昨年の11月14日に開幕したDリーグのセカンドシーズンは去る5月18日、チャンピオンシップへの進出をかけた決戦にして最終ラウンドとなるラウンド12を終えた。ここまで、全Dリーガーが挑んできた「まったく…

昨年の11月14日に開幕したDリーグのセカンドシーズンは去る5月18日、チャンピオンシップへの進出をかけた決戦にして最終ラウンドとなるラウンド12を終えた。

ここまで、全Dリーガーが挑んできた「まったく新しいナンバーを2週間に1度のハイペースで12作品“ぶっ通し”で披露する」という長きにわたる前代未聞の戦いも、二度目のクライマックスを迎えたのである。会場の東京ガーデンシアターも、コロナ対策で一席ごとに間隔を空けての客入れとなってはいるものの、着席可能シートはほぼ満席、これまで以上に多くのダンスファンで埋め尽くされた。

レギュラーシーズンはこの日をもって終了。全11チームの中から勝ち進んだ6チームによって、6月5日(日)にトーナメント制となるチャンピオンシップが開催される。

前回のラウンド11で既にチャンピオンシップへの進出が確定したセガサミー・ルクスとフルキャスト・レイザーズ以外の、上位で拮抗している数チームにとって、このラウンド12はチャンピオンシップ進出の残り4枠を賭けた大勝負であり、また進出は厳しいと思われるチームにとっても、来シーズンに向けて有終の美を飾り、足がかりを探すべく用意されたDリーグ2年目最後の大舞台である。

これまでも全てのラウンドを通して、各チームが発するエネルギーの強さやパッションを存分に受けとり清々しい気持ちにさせてもらってきたが、今回はレギュラーシーズンの「ラスト・ショー」。これまでよりさらに、全ダンサーのひたむきな想いが伝わってくる戦いが繰り広げられ、各チームから過去最高の出来と思われる素晴らしいナンバーが届けられた。そこには「命が燃えている」としか言いようのない、純度が極めて高いエナジーが宿り、見守る私の目にも、自然に何度も涙が浮かぶこととなった。

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■カドカワ・ドリームスが95.5の史上最高得点を叩き出し優勝

そんな煌めきがいっぱいのラウンド12で優勝をさらったのは、確かなスキルの高さとバイブスの強さが毎回印象的なカドカワ・ドリームズ。機械仕掛けの人形にエネルギーが通って炸裂し、逆再生が巻き起こったような動きが印象的な振り付けで、フォーメーションから技の構成までが考え抜かれた、観る者を異次元へと誘う素晴らしいナンバーが披露された。また、アニメーションの映像のようにも見える展開によって、全員の技とスキルが融合し集結した瞬間の爆発力が実に凄まじく、今ラウンドでもっとも会場を盛り上げ、湧かせていたことも記しておきたい。

ドリームズはこのナンバーで、Dリーグ史上最高得点となるジャッジポイント77点を叩き出し、オーディエンス・ポイント18.5点と併せて文句なしの優勝を飾った。しかしここで番狂わせと言うべきか、はたまた勝負の世界の厳しさと言うべきか、この史上最高得点をもってしても総合得点で僅かに及ばず、チャンピオンシップ進出を逃す結果となったのである。

世界初のダンスリーグであるDリーグのルールは、ある意味、いまだ試行錯誤中と見受けられるが、今回の結果を見ても、ダンスをリーグ戦で競技し、ジャッジするということの難しさを思わずにはいられない一幕となった。

チャンピオンシップに進出できるチームは6チーム。先に述べた、前ラウンド終了時に既に進出が決定したセガサミー・ルクスとフルキャスト・レイザーズの他に、総合順位3位のコーセー・エイトロックス、4位のエイベックス・ロイヤルブラッツ、そして“ワイルドカード”枠でセプテーニ・ラプチャーズとディップ・バトルズが残る4枠に入り込んだ。

シーズン優勝を果たしたSEGA SAMMY LUX(C)D.LEAGUE 21-22

■3ナンバーを披露する「尋常ではない」チャンピオンシップの戦いへ

KOSE 8ROCKS(C)D.LEAGUE 21-22

総合優勝をかけたチャンピオンシップは前シーズン同様、トーナメント制で行われるため、優勝するためには3つの戦いを勝ち上がらなくてはならない。各チーム、それぞれ既に戦いのためのナンバーを用意しているとの話もあったが、それを同日内で踊り分けながら戦わなくてはいけないというルールは何度想像しても「尋常でない」と感じてしまう。たとえばエイトロックスの1ナンバーを2週間練習し続けたのち本番で踊るだけでも、消費エネルギーは相当なはずで、普通の人だったらしばらくは起き上がれないレベルだろう。それを3ナンバー仕込んで連続で闘うのだ。身体も魂も頭も酷使され、まさに”燃え尽きる”という言葉がもっともしっくりくる表現だと感じてしまう。

しかし、だからこそ、そこに出現する魂の燃焼の目撃者となることに至上の価値が生じ、それがDリーグにしかない醍醐味となってゆくのかもしれない。

ラウンド12の最後、ダンサージャッジの黒須洋嗣さんが「今回はとくに見ていて泣いた。勝ち負け以上の素晴らしさがあった。みんな美しいし、格好いい。ありがとう! Thank You!」と言葉を詰まらせていたが、審査員のみならず、Dリーガー自身のコメントからも「ありがとうしかない」「感謝」「最高に幸せ」など、歓びを表す言葉が次々に飛び出し、全員から万感胸に迫る様が見て取れた。

Dリーグの戦いは生身の勝負ゆえ、そこに光と影が色濃く生じることは避けられない。カドカワ・ドリームズのRyoはチャンピオンシップ進出を逃し、ステージ上で悔しさのあまり大泣きしていたが試合後、ラウンド優勝の囲み取材では落ち着きを取り戻し、感謝と共に、Dリーグを今後も全力で盛り上げていくことを誓い、笑顔を見せてくれた。そこには紛れもない気高きスポーツマンシップが輝いており、この敗退を乗り越えた来シーズンでのドリームズの躍進がすでに見えるかのようでもあった。

全Dリーガーの煌めきはここまでの舞台で磨きに磨かれ、眩いまでになってきている。ダンサーという表現者として、明らかに成長を遂げている彼らによって、来たるチャンピオンシップは過去最高の盛り上りを見せるに違いない。僅か20日間という限られた時間のなかで、勝ち残った6チームが生み出し磨く3つの珠玉のナンバーに思いを馳せ、美しき頂上決戦の時をダンスの神と共に待ち受けたい。

KADOKAWA DREAMS(C)D.LEAGUE 21-22

◆THE GREAT HEART of“8ROCKS” ブレイキン世界一のISSEI率いる熱き魂

◆鮮烈参入を果たしたdip BATTLESの煌めき SHUHOとRAIKIが見据える「国民的スター」への道筋とは

◆日本中の「ダンサー」に幸せをもたらすDリーグ 魂までが踊りだす喜びがここにある

著者プロフィール

Naomi Ogawa Ross●クリエイティブ・ディレクター、ライター

『CREA Traveller』『週刊文春』のファッション&ライフスタイル・ディレクター、『文學界』の文藝編集者など、長年多岐に亘る雑誌メディア業に従事。宮古島ハイビスカス産業や再生可能エネルギー業界のクリエイティブ・ディレクターとしても活躍中。齢3歳で、松竹で歌舞伎プロデューサーをしていた亡父の導きのもと尾上流家元に日舞を習い始めた時からサルサに嵌る現在まで、心の本業はダンサー。