ミョンボ(韓国)、ソル・キャンベル(イングランド)、フェルナンド・イエロ(スペイン)らが挙げられる。

 MFには、ブラジルのリバウドとロナウジーニョ、ドイツのミヒャエル・バラック、韓国のパク・チソンの4人を選出。バラック以外の3人はFWでもプレーする選手だが、いずれもベスト11からは外せない活躍を見せたため、攻撃的中盤として選ぶこととした。

 ロナウドとともに「3R」としてブラジルの攻撃の中心を担ったリバウドとロナウジーニョは、華麗なテクニックと創造性によって数々のチャンスを演出し、自らゴールも決めた大会屈指のワールドクラス。

 とくに準々決勝のイングランド戦でロナウジーニョが決めたスーパーゴールは、世界中のサッカーファンを魅了した。

 累積警告によって決勝戦を欠場したバラックは、ドイツの司令塔としてクリエイティブなプレーと精力的な働きぶりで大会トップの4アシストをマークし、パク・チソンは攻撃陣の中心として、グループステージ最終のポルトガル戦で決勝ゴールを決めるなど、大車輪の活躍。韓国の大躍進に大きく貢献した。

 そのほか、韓国のユ・サンチョル、ベスト8進出に貢献したアメリカのクラウディオ・レイナ、そして初出場でベスト8入りに貢献したセネガルのハリル・ファディガも、ベスト11に相応しい活躍を見せた選手だった。

 FWでは、ブラジルのロナウド、ドイツのミロスラフ・クローゼ、トルコのハサン・サスの3トップを選びたい。

 当時26歳の怪物ロナウドは、コンディション面の不安を払拭し、尻上がりに調子を上げて通算8ゴールを記録。大会得点王に輝いたほか、大会中にヘアスタイルを変え、日本国内では"大五郎カット"と呼ばれてピッチ外の話題も提供してくれた。

 クローゼは、初戦のサウジアラビア戦でハットトリックを決めて華々しいW杯デビューを飾ったことが印象的だ。ちなみに、この大会で5ゴールをマークしたクローゼは、その後W杯で計11ゴールを積み重ね、現在もW杯歴代最多得点記録保持者に君臨する。

 そして、トルコの躍進を支えたハサン・サスの活躍ぶりも見逃せない。大会前は無名だったものの、いざ蓋を開けてみると大黒柱ハカン・シュクールの不振の穴を埋める以上の活躍を見せ、2ゴール2アシストをマーク。ベスト11から外せない選手だ。

大会前のケガが痛かったジダン

 一方、期待外れに終わった選手を選んでみると、そこには錚々たるメンバーが名を連ねる。こちらは悪い意味で、日韓W杯を象徴する11人と言っていい。

 いずれも期待を大きく裏切り、グループリーグ敗退を強いられたフランス、アルゼンチン、ポルトガル、そして 死のグループFで最下位に終わったナイジェリアから選出した。



2002年日韓W杯で期待外れに終わった11人

 GKはフランスのファビアン・バルテズ。DFはポルトガルのフェルナンド・コウト、フランスのマルセル・デサイー、アルゼンチンのマウリシオ・ポチェッティーノの3人。

 MFは、アルゼンチンのフアン・セバスティアン・ベロン、ポルトガルのルイ・コスタ、ナイジェリアのヌワンコ・カヌ、そしてフランスのジネディーン・ジダン。そしてFWは、フランスのティエリ・アンリ、ポルトガルのルイス・フィーゴ、アルゼンチンのクラウディオ・ロペスの3人だ。

 このなかで最も世界の期待を裏切った選手と言えば、大会前の韓国との親善試合で負傷してしまい、グループ3戦目のデンマーク戦しか出場できなかったジダンと、2戦目のウルグアイ戦でレッドカードをもらったアンリの2人だ。

 フランスの攻撃の中心を担っていた2大スターの大不振がなければ、フランスのグループリーグ敗退はなかっただろう。

 アルゼンチンでは、イングランド戦でPKを与えるファウルを犯したポチェッティーノと、大不振に陥った司令塔ベロンが戦犯となった。また、クラウディオ・ロペスが本調子でなかったことも、グループリーグ敗退の要因に挙げられる。

 ポルトガルは初戦のアメリカ戦の敗戦がケチのつけはじめで、ポーランド戦ではパウレタがハットトリックの活躍を見せたものの、最後の韓国戦でパク・チソンの決勝ゴールに涙を呑んだ。フェルナンド・コウト、ルイ・コスタ、パウロ・ソウザ、フィーゴ、ジョアン・ピントら、期待された黄金世代がいずれも活躍できなかったのが誤算だった。

 また、予想外にスウェーデンがグループ首位通過を果たしたグループFで1分け2敗に終わったナイジェリアでは、心臓の病から復帰し、アフリカ予選からチームの中心として活躍していたカヌが、期待外れのパフォーマンスに終わったことが痛手だった。

 番狂わせの連続だった2002年日韓W杯。こうして振り返ると、ベスト11よりも期待外れの11人のほうが豪華な顔ぶれが並んでしまうのが、残念に思えてならない。