宇都宮が川崎に2連勝、2年連続でCSファイナルへ進出 東地区4位からのB1チャンピオンシップ(CS)決勝進出だ。バスケッ…
宇都宮が川崎に2連勝、2年連続でCSファイナルへ進出
東地区4位からのB1チャンピオンシップ(CS)決勝進出だ。バスケットボールB1リーグの宇都宮ブレックスは、東地区1位・千葉ジェッツ、東地区2位・川崎ブレイブサンダースをいずれも2連勝で退けて、西地区王者・琉球ゴールデンキングスとのファイナルに臨む。
宇都宮は昨シーズンのB1準優勝チームだが、今季の下馬評は決して高くなかった。ライアン・ロシター(→アルバルク東京)、ジェフ・ギブス(→長崎ヴェルカ)、LJ・ピーク(→熊本ヴォルターズ)が他クラブに移籍したことで、チーム作りがリセットされていたからだ。今季の宇都宮には他のCS出場チームのような強力な帰化選手、アジア特別枠の選手はいない(※アジア特別枠のブランドン・ジャワトはシーズン終了を待たず契約を解除されている)。失礼を承知で言い切ると、戦力の「足し算」は昨季と比べてかなりマイナスだった。
2021-22シーズンの開幕は群馬クレインサンダーズとの対戦だったが、B1初挑戦の相手に連敗を喫する厳しいスタートだった。
開幕戦で目を覆ったのは、新加入の外国籍選手チェイス・フィーラーのパフォーマンスだった。フィールドゴール成功率は10月1日の初戦は25%、第2戦は22.2%と低調で、ゴール下で相手に競られるとシュートの決まる気配がなかった。パワーフォワードとしては非力で、ウイングが務まるような打開力もあるようには見えなかった。
開幕から40日ほどが過ぎた大阪エヴェッサ戦の試合後、安齋竜三ヘッドコーチ(HC)にフィーラーの起用について聞いてみた。指揮官はこう説明していた。
「チェイス自身もかなり悩みながらやっていると思うけれど、その中で見えてきている部分もある。3番と4番の両方で使いたい選手なので、まずそのどこでアドバンテージを出せるかというところ。本人もそうだし、僕やチームがどう使うかにも成長していく部分がある」
5月21日と22日のCS準決勝・川崎戦では、その彼が“成長”を示し、アドバンテージを発揮していた。特に第1戦(83-70)は18得点、7リバウンド、3アシスト、2スティールで勝利の立役者となった。第2戦(77-73)も12得点、9リバウンドを記録している。
フィーラーの強みを引き出した宇都宮のチーム力
チーム内の序列はジョシュ・スコット、アイザック・フォトゥに次ぐ“外国籍の3番手”だし、出場時間も20分前後に限られる。しかし与えられた時間の中でしっかり強みを出し、欠かせない存在になっていた。オフェンスでは外角のシュートを高確率で沈め、時には自陣からのボール運びを任され、ウイングの位置では起点になるパス能力も発揮。守備では長い腕を生かしたリバウンド争い、スティールを見せつつ、センターからウイングまでどんな相手にも脚力を生かして粘り強く付いていた。
外国籍選手は日本人選手に比べるとすぐに結果を求められがちで、シーズン中に人を入れ替えるチームも多い。しかし安齋HCは辛抱強くフィーラーの強みを探し、チームにフィットさせていた。
渡邉裕規はこう口にする。
「何年もかけて作って、万全を期して優勝を目指したものが(移籍で)なくなって、チェイス(・フィーラー)とアイザック(・フォトゥ)が入った。彼らも大変だったと思いますけど、初めての日本で、でもその中でもこういう結果を残して、ああいう戦う姿勢を見せている。日本のチームに対するリスペクトと柔軟性が彼らにはある」
安齋HCは“ライアン・ロシターが抜けた穴”と、そのカバーについて問われて、こう答えていた。
「ライアンが素晴らしい選手なのは間違いないですし、僕もずっと一緒にやっていて助けられました。今シーズン入ってきたチェイスとアイザックも素晴らしい選手で、あと周りの選手のサポートがすごく大きい。ベンチでもナベ(渡邉裕規)とか(田臥)勇太も声をかけてくれている。そういうチームだから、あの2人も早く一員になろうとして、どうなれるかを考えてやってくれた」
確かに準決勝を見れば、彼らは間違いなく“素晴らしい選手”だったが、それを引き出したのは宇都宮のチーム力だ。
渡邉裕規、田臥勇太の両ベテランはベンチに座る時間こそ長いが、仲間にアドバイスを送り、時には声を張り上げてチームにエネルギーを送っている。さらに言えばアウェーにも大挙して駆けつける“ブレックスネーション”の後押しもある。このCSではフィーラー以外にもテーブス海、荒谷裕秀ら若手が活躍を見せたが、宇都宮には人の力を引き出す文化がある。選手が入れ替わっても、チームカルチャーは残っていた。
本当の強さは「数字に出ない要素」
準決勝で連敗を喫した川崎の佐藤賢次HC、選手が挙げていた宇都宮の強みが、ディフェンスのバリエーションと“使い分け”だ。佐藤HCは22日の試合後にこう述べている。
「宇都宮さんはいろんなディフェンスを混ぜてくる。ショウ(出るふりをして戻るディフェンス)で来たり、下がったり、スイッチしたり……」
宇都宮はフィジカルで、インテンシティの高いチームだ。しかも試合の中で柔軟に相手への対応を変えてくる。タイムアウト明けにゾーンディフェンスを使う、相手のシュートが入ったらマンツーマンに戻す……というような、ありきたりな変化ではない。どうやって選手同士が情報を共有しているのか不思議に思えるようなタイミングで、違う守備戦術に変えてしまう。
守備戦術の消化、遂行力といった部分でも、フィーラーとフォトゥはチームにフィットしている。安齋HCの手腕と、コミュニケーションの力だろう。
失点の少なさ、リバウンドの多さ……。宇都宮の強さは、そうやって数字で表現できる。しかし本当の強さはカルチャー、コミュニケーションといった数字に出ない要素だ。(大島 和人 / Kazuto Oshima)