歴代最多39勝の清水重憲キャディーに聞いた安田祐香の魅力 世代筆頭の選手がツアー初優勝まであと少しのところまで来ている。女子ゴルフの安田祐香(NEC)、21歳。実力者が多く、2000年度生まれの「プラチナ世代」と呼ばれる学年。アマチュア時代…

歴代最多39勝の清水重憲キャディーに聞いた安田祐香の魅力

 世代筆頭の選手がツアー初優勝まであと少しのところまで来ている。女子ゴルフの安田祐香(NEC)、21歳。実力者が多く、2000年度生まれの「プラチナ世代」と呼ばれる学年。アマチュア時代に「逸材」と期待され、大きな注目を集めてプロ転向したが、同期に先を越されてきた。それでも、徐々に上位に顔を出す試合も増加。その姿は初めてバッグを担いだ名キャディーを驚かせていた。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)

 ◇ ◇ ◇

 プロデビューから2年、安田は頭を使ってゴルフをしている。5月8日まで行われた国内メジャー・ワールドレディスサロンパス杯。初日から7位、3位、2位と順位を上げて優勝争いを演じた。最終日は朝から首痛を抱えて7位。悲願の初優勝には届かなかったが、初めてタッグを組んだ清水重憲キャディーは1週間の印象を明かした。

「彼女はゴルフ脳が凄いですね。自分の中でマネジメント(コース戦略)がしっかりできていると思います」

 上田桃子、イ・ボミの歴代賞金女王たちのバッグを担ぎ、男女ツアー歴代最多の39勝(非公認)を挙げた名キャディー。ボミと18年9月にコンビ解消以降、固定の選手ではなく、試合ごとに異なる選手を担当している。今回は互いにパートナーがおらず、安田からの打診で実現。清水さんは「それまで彼女としっかり話したこともなかった」と外から見る限りしか知らなかったが、ラウンド中に他の若手にはない姿を感じ取った。

「最近の若い選手はこちらに聞いてこないことが多いのですが、彼女はいろいろと聞いてきてくれる。一緒にやっていて楽しかったですね。最終的には選手自身が判断しますが、聞いてくれればこちらもいろいろと伝えることができます」

 ただ言われるがままの選手とは違う。キャディーとの距離感はそれぞれだが、自分で考え、迷った時に意見をもらうのが強い選手のスタンダード。大会初日、ショットが左に飛びがちだった安田は、清水キャディーと問答を繰り返した。

 受けた助言は「全然、右に打っても大丈夫」「外すならこっちのほうがいい」。左右に振られたピンに対し、ショットの落としどころを明確にした。「自分も外す時は、打ちやすい方に外している。安全にこのコースを攻略できている」とキャディーに感謝していた。

 メジャーの難コースで予選36ホールのうち、ボギーはわずか1つ。第2日の9番パー4は第1打をドライバーで攻めず、4ウッドで刻んだ。グリーン手前からのアプローチで寄せてパー。清水さんが「彼女は自分で考えている」と感じ取った通り、全てをキャディー任せにするのではない。しかも、一見チャンスと思える状況でも、隠れた“落とし穴”に気づいていたという。

「若い子はバーディーを狙えそうだったら狙ってしまうけど、彼女は抑えることができる。外してはいけないところがわかっていますね。(難コースだから)成果が出たのだと思います」

清水キャディー「もともと力のある選手。活躍していくと思います」

 小学3年で上田ら多くのプロを輩出した「坂田塾」に入門し、日本代表として海外の試合に多数出場してきた。兵庫・滝川二高2年だった17年6月の日本女子アマ選手権で初優勝。国内ツアーは17年から3年間で20試合に出場し、予選落ちは1度のみ、トップ10は4度も入った。

 19年4月のアジア太平洋女子アマで日本人初優勝を果たすと、日本人アマ初のエビアン選手権と全英女子オープンの海外メジャー切符2枚をゲット。エビアン選手権は37位で日本女子26年ぶり4人目となる海外メジャーのベストアマを獲得した。若くして持ち合わせるマネジメント力の高さは「ナショナルチームで経験してきたというのもあると思います」と清水キャディー。海外の難コースで磨かれた。

 輝かしい実績を携えてプロ転向し、逸材の多い世代で最も注目された。しかし、古江彩佳が通算7勝で21年賞金ランク2位、西村優菜が4勝、吉田優利が2勝。同学年の選手たちが早々に結果を残した一方、悔しさを味わい続けている。

 清水キャディーは言った。

「もともと力のある選手。同期が先に行ってしまって焦りもあったと思います。でも、一度上に来るようになったら、どんどん活躍していく選手だと思いますよ」

 ルーキーイヤーの20年には首痛に悩まされ、線の細さを補うべく食トレにも力を入れてきた。私が取材に行った15日までのほけんの窓口レディースは21位。まだ今は不安定な部分が多いかもしれない。だが、精密機械のように再現性が高く、力感のない美しいスイングは随所に見られた。初優勝は近いはずだ。

 豪快なショットや絶妙なパットは、見る側にわかりやすい。でも、安田のようにハイレベルなマネジメントを駆使するプレーだって面白い。近い将来、ゴルフの魅力を存分に伝えられる選手に――。そうなってくれると期待している。(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)