1年前のことについても、素直な気持ちを語った大坂現地5月20日、大坂なおみ(フリー/世界ランク38位)は全仏オープンの前日会見に臨み、第27シードのアマンダ・アニシモワ(アメリカ/同28位)との対戦…

1年前のことについても、素直な気持ちを語った大坂

現地5月20日、大坂なおみ(フリー/世界ランク38位)は全仏オープンの前日会見に臨み、第27シードのアマンダ・アニシモワ(アメリカ/同28位)との対戦について、「私は、負けたら、より勝ちたいという気持ちが込み上げるタイプだし、あの試合からたくさんのことを学びました。だから、試合がどうなるか見てみたいと思います」と語った。

【動画】“スマイルもみせた”大坂なおみ記者会見の様子がこちら

前回大会では、開幕直前にSNSで大坂は「アスリートのメンタルヘルスを無視している」「何度も聞かれたことのある質問をされたり、疑念を抱かせるような質問をされたりする」と綴って、同大会の記者会見を行わないと宣言。これが大きな波紋を呼び、1回戦後に大会を棄権すると発表し、2018年のUSオープン以降、うつ病に悩まされていることを告白した。

まずは外国記者から、1年前のことと現在について聞かれると、「正直に言うとわかりません」と返答したうえで、昨年の全仏後に出場したUSオープンでは、選手ラウンジに「ちょっとしたメンタルケア・スペースのようなものもありました。それを取り入れているのは素晴らしいと思います」とコメント。さらに、東京オリンピックでは、みんなからお礼を言われる経験をしたし、「アスリートは皆、同じような経験をするけれど、みんなそのことをあまり口にしないだけなんだと思います」と意見を語っている。

驚いたのは、対戦相手がアニシモワだと知ったのが、会見の2時間前だったということ。
「今日発表されると思っていて。それで、ウィムと『抽選があったんだ。知らなかった。アニシモワと対戦なの? 冗談でしょ?』と話をしていたんです」と大坂。そのうえで、「私にとっては、ウォーミングアップの時よりも、1回戦で対戦したほうがいい」「私は、負けたら、より勝ちたいという気持ちが込み上げるタイプだし、あの試合からたくさんのことを学びました。だから、試合がどうなるか見てみたいと思います」と試合が楽しみだと語っている。

以下は、会見での一問一答である。


Q.パリにおかえりなさい。いかがですか?

「他の大会とは違いますし、またここに戻って来られてうれしいです」

Q.大会前には足も痛めていましたね。

「皮肉なことに、このクレーシーズンは最も準備に費やしたのに、マドリードでうまく行かず(2回戦敗退)、ローマも棄権することになってしまった。本当に残念です。ただ、ヨーロッパを旅することはできました。マドリードの前は、スペインのどこかの国にいました。マヨルカ島にも行ったし、ローマのあとはニースに行った。モナコではかっこいい車も見ました。そのあたりを探検できたのは本当によかったですね」


私がテニスをプレーできる時間は限られているので
その中でベストを尽くさなければいけないという思いがある

Q. ローランギャロスでの練習は思い通りにできているでしょうか?

「私としては、この大会を欠場することはありえません。体への負荷に気をつけて、痛み止めを飲んだりしながら、それなりにやっています。これまで、多くのグランドスラムでも痛み止めを飲みながらプレーしてきました。(2019年の)全豪で(ペトラ)クビトワと対戦した時も、5試合くらい腰の調子が悪かったんです。だから、ケガをしている時でも、いいプレーができる可能性はあると思っています」

Q. 「Evolve」(自身が立ち上げた事務所)を立ち上げてから、初の会見です。どう考えているか、教えてもらえませんか?

「何度も言っていることですが、ロールモデル(お手本)というのは本当に重要だと思っています。これまで女性アスリート(のロールモデル) がいなかったのに、男性はたくさんいたのがとても興味深かいことでした。だから、どうなんでしょう。これは旅だと思っていて、多くのことを学ぶことができそうと思っているし、そのプロセスも見ていただけると思います」

Q. 個人的な問題やメンタルヘルスの問題について、1年前と比較してどの程度対応できるようになったと感じますか?

「正直に言うとわかりません。私自身、セラピストに会っているとか、いろいろなことを人に話しています。でも、一般的な話として、昨年の全仏の後のグランドスラムはUSオープンでしたが、選手ラウンジにはリトリート(本来の自分に戻るための時間)するための、ちょっとしたメンタルケア・スペースのようなものもありました。それを取り入れているのは素晴らしいと思います」

Q. 今大会は何があっても戦うという決意を語っていました。それはどこから来ているのでしょうか? 

「よくわからないのですが、私がテニスをプレーできる時間は限られているので、その中でベストを尽くさなければいけないという思いがあるからだと思います。他の選手の中には、もしかしたらひどくケガをしていて、この大会に出たいと思っている人もたくさんいるはず。私の小さな悩みは大きな問題ではないと思っています。ここは若いころからテレビで見ていたグランドスラムですし、(出場できるのは)私にとっては大きな名誉です」


正直に言うと、ここ(パリ)に来た時
とても心配していました

Q. オリンピックのシモーネ・バイルズ(体操)のように、競技中にメンタルヘルスについて発言する選手もいます。それはどんな意味があると思いますか? 

「私としては、いい感じとは言えないかもしれませんね。オリンピックに参加して、選手村を歩いていたら、みんなからお礼を言われたりして、とてもおもしろい経験をしました。アスリートは皆、同じような経験をするけれど、みんなそのことをあまり口にしないだけなんだと思います」

Q. 先ほどイガ・シフォンテク(ポーランド)が世界ランク1位になってからのロッカールームの変化について語っていました。共感する部分がありますか?

「私は5大会連続優勝をしたことがないので、わからないです(苦笑) でも1位だった時には、自動的に(組み合わせの)トップハーフになりますね。だから、そういうちょっとしたことがきっかけで、“ああ、自分は1位になれるだけの実力があると思われているのかな”と感じたりもしました。私としては、彼女が成長していく姿を見てきたので、本当にその活躍には驚かされています。彼女の残りのキャリアがどうなっていくのかを、見てみたいですね」

Q.ケガや結果はさておき、クレーシーズンでの経験を楽しめていますか?

「結果もそうですが、自分としては、全体的に昨年よりも今年のほうが、チームとの絆も深まり、いろいろなことを試行錯誤できているような気がしています。また、異なるプレースタイルを試したりもしました。本当に素晴らしい時間です。正直なところ、守るべきポイントはすべて守れたので、いい感じですよ。心配するようなことは何もないと思うけど、私は考えすぎる性格なので、ちょっとした問題は出るかもしれませんね。でも、ほとんどは、楽しい経験になるように振る舞っているつもりです」

Q. 昨年は、テニス以外のことがいろいろありましたね。ここに帰ってきた時の気持ちを教えてください。

「正直に言うと、ここに来た時、とても心配していました。私の対応に不満があったこともありますが、私が不快な思いをした人たちにバッタリ会ってしまわないか、ということが心配でした。でも、ほとんどの場合、みんな本当にポジティブに受け止めてくれていると思います。この記者会見についても、たくさんの質問を受けるだろうと思い、とても心配していました。頭から離れないとは言いたくないけど、まだ考えてはいるし、インディアンウェルズの時みたいに、コートでファンに何かを言われた時のために準備もしています。ただ、ほとんどの場合は大丈夫だと思っています」

Q. 1年前と比べて、ご自身の変化を教えてください。

「コートニーやスタンフォードにいた16歳の頃から一緒に育ってきた人たちに向けたコメントかもしれませんが、あのころの方がおもしろかったような気がしますね(笑) 昔はジョークを言って、それが伝わるかは気にしていませんでした。ジョークを説明し直したりもしたし。変わったと思うのは、観客を理解しようとするところかな。スタンドアップコメディアンとして、何がOKで何がNGなのかを見極めようとしている感じかな。でも、そうですね。それは私にとって変化したことかもしれないね。何を言っていいか、何を言ってはいけないかを分析するようになりました。ただ、ほとんどの場合、私は自分であるようにしたいと思っています」


会見直前に対戦相手を知らされて
「ウィムが冗談を言っているんだと思いました」

Q. 初戦の相手はご存じですか?

「ウィム(フィセッテコーチ)が2時間くらい前に教えてくれましたよ。私は、ウィムが冗談を言っているんだと思いました。冗談だろう? みたいな。いや、冗談じゃない言い方だったんです。でも、私にとっては、ウォーミングアップの時よりも、1回戦で対戦したほうがいいんです。だから、他のラウンドで対戦するよりも、1回戦でシードと対戦するほうが楽。お互いに、この経験を活かすことができると思います。あの試合では、私が2つのマッチポイントを握りました。それは、安心感につながると思います。正直、彼女にとってクレーが良いサーフェスなのかどうかはわかりません。だから、全豪オープンで彼女と戦えて良かったと思うし、その経験を生かすことができると思います。インディアンウェルズで彼女とエキシビションマッチをした時は、完全にやられてしまいましたが(笑)  だから、しっかり取れればいいなと思います」

Q.アメリー・モウレスモがトーナメントディレクターになりました。何か変化を感じますか?

「彼女がトーナメント・ディレクターになったことは、本当にすごいことだと思っています。彼女とも話をしました。練習後、コートを出たら彼女を見かけて。本当に不思議ですね。これまで彼女を間近で見たことがなかったので。彼女の試合はテレビで見ていただけなので、本当にすごい方だと思っています。とても親切で、素晴らしい仕事をしてくれていると思いますし、大会の進行を見るのは、とてもクールだと思います」

Q.全豪で対戦したアニシモワですが、嫌だったところはどこでしょうか?

「彼女が打ったショットで気に入らないものがあったということはありませんでした。ただ、彼女がランダムに打つボールがおもしろくて、笑い出してしまうんです。例えば、彼女のサービスリターンは本当に素晴らしかったですね。素晴らしいファーストサーブを打っても、彼女がウィナーにしてしまう。何度も起きていたので、運ではなく、彼女が意図的にやっていたのだと思います。だから、嫌いというわけではないのですが、“もっとうまくならなくちゃ”という気持ちになりますね。そういう選手と対戦するのは好きです。自分のプレーの向上にもつながると思うので。私としては、クレーコートで彼女と対戦したほうがいいのかもしれないと思っています。だからいい試合になると思います(笑)」 

Q.アニシモワが対戦相手とわかった時に「冗談でしょ?」と思ったとおっしゃっていましたが、どんな意味合いですか?

「正直、冗談だと思ったんです。実は2、3日前に、ドローが決まってイガと対戦するという夢を見たんです。正直、怖かったですね(笑) ノーシードとして対戦する選手で一番イヤなのは誰だろうと考えていました。イガが頭に浮かんだので、そうならなくてよかったです。それで、ドローのことはすっかり忘れていて、昨日発表されたことも知りませんでした。実は、今日発表されると思っていて。それで、ウィムと『抽選があったんだ。知らなかった。アニシモワと対戦なの? 冗談でしょ?』と話をしていたんです。彼女とやりたくないとは言いません。私は、負けたら、より勝ちたいという気持ちが込み上げるタイプだし、あの試合からたくさんのことを学びました。だから、試合がどうなるか見てみたいと思います」