「甲子園夢プロジェクト」初期メンバーの林龍之介くんが夢叶える 知的障害がある球児の甲子園出場の道を探る「甲子園夢プロジェ…

「甲子園夢プロジェクト」初期メンバーの林龍之介くんが夢叶える

 知的障害がある球児の甲子園出場の道を探る「甲子園夢プロジェクト」に朗報が届いた。28日に東京都立第五商業高等学校グラウンドで行われた練習会で、初期メンバーでもある愛知県立豊川特別支援学校3年の林龍之介くんが、今夏の「第104回全国高校野球選手権愛知大会」に連合チームの一員として参加すると発表された。林くんは「野球歴は浅いけど、精一杯頑張るので応援よろしくお願いします!」と声を弾ませた。

 都立青鳥特別支援学校で主任教諭を務める久保田浩司さんが立ち上げた「甲子園夢プロジェクト」は、2021年3月にスタート。知的障害がある球児のために合同練習会を開催しながらも甲子園を目指すチャンスが得られるようにサポートしている。第1回練習会の参加者は11人だったが、この日は北海道から京都まで各地から24人が参加した。

 幼い頃から地元・中日ファンだった林くんは、中学3年の時に甲子園球場で高校野球を生観戦。その感動が忘れられず、自分も甲子園を目指したいと思ったが、特別支援学校に硬式野球部はなかった。そこで陸上部に所属しながら自宅でバットを振り、週末には父と河川敷でキャッチボールやノックを受け、練習を続けた。そんな時、夢プロジェクトと出会い、大勢で野球をプレーする楽しさを知った。

 林くんの甲子園への夢を後押ししたのは、昨年9月に訪れた長姉の急逝だった。最大のサポーターでもあった長姉との別れに意を決し、特別支援学校での三者面談で「野球部を作りたい」と担任に直訴。その熱意に動かされた両親や担任らが10月から本格的に話し合いを開始。野球部を作ることはできなかったが、愛知県高野連に豊川特別支援学校の登録が叶い、この度、5校による連合チームのメンバーとして県予選に参加できることとなった。

 朗報が届いたのは5月上旬。当初は「(実現は)難しいと思っていたので、本当に嬉しかったです!」と目を輝かせる。この日、練習会に同行した母・まゆみさんは「家族みんなで喜びました。夢が叶いました」と笑顔を浮かべながら、真面目な性格ゆえに1人での練習に熱中し、これまで2度腰を痛めてしまった息子の頑張りに思いを馳せた。

鹿児島特別支援学校に続く県大会参加、今後の道を探る1つの指針に

 打撃が得意という林くんは、この日の練習会でも力強い大きな打球を何度も外野へかっ飛ばした。「守備とスライディングが苦手」と言い、練習会後半にはスライディングの特別レッスンを実施。コーチにコツを教えてもらうとすぐに上達し、自信を深めた様子だった。

 29日には連合チームとして初めての練習試合に参加する。「楽しみな気持ちと緊張が半分半分です」と照れくさそうに話す顔には終始、満面の笑みが浮かぶ。連合チームには合計18人が集まる予定で、林くんは得意の打撃を生かしながら外野のレギュラー獲りが目標。県予選に出場するためのユニホームは現在製作中で、胸には「TOYOHASHI SSS(Special Support School)」と入る予定だ。

 夢の実現に向けて自分の想いを周囲の大人たちに伝えられたのも、夢プロジェクトの練習会に参加して、1人ではなく大勢で野球をする楽しみ、ゲーム形式で練習する充実感を知ったから。主催する久保田さん、コーチとして活動をサポートする元ロッテ・荻野忠寛さん、そして練習会で出会った同じ夢を持つ仲間たちの存在にも大きく感謝。「皆さんのサポートのおかげ。精一杯頑張ります!」と力を込める。

 鹿児島では、2016年から鹿児島特別支援学校が連合チームとして県大会に出場し、2019年には白星を飾っている。だが、知的障害がある球児が練習や試合に参加できる環境はまだ整っておらず、今回の林くんのような例は全国でも稀だが、特別支援学校へ通う球児にとって今後の道を探る1つの指針となりそうだ。

 愛知大会は7月2日に開幕する予定。中日・石川昂弥内野手のファンで「長打が魅力。尊敬しています」と話す林くんは、まず1安打、そして1勝を目指し、夏に向けて準備を進める。(佐藤直子 / Naoko Sato)