風間八宏のサッカー深堀りSTYLE第3回:三笘薫(ユニオン・サン=ジロワーズ/日本)独自のサッカー技術論を広め、サッカー…
風間八宏のサッカー深堀りSTYLE
第3回:三笘薫(ユニオン・サン=ジロワーズ/日本)
独自のサッカー技術論を広め、サッカー界の選手、指導者に大きな影響を与えている、風間八宏氏の新連載。国内外のトップクラスのサッカー選手のテクニック、戦術を深く解説する。第3回は、日本代表の大きな武器として、カタールW杯での活躍が期待されている三笘薫をチェック。ベルギーでも、W杯予選でも猛威をふるった、ドリブルテクニックを分析してもらった。
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動き始めで違いを作る
東京五輪出場後の昨年8月、川崎フロンターレからプレミアリーグのブライトンに完全移籍を果たした三笘薫(25歳)。初年度の2021-22シーズンは、ローン移籍でベルギーのユニオン・サン=ジロワーズでプレーした。

世界の強豪相手にも、三笘薫のドリブルは武器となるか
すると、初の海外挑戦だったにもかかわらず、川崎時代に見せていた自慢のドリブル突破でチームの躍進に貢献。左ウイングバックという慣れないポジションながら、リーグ戦27試合に出場して7ゴール3アシストを記録した。
ベルギーリーグの舞台でも大きなインパクトを残した三笘のドリブルは、なぜいとも簡単に相手を剥がすことができるのか。その理由を、風間八宏氏が説明してくれた。
「まずひとつは、ボールを静止させてから相手に向かっていく動作が、しっかり自分のものになっていること。動き始めるタイミングで相手との違いを作れているうえ、スピードもある。それが、ドリブルで相手を抜ける理由です。
もうひとつは、彼がドリブルをする時は、いつもボールが自分の足元にあるというのもポイントです。しかも、よく見てもらえばわかると思いますが、ボールをあまり動かしていません。それでいて、ステップを踏み替えるだけで相手を動かすこともできている。まさに、ドリブラーらしい特徴を持った選手だと思います」
まだ伸びしろがある
ボールを自分のベストな場所に置き、あまり動かさないという特徴は、前回(連載第2回)で風間氏が解説したレアル・マドリードのルカ・モドリッチのそれに共通している。
「そうですね。ボールを必要以上に動かさない点で、似ていると思います。とくにボールを正面に運び出した時のドリブルは、ボールも縦回転で安定しているので、スピードに乗ることもできています。
ただ、モドリッチと違うのは、ドリブルする度に自分とボールの距離が変わってしまったり、ボールの回転が縦ではなく、斜めになったりすることですね。逆に言えば、そこはまだ彼の伸びしろだと思います。
とにかく三笘の場合、サイドでボールを受けて、しっかりコントロールできた時は、かなりの確率で相手ひとりは抜き去ることができるので、それだけでもチームにとっては大きな武器になります」
左サイドでボールを受けてから、ドリブルを仕掛けてチャンスメイクするプレーは、たしかに川崎時代からよく目にした、三笘お得意のパターンだ。では、三笘は中央や右サイドでも自分の武器を生かすことは可能なのか。風間氏が、そんな疑問に答えてくれた。
「たとえば、中央でプレーするためには、ひとつひとつの技術をさらに緻密にすることが重要で、ボールを受ける技術も必要になってきます。三笘は、川崎時代も現在も左サイドでプレーしていますが、ほかのチームでプレーする場合にどこでプレーするのかは、監督の考え方やチーム事情にもよるので、現時点ではわかりません。
ただ、左サイドでプレーする場合は確実に質の高い仕事はできるので、日本代表の戦力として見た場合も、W杯で彼を左サイドに置けば、計算はできる。もちろん、高いレベルの相手と対峙した時にどうなるのか、相手が2人で対応してきた時はどうなのかなど、そこは実際にやってみないとわからない部分はありますが、あのドリブルはチームの武器になることだけは確かだと思います」
シュート、パスのタイミングがわからない
日本代表での三笘と言えば、W杯アジア最終予選のオマーン戦(アウェー)の後半から出場し、伊東純也の決勝点をアシストした試合と、オーストラリア戦(アウェー)の終盤にピッチに送り出され、あっという間に2ゴールを決めて本大会出場に大きく貢献した試合が印象的だ。
どちらの試合においても、際立っていたのは左サイドからのドリブル突破だった。あれだけ試合の流れを大きく変えられる武器を持っている選手は、それほど多くはいない。それを考えれば、現段階においては、三笘のよさを最も引き出せる左ウイング起用が、日本代表における最適解と見ていいだろう。
「やはり三笘の最大の強みは、左サイドでボールを持った時にしっかりとした"型"を持っていることです。しかも、最近はシュートの質も上がってきていて、ゴールの隅を狙えるようにもなってきました。
それと、ボールをしっかりコントロールできている時は、どのタイミングでシュートを打ってくるのかが、相手にとってわかりにくいという特徴もある。パスするタイミングについても同じことが言えますが、そういったところは非凡なものがあります。
つまり、ドリブルしながらシュートとパスの両方ができるということ。その型を持っているという部分で言うと、左サイドのスペシャリストと言っていいでしょう。W杯のような舞台では、武器を持っている選手なのかそうでないのかは、とくに攻撃の選手にとってはとても重要な要素になります。
個人的には、もっと彼には多くの武器を持ってほしいと期待していますが、少なくとも、現段階でも彼のドリブルが日本代表の武器になっているのは間違いありません」
三笘のドリブル突破が、カタールW杯に挑む森保ジャパンにとっての攻撃の起爆剤になり得ることは、誰の目から見てもはっきりしている。果たして、ドイツやスペインといった強豪チームと対峙した時、三笘の左サイドからのドリブル突破は、どれだけのインパクトを与え、効果を示してくれるのか。
日本のサッカーファンの多くが、そこに大きな期待をかけている。
三笘薫
みとま・かおる/1997年5月20日生まれ。神奈川県川崎市出身。川崎フロンターレの育成組織から筑波大学を経て、川崎に入団。在籍1シーズン半で鮮烈な活躍を残し、2021年8月にブライトン(イングランド)へ移籍。そこからローン移籍し、2021-22シーズンは、ユニオン・サン=ジロワーズ(ベルギー)でプレーした。日本代表は五輪代表として2021年東京五輪でプレー。A代表ではカタールW杯アジア最終予選でも活躍した。

風間八宏
かざま・やひろ/1961年10月16日生まれ。静岡県出身。清水市立商業(当時)、筑波大学と進み、ドイツで5シーズンプレーしたのち、帰国後はマツダSC(サンフレッチェ広島の前身)に入り、Jリーグでは1994年サントリーシリーズの優勝に中心選手として貢献した。引退後は桐蔭横浜大学、筑波大学、川崎フロンターレ、名古屋グランパスの監督を歴任。各チームで技術力にあふれたサッカーを展開する。現在はセレッソ大阪アカデミーの技術委員長を務めつつ、全国でサッカー選手指導、サッカーコーチの指導に携わっている。