馬場雄大インタビュー「やるからにはてっぺんまで行きたい」 4月2日、バスケットボール・オーストラリアリーグ(NBL)のメ…

馬場雄大インタビュー「やるからにはてっぺんまで行きたい」

 4月2日、バスケットボール・オーストラリアリーグ(NBL)のメルボルン・ユナイテッド―イラワラ・ホークス戦。この試合、日本男子代表の馬場雄大はリーグ2連覇を狙うメルボルンの一員として、NBL復帰を飾った。

 馬場が初めて海外リーグに挑んだのは、23歳だった2019年7月のことだった。

 当時、Bリーグ・アルバルク東京に所属していた馬場はNBAダラス・マーベリックスの一員としてサマーリーグに挑戦。初めてNBAを肌で感じたそのとき、漠然と抱いていた世界最高峰への夢が、リアルな目標へとシフトした。

「NBAを意識するようになったのは、1つ年上の渡邊雄太さん(現トロント・ラプターズ)がNBAでプレーしたことがきっかけです。ただ、当時は『アメリカ』という舞台があまりにも漠然としていて『自分ならどこまで通用するのだろうか?』と思ったぐらいでした。

 サマーリーグでプレーしたことで初めて、自分のなかの物差しができた。自分は今、選手としてどのぐらいの立ち位置にいるのかを明確に測れたことで、夢をハッキリとビジョン化できました」

 本人曰く「とにかく負けず嫌いな性格」。NBAという世界最高峰の舞台が視野に入った瞬間、「やるからにはてっぺんまで行きたい」という想いが沸き上がった。

「渡邊さんや2つ下の八村塁(ワシントン・ウィザーズ)は、アメリカの大学からNBAに挑戦しています。でも、僕のように日本の大学を出て、BリーグからNBAに移籍した選手は過去、例がありません。

 英語もできない自分が、本当にこの年齢からできるのか? どこまで通用するのか? という気持ちがあるなか、挑戦する気持ちで思い切ってアメリカに飛びました」

 しかし、その挑戦は出鼻を挫かれる。

 馬場はサマーリーグ、キャンプへの参加を経て、ダラス・マーベリックスと契約。プレシーズンゲーム出場後、ダラス傘下のテキサス・レジェンズと契約し、GリーグからNBAへの挑戦をスタートした。

夢を達成できる、できないの差「NBA選手になるまで、やめない」

 ところが、新型コロナウイルス感染症の流行によりシーズンは中断。馬場はプレーする場所を求め、2020年7月、渡豪。アメリカを離れ、NBLのメルボルン・ユナイテッドと契約する。

「僕は、人生で起こることすべてに意味がある、と考えています。起こることすべてはその人にとって必要であり、しかも正しいタイミングで起こる。コロナ禍でGリーグが中断されたことも、オーストラリアに行ったことも、僕のバスケ人生に必要だった。すべての出来事がNBAの選手になり、活躍するために必要な過程だと、ポジティブに受け止めています」

 メルボルンでは30試合出場。NBL制覇に貢献し、チームのディフェンシブプレーヤーオブ・ザ・イヤーにも選ばれた。「海外リーグで結果を残す」。この経験が自分にとって、とてつもなく大きい、という。

「1年目のアメリカでは、正直、何もできなかった。でもメルボルンでは優勝までさせていただき、すごく自信になりました。

 僕ら選手は技術、メンタルももちろん大切ですが、最終的にモノをいうのは経験値。試合での瞬間、瞬間の経験値が、勝敗を左右すると思っています。メルボルンで優勝を経験したことで、自分は海外リーグでもできる、と感じられた。その自信を得たことは、すごく大きい」

 翌21-22シーズン、馬場はダラス・マーベリックスに戻り、シーズンをスタート。2年ぶりにGリーグに復帰したが、心持ちは1年目と、全く変わっていた。

「1年目は右も左もわからない状態で、一生懸命にプレーするだけでした。でも、2度目はここでいいパフォーマンスをしないなんてありえない、NBA選手になるためには、ここを踏み台にしていかないといけない、という気持ちに変わりました」

 今の課題は「技術・メンタルの全てに亘るレベルアップ」。そこに於いて、自分にゴールはない、という。

「成長するためには、まず、いかにバスケットボールと向き合う時間を増やすのか? というのが一つ。1日2回練習する人もいれば、3回、4回練習する人もいる。時間は作るものですから、やれる時間は常に(バスケに)費やしたい、という気持ちです。

 夢を達成できるかできないかの差は、いかになりたいものに向き合えるかだと思っています。

 NBA選手になるまで、バスケの最高峰のリーグの選手になるまで、やめない。自分のなかで、その最終地点さえブレなければ、その過程で『(自分に)できるのか?』という疑問符がいくら生まれたとしても、人に何を言われようと、関係ありません。真正面から(バスケットに)ぶつかっていきたい」

奮い立たせる渡邊雄太と八村塁の存在「追いつき追い越したい」

 毎日、バスケットゴールに向かうなか、刺激になっているのが渡邊、八村だ。同世代の彼らの活躍をみると、「超えるべき存在」として、馬場を奮い立たせる。

「僕の性格上、同世代の選手が上にいれば、追いつき追い越したい。2人がいなかったらここまで頑張れているかどうかわからないと思うほど、刺激になっています。

 僕は小学校1年生からプレーをしていますが、今、バスケットが楽しくてしかたないんですね。ちょっとでもゴールを触らないと、ウズウズと落ち着かなくなるぐらいです(笑)。自分の好きなことで生きている。そんな、夢のような日々を歩んでいるからこそ1日、1日を噛みしめながら、やっています」

 振り返れば、子どもの頃に初めて抱いた目標は、かつて実業団でプレーしていた父を超えることだった。26歳の今は、世界最高峰という頂を目指し、一歩一歩、登り続ける。

「父を超えられたか? そうですね、父はオリンピアンではないので、経歴上は超えました!(笑)。でもよく言うじゃないですか。80年代と今の選手を比べても、そこは時代によってバスケのスタイルも異なるし、単純には比べられないって。だから自分から『超えた』とは言えないですね。

 もしも、父が『超えた』と言うのなら超えられたのかな。今度、会ったら聞いてみたいです」

■馬場 雄大 / Yudai Baba

 1995年11月7日生まれ、富山県出身。小学1年からバスケットボールを始める。富山第一高から筑波大へ進学。在学中の2017年6月、Bリーグのアルバルク東京と契約。17-18シーズンは新人王を獲得、18-19シーズンは2年連続のリーグ優勝に貢献しMVPに。2019年7月、NBAダラス・マーベリックスの一員としてNBAサマーリーグに挑戦。キャンプ参加を経て、エキシビット10契約を結び、Bリーグ出身者初のNBA契約選手に。その後、マーベリックス傘下のGリーグチーム、テキサス・レジェンズと契約。20-21シーズン、オーストラリア・NBLのメルボルン・ユナイテッドでプレー後、2021年10月、再びテキサス・レジェンズと契約。22年3月、メルボルン・ユナイテッド復帰を発表した。東京五輪男子日本代表。(長島 恭子 / Kyoko Nagashima)

長島 恭子
編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)、『つけたいところに最速で筋肉をつける技術』(岡田隆著、以上サンマーク出版)、『走りがグンと軽くなる 金哲彦のランニング・メソッド完全版』(金哲彦著、高橋書店)など。