“飛ぶバット”の弊害か、U-18日本代表はW杯で優勝できず 日本製の金属バットが木製バットへの対応を遅らせているのではな…

“飛ぶバット”の弊害か、U-18日本代表はW杯で優勝できず

 日本製の金属バットが木製バットへの対応を遅らせているのではないか。中学生を対象にした硬式野球の団体「日本ポニーベースボール協会」が一石を投じた。同協会は反発を抑えた米国製の金属バットを推奨し、今年から新たに木製バットに限定した大会を開催。ヤクルト、巨人、阪神で通算306本塁打をマークした広澤克実理事長は「このままでは世界との差は埋まらない」と危機感を募らせている。

 日本では飛距離を生み出す反発力の高いバットが開発されている。ボールを遠くに飛ばしたい選手の要望にメーカーが応えている形だが、木製バット移行への“弊害”となっているとの声もある。日本ポニーベースボール協会の広澤理事長も、バットの見直しが必要と訴える1人だ。

「日本のバットは飛びすぎます。このままでは世界との差は埋まらないですよ」

 米国でも金属バットは製造されている。ただ、打球が飛びすぎないように反発係数という基準が設けられ、木製に近い仕様にしている。日本には反発係数の明確な基準がないため、反発力の高いバットが次々に開発されている。

“飛ぶバット”が木製バットへの対応を遅らせていると指摘する根拠の1つが、国際大会の成績にある。日本代表はワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で連覇を果たし、昨年の東京五輪では金メダルを獲得したが、若い世代では思うような結果を残せていない。

 木製バットを使用する18歳以下のワールドカップでは、これまで一度も頂点に立っていない。象徴的だったのは2017年。日本ハム・清宮幸太郎内野手(西東京・早実高)、ロッテ・安田尚憲内野手(大阪・履正社高)、広島・中村奨成捕手(広島・広陵高)ら甲子園を沸かせた強打者が揃い、優勝が期待されていた。しかし、木製バットに苦しんで3位。清宮は大会中に2本のアーチを放ったが、甲子園新記録の1大会6本塁打を記録した中村からも、高校通算60本以上の本塁打を放った安田からも柵越えは生まれなかった。

価格や高野連の基準、米国製バット導入に高いハードル

 高校生の年代から世界の基準に合ったバットを使った方が将来につながると考え、ポニーリーグでは米国で作られた低反発のバットを採用している。だが、この動きを広げるのは難しい。広澤理事長は「そもそも、日本には低反発のバットが売っていないんです」と嘆く。米国製のバットを使うには輸入する以外の方法はなく、新型コロナウイルスの感染拡大に加えて原油高、円安などの影響で価格は上昇。“逆風”となっている。

 米国製バットは日本高校野球連盟で認められていないという問題もある。高野連の規定では、使用できる野球用具は安全性が確認されたSGマークがついたものに限定される。米国製バットの導入には、いくつものハードルがあるのだ。

 そこで、ポニーリーグでは今年、一部の大会で使用するバットを木製に限定した。広澤理事長は「米国の低反発バットが手に入りにくいので、それなら木製を使ってみようということになりました」と経緯を明かす。

 バットに関する議論は、ここ数年で進んでいる。高野連は2024年春から独自の基準を設けて、反発を抑えたバットを採用する方針。ただ、部活、シニア、リトルなど組織や団体が分かれている中学生以下では、それぞれのリーグに判断が任せられている。“飛ぶバット”への賛否が分かれる中、カテゴリーを超えて足並みを揃えるのは簡単ではない。ポニーリーグの取り組みが現状に変化をもたらすのか注目されている。(川村虎大 / Kodai Kawamura)