宇都宮が琉球を破り5季ぶり2度目のB1優勝、MVP比江島慎はCS平均18.7得点の活躍 バスケットボールB1リーグのチャ…

宇都宮が琉球を破り5季ぶり2度目のB1優勝、MVP比江島慎はCS平均18.7得点の活躍

 バスケットボールB1リーグのチャンピオンシップ(CS)は準々決勝、準決勝、決勝とすべて「2戦先勝」で争われる。宇都宮ブレックスは千葉ジェッツ、川崎ブレイブサンダース、琉球ゴールデンキングスをすべて2連勝で退け、2021-22シーズンのB1王者に輝いた。

「最高のチームが最後にできあがった」と安齋竜三ヘッドコーチ(HC)は胸を張る。レギュラーシーズンこそ東地区4位にとどまった宇都宮だが、5月に入って化けた。CSのMVPに輝いた比江島慎が、その主役だった。

 比江島は6試合で平均18.7得点を記録している。特に準々決勝の第1戦(対千葉/81-70)では21得点7アシスト3スティールの大活躍。準決勝の第2戦(対川崎/77-73)も24得点6アシストのスタッツを残している。何より決めて欲しいところで決める頼もしさが光った。

 安齋HCは優勝記者会見でこう述べていた。

「どういう場面を誰に任せるか、今日もはっきりしていた。マコ(比江島慎)に限らずジョシュ(・スコット)もそうだし(鵤)誠司もそうだけど、そういうところをチーム全体で分かるようになっていた。そこで最後はマコが任された」

 比江島は1990年8月11日生まれの31歳で、191センチ・88キロのシューティングガードだ。

 バスケットではよく「クリエイト」という表現を使うが、比江島ほどこの言葉が似合う選手はいない。

 彼はマークマンの逆を取ってズレを作る、食いつかせて自分やチームメートのスペースを空けるプレーを易々と実行してしまう。小刻みかつ柔らかいステップ、驚異的なバランスを持つ異能で、相手に体を寄せられても肩から上の動きでタフショットを決めてしまう。

 比江島は福岡市立百道中時代から全国区だった。京都・洛南高に入学すると1年生から主力として起用され、ウインターカップを3連覇している。青山学院大でもインカレや関東大学リーグといったタイトルをつかんでいた。

4月30日の千葉戦で悔しさを味わい「比江島慎が帰ってきた」

 ただしBリーグが開幕してから昨シーズンまでの5年間は、“悔しい顔”しか印象に残っていない。彼は毎年のように、王者の引き立て役に回っていた。

 Bリーグ初年度の2016-17シーズンはシーホース三河でプレーしていたが、準決勝で栃木ブレックス(当時)にオーバータイム(※正確には第3戦扱いのショートゲーム)で敗れた。残り30秒の時点で2点リードをする展開ながら、比江島が大詰めで2つのパスミスを喫し、逆転負けを喫する苦い展開だった。

 2017-18シーズンはB1のMVPを受賞し、2018-19シーズンはオーストラリアのNBLに挑戦した。しかし思うような活躍ができずに帰国し、2019年春に宇都宮へ加入している。2020-21シーズンの決勝は1勝2敗で千葉ジェッツに屈し、比江島自身のBリーグ初制覇がならなかった。

 その決勝の試合後の記者会見では、「今の自分に足りないもの」と問われて言葉に詰まり、安齋HCに助け舟を出される一幕もあった。

 2021-22シーズンも宇都宮の主力として、引き続き“いいプレー”は見せていた。今季の51試合に先発し、平均11.5得点、3.7アシストを記録している。それがこのCSは“凄いプレー”を連発していた。

 5月14日の準々決勝第1戦で大活躍を見せた彼は、こう口にしていた。

「去年の(決勝で千葉に)悔しい負けがあったので、そこの悔しさだけをぶつけた。千葉相手に勝てている試合は、しっかり自分のバスケットができて、チームに影響を与えられていた。自分らしいドライブ、3ポイントやアシストも入れながら、チームに影響を与えることができたので良かった」

 安齋HCはこんな言い回しで、比江島の活躍を称賛していた。

「いつの間にか、比江島慎が帰ってきた」

 指揮官は比江島が“帰ってきた”きっかけとして、レギュラーシーズン終盤に組まれていた4月30日(71-74)と5月1日(72-69)の千葉戦を挙げていた。

「2連戦の1試合目は0点でした。マコが出ていた時間はプラス18でしたし、オフェンスの起点はマコでしたけれど、決めきれなかったという本人のもどかしさがあって。その次の試合からアタックモードに入った。自分第一、セルフィッシュなくらいにやり出して、でもそれが僕らの望んでいる比江島慎だから。そこにやっときてくれたんだという感じです。元々やれるのは分かっていました」

勝負どころでの強気なアタック、決勝でも第4クォーターに2桁得点

 比江島は5月1日の千葉戦で19点を挙げ、チームを72-69の勝利に導いた。彼は能力に対してアタックマインドが控え目で、「行けるのに行かない」傾向のあった選手だ。しかし2022年5月の比江島は技と体に“心”が伴い、覚醒し、チームを背負う大活躍を見せた。

 バスケットボールは確率のスポーツで、得点の期待値の高い選手ならばセルフィッシュにアタックすることがそのまま“チームプレー”になる。

 琉球とのCS決勝も、28日の第1戦は54-56の2点ビハインドで迎えた第4クォーターに11得点。29日の第2戦は55-54の1点リードで迎えた第4クォーターに14得点。試合の行く末が分からない、一番得点の欲しい状況で彼はきっちり決め切った。

 栃木にはポイントガードの鵤誠司、テーブス海といった優れたプレーメーカーがいる。そんななかでも比江島は勝負どころのハンドラーを任され、チームの舵取りを委ねられていた。インサイドとの連係で崩すピック&ロールを多用し、自らゴール下に切れ込み、高確率で得点に結びつけていた。

 琉球も勝負どころで比江島が仕掛けてくることを予想していたはずだ。ただ「ファウル以外では止められない」ところが彼の凄みだ。さらに外からのシュートやギリギリの間合いでパスを通す上手さもあり、ドライブだけを防げばいいわけではない。

 この競技のオフェンスはミスマッチを突くことが鉄則で、確かに比江島は外国出身のインサイドプレーヤーに対して動作の速さと切れでアドバンテージを取れる。とはいえ大きくて高い選手がゴール下に待ち構えていれば、物理的にスペースがない。しかし比江島はダブルクラッチのような大技も駆使して、悪い体勢からでもタフショットを沈め、フリースローを獲得していた。手のつけられない活躍だった。

「比江島が比江島らしくプレーした」ことが、宇都宮が東地区4位から5シーズンぶり2度目のB1を制した最大の要因だ。シーズンの山場で彼が見せたプレーは、それくらい驚異的だった。(大島 和人 / Kazuto Oshima)