ダービージョッキー大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」 2分21秒9というダービーレコードで幕を閉じた今年の日本ダービー。久…

ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」

 2分21秒9というダービーレコードで幕を閉じた今年の日本ダービー。久しぶりに大歓声のなかでの競馬だったこともあって、今なおその余韻に浸っています。

 このダービーで僕が一番満足できたのは、どの騎手も勝ちにいく姿勢を見せてくれたこと。スローの競馬を否定するわけではないのですが、やはり頂上決戦となれば、出走馬すべてが能力を出しきっての"ガチンコ勝負"を見届けたいですからね。

 そのきっかけを作ったのは、前走の皐月賞が不完全燃焼に終わったデシエルト。手綱をとる岩田康誠騎手の「絶対に行く」という思いに導かれて気迫満点の出脚を披露。この馬がよどみのないラップを刻んだことによって、ハイレベルな決着が生み出されました。

 こうしたペースで流れると、ジョッキーの作戦や考えが大きく反映されるので、最後は鞍上力が問われます。おかげで今回、僕も各騎手たちの手綱さばきを存分に堪能させてもらいました。

 その結果、勝ったのはドウデュースに騎乗した武豊騎手。これで、6度目のダービー制覇という前人未踏の記録を達成しました。

 1998年にスペシャルウィークで彼が初めてダービーを勝ったあと、「おめでとう」と声をかけると、「ダービーっていいもんですね」と感慨深げに返してくれたことをよく覚えています。あれから、さらに5回も優勝を重ねてきたのですから、本当に「すごい」としか言いようがありません。

 さて、今週は東京競馬場での5週連続GI開催のラストを飾るGI安田記念(6月5日/東京・芝1600m)です。

 今年は、久々の18頭フルゲート。しかも、いろんな臨戦パターンから出走馬が集結しています。前哨戦からはもちろん、海外帰り、休み明け、上がり馬、スプリント戦やダート戦からなど、これだけバラエティーに富んでいると、どうやって比較したらいいのか、頭を悩ませてしまいますね。

 2016年から単勝オッズが4ケタ配当の馬が6連勝しているように、もともと波乱が起きやすいレースですが、今年もその可能性はかなり高いと感じています。

 こういうレースは、どの騎手も「自分の馬も一発あるんじゃないか」と色気を持って乗ってきます。そうすると、実績が足りない馬でもハイレベルな戦いのなかで秘めた能力を引き出されて激走する、というシーンもあったりするので、伏兵の台頭にはより注意が必要です。

 実績で言えば、昨年のレースで3歳馬ながら差のない競馬をした(3着)シュネルマイスター(牡4歳)が最有力でしょうか。昨秋のGIマイルCS(阪神・芝1600m)でも、引退レースで有終の美を飾ったグランアレグリアと接戦を演じて(2着)、同じ馬主のサンデーレーシングの先輩から後輩へ「次期マイル王は任せた」とバトンを受けました。

 今年初戦の海外GIドバイターフ(3月26日/UAE・芝1800m)でまさかの不発(8着)に終わったことは気になりますが、その一戦を叩き台と考えれば、ここは本領発揮の舞台。まともなら、巻き返してくると踏んでいます。

 順調度という点では、前走・GIヴィクトリアマイル(5月15日/東京・芝1600m)組が優位。同じ舞台を経験しているのは強みですし、馬も走りやすいはずです。ここ4年、ヴィクトリアマイル組が毎年連対しているのも、決して偶然ではないでしょう。

 昔と違って、牡馬混合GIでも牝馬が見劣りする時代ではないですから、今後はこのローテからの参戦がより主流になっていくかもしれませんね。なかでも今年は、およそ3カ月の休み明けでヴィクトリアマイルに臨んだ2頭、ファインルージュ(牝4歳)、ソングライン(牝4歳)に上積みが見込めそう。上位候補として考えておきたい存在です。

 他にも、連勝中の上がり馬や斤量の軽い3歳馬など気になる馬はいますが、"レースの中心"という意味では、これら3頭となるでしょうか。



高松宮記念を快勝したナランフレグ

 そんななか、僕が穴馬候補に考えているのは、GI高松宮記念(3月27日/中京・芝1200m)を制したナランフレグ(牡6歳)です。高松宮記念の時にも「ヒモ穴馬」に指名しましたが、距離がマイルになるここでも再度注目しています。

 高松宮記念がスプリント戦のGIになって以降、同レースから安田記念に挑んで勝った馬は、過去にアドマイヤコジーン、ロードカナロア、グランアレグリアと3頭います。アドマイヤコジーンとグランアレグリアがすでにマイルGI馬だったことからすれば、純粋なスプリンターという点で、ナランフレグはロードカナロアに近いかもしれません。

 ロードカナロアは3歳時に一度だけマイル戦の経験がありましたが、それ以降はほとんど1200m戦を使われてきて完全なスプリンターでした。しかし、充実期を迎えていた同馬は、あっさりと距離を克服して一気にマイルGI制覇も成し遂げました。

 当時、僕もこの馬が勝つと見ていましたが、それは「1200m戦では後方からでも、マイル戦なら出たなりにある程度のポジションがとれるだろうから、そこでジッとしていれば、2ハロンの距離延長もこなせるのではないか」という考えがあったからです。

 ジッとしたままの距離延長であれば、そこまでのスタミナロスにはなりません。実際にロードカナロアの直線の弾け方は、スプリント戦と変わらぬ威力が保たれていました。

 さすがに「歴代最強」とも称されるロードカナロアと同等とは言えませんが、ナランフレグも現在競走馬としてのピークを迎えています。追い込み脚質という点でも、ロードカナロアとイメージがダブります。

 丸田恭介騎手はこれまでも愚直なまでに直線勝負を貫いてきましたが、距離が延びてもやることは変わりません。出たりなりのポジションで脚をタメるだけタメ、残り500mから一気に仕掛けてタメ込んだ末脚を出しきるだけ。外目が伸びやすい今の馬場を考えても、外からの強襲がハマる可能性は大いにあり得ます。

 ということで、今回の「ヒモ穴馬」にはナランフレグを指名したいと思います。