来季も現役続行することを明らかにした村元哉中・髙橋大輔 アイスダンスのカップル、村元哉中、髙橋大輔のふたりはインスタグラムでアカウント「かなだいオフィシャルチームアカウント」を立ち上げ、2022−2023シーズンの現役続行を発表…
来季も現役続行することを明らかにした村元哉中・髙橋大輔
アイスダンスのカップル、村元哉中、髙橋大輔のふたりはインスタグラムでアカウント「かなだいオフィシャルチームアカウント」を立ち上げ、2022−2023シーズンの現役続行を発表した。
「今からワクワク。かなだいの新しい世界を早く披露したいです」(村元)
「3シーズン目、どんどんレベルアップしていきたいので応援をお願いします」(髙橋)
カップル結成2年、「かなだい」と呼ばれるようになったふたりは、あらゆる向かい風を突っきってきた。髙橋はシングルから転向した"ルーキー"で、村元も2シーズン活動を停止したあとの再始動だった。しかも、コロナ禍でスタートから何ひとつ予定どおりいかない。そのなかで、「超進化」と言われる躍進を遂げた。
「ようやくアイスダンサーになれたかなって思っています」
今年3月、世界選手権に出場後、髙橋は月夜に染み入るような声で語っていた。その穏やかさは、激動だったシーズンの証だった。
3シーズン目、かなだいが見せる世界とはーー。
駆け抜けた2年間の「超進化」
2021−2022シーズン、結成2年目を迎えたかなだいは気力に満ちていた。
「(2年目は)大ちゃん(髙橋)のリードを感じています。だんだん息は合ってきて。アイスダンスは時間をかければかけるほど合ってくるので、時間との勝負でもありますね」
シーズン開幕前のインタビュー、村元はそう語っていたが、ふたりは確かな手ごたえを感じていた。
そして迎えた昨年9月、アメリカの大会「レイバー・デイ・インビテーショナル」に出場すると、成長ぶりを高らかに示した。リズムダンス(RD)、フリーダンス(FD)の合計スコアは214.44点で、幸先のいい優勝を飾った。表現力は群を抜き、FDの『ラ・バヤデール』の「曲の解釈」では10点を与えるジャッジもいた。
参考記録ではあったが、これが進撃の予兆となった。
昨年11月のNHK杯では、179.50点で日本歴代最高得点を軽々とたたき出した。
「たとえミスがあっても焦らず動じず、落ち着いて滑れるようになってきました。積み上げてきた練習があるので、自信を持って」
村元はそう説明していたが、日の丸を振る観客のなかで滑ったRDの『ソーラン節&琴』は壮観だった。さらに同月、ワルシャワ杯でも190.16点を記録し、歴代最高得点を10点以上も更新している。
12月、全日本選手権は2位にとどまり、惜しくも北京五輪出場を逃した。そのショックは相当なものだったが、すぐに気持ちを切り替えた。今年1月、エストニアで開催された四大陸選手権ではチャンピオンシップ日本勢史上最高順位の2位。そして3月、フランスで開かれた世界選手権に出場し、結成2年で「世界」の舞台に立った。
「はじめの時って、自分たちがどの位置にいるかわからない。ある意味ではノープレッシャーで、演技のことだけ考えていました」
髙橋は、駆け抜けた2年間をそう振り返っていた。
「試合を増すごとに評価をいただけて、自分たちがここ(世界選手権)にいけるんじゃないかって気持ちや欲も出てきました。自分たち自身でかけるプレッシャーのなかで戦うところもあって、それで緊張感が高まってミスになったのはあるかもしれません。カップルを組んで実質1年ちょっとの経験値の浅さは出ました。僕がフォローしきれなくて......」
現役継続発表前に語った「展望」
髙橋はいつだって健気に自分自身に答えを見つけ出そうとする。その真摯さが、競技者としての下地なのだろう。フィギュアスケートで世界を切り開いた男の矜持だ。
だからこそ、現役続行を簡単には口にしていない。
しかし世界選手権から現役続行を発表するまで、関係者に会うたび、「これからじゃない!」と励まされた。振付師のブノワ・リショーには演技前に「やめる必要はない」と力説された。2年続け、世界が広がりつつあった。
ふたりは考える日々をつくったあと、ひとつの答えを出した。
ーー現役を続ける場合、何を見せたいですか?
決断を下す前、髙橋にそう訊ねたことがあった。
「うーん......何を見せられるか、わかりきれていません。どこが最終か、ピークがわからないから、何を見せたいかも言えなくて。もし続けるなら、それを知りたいです。何を見せられるのかを知りたい」
それは彼らしい正直な言葉だった。村元も、そこに続けた
「大ちゃんの言葉を聞いて、しっくりときました。自分もアイスダンスから2シーズン離れて、大ちゃんと再スタートし、2年間やったうえでアイスダンサーとして成長したなって感じていて。だからこそ、大ちゃんと次は何ができるんだろうって。大ちゃんとなら、いろんな世界観を出して表現ができるはず。やってみないとわからないからこそ、ワクワク感があります」
ふたりは息が合っていた。アイスダンサーは同じ絵を描きながら、互いが支え合う。その緻密さと完璧さを求められる。
そこで、こんな質問をぶつけた。
ーーアイスダンスは「引き算の競技」の側面があり、失敗が大きく響き、取り返す要素は少なく、どこまで完璧に仕上げられるか。現役続行したら、どう立ち向かいますか?
髙橋はこう答えている。
「大逆転できるスポーツではなくて、それこそ引き算のスポーツじゃないですけど、完璧にできるのは当たり前、GOE(出来ばえ点)で稼ぐか、マイナスをなくしていく勝負ですね。シングルみたいに、ジャンプでこけた明らかな大きなミスではなく、お客さんからするとわからない細かい得点の積み上げになってきます。そこで、(世界選手権FDの演技のように)ローテーショナルリフトのレベルがベーシックになると、追い上げられる点数でなくて。その意味ではアイスダンスは密度の濃さが大事だなって」
3年目、ふたりはアイスダンサーとして密度に迫る。その濃厚さが、ふたりの世界となるはずだ。