先日、Jリーグが各クラブの今季のホームグロウン選手の人数を発表し、柏レイソルとサンフレッチェ広島が15人で最多となった…

 先日、Jリーグが各クラブの今季のホームグロウン選手の人数を発表し、柏レイソルとサンフレッチェ広島が15人で最多となった。

 ホームグロウン制度は2019年に導入されたもので、自クラブで育成された選手(ホームグロウン選手)を既定の人数以上、トップチームに登録することを義務づけるもの。各クラブはアカデミーの整備を求められることになるが、簡潔に言えば、ホームグロウン選手の数が多ければ多いほど、クラブの育成の充実度を表すことになる。



パリ五輪世代でも注目を集める20歳のFW細谷真大

 柏にしても、広島にしても、かねてより育成に長けたクラブとして知られている。金銭的に恵まれているわけではないため、アカデミーを充実させ、自前で育て、チームを強化していくスタンスだ。

 前者は明神智和をはじめ、大谷秀和、酒井宏樹、中山雄太らを育て、後者は森﨑兄弟を筆頭に、駒野友一、槙野智章、柏木陽介らを輩出している。今回、ホームグロウン選手が最多であったことから、両者はあらためて育成クラブの矜持を示した格好だ。

 興味深いのはこの両チームが今季、上位争いを演じている点だろう。とりわけ勢いに乗るのは柏のほうだ。開幕から好調を維持し、3連敗を喫した時期もあったが、12節を終えて4位と上位に位置している。

 ホームにガンバ大阪を迎えた13節の試合では、スタメン11人中3人が、ベンチも入れると8人がホームグロウン選手だった。この日だけではなく、前節の浦和戦でも同じく8人がメンバー入りを果たしている。

 しかも、その8人はいずれも1997年生まれ以降の選手たちで、パリ五輪世代も4人が含まれる。アカデミーで育った若きタレントたちが、好調の柏を牽引しているのだ。

 もっとも浦和とはスコアレスドローに終わり、G大阪との一戦でも多くの時間で押し込みながら、セットプレーから失点し、0−1と敗れている。

「決定機を決めることができずに、逆に相手の一発に泣かされたゲームだった。望んだ結果ではないが、今日の敗戦が我々の戦ったゲームの内容の価値を下げるものではないと、選手たちには声をかけた」

 ネルシーニョ監督は無念をにじませる一方で、試合内容については一定の評価を下している。

20歳の細谷は全試合スタメン

 昨季は残留争いに苦しんだ柏だが、今季は見違える戦いを見せている。

 肝となるのは縦に速いサッカーだ。ボールを奪えば、間髪入れずに裏を突く。推進力をもたらすのは10番を背負うマテウス・サヴィオだが、2トップの一角を担う細谷真大の鋭い動き出しも、このサッカーには欠かせない。

 アカデミー出身の20歳のストライカーは、力強いスプリントでスペースを突き、相手を背負いながらくさびも引き出せる。2年目の昨季に28試合に出場して自信を深めたのだろう。今季はここまで全試合にスタメン出場を果たし、4得点をマーク。"新エース誕生"を予感させている。

 G大阪戦でもカウンターに抜け出し、決定的なシュートで相手をひやりとさせる場面もあった。もっとも後半は3バックに変更したG大阪の前に、次第にトーンダウン。経験豊富な昌子源の対応をかいくぐれずに、無念の途中交代となった。それでも日本を代表するCBとのマッチアップは大きな経験となったはずで、この悔しさを糧にさらなるスケールアップが望まれるところだ。

 その細谷に代わってピッチに立ったのは、18歳の升掛友護だ。

 今季ユースから昇格したアタッカーは、ドリブル突破を最大の武器とする。リーグ戦こそまだゴールはないものの、ルヴァンカップでは得点ランクのトップに立つ4ゴールを記録。G大阪戦ではインパクトを残せなかったが、途中出場から流れを変える"ジョーカー役"として存在感を高めている。

 同じく途中出場した21歳の森海渡は、アカデミーからの昇格は叶わなかったが、進学した筑波大で成長を遂げ、同大を卒業前に今季加入した。強靭なフィジカルを生かしたパワフルなプレーが持ち味で、11節の広島戦ではプロ初得点を含む2ゴールを叩き込み、強烈なインパクトを放っている。

 ほかにも、この日のメンバー入りはならなかったものの、今季ユースから昇格した真家英嵩(18歳)、3年目の鵜木郁哉(20歳)もルヴァンカップではそれぞれゴールを決めている。いずれもユースで育ったタイプの異なるFWが5人も試合に絡んでいるのだから、柏のアカデミーの底力を感じずにはいられない。

23歳のボランチも必要な戦力

 一方でこの日は、今季筑波大から加入した加藤匠人(23歳)もリーグデビュー。同じくアカデミー育ちのボランチは1点ビハインドの77分からピッチに立つと、限られた時間のなかで数多くボールに触っては果敢に縦パスを供給した。

「自分は攻撃が得意な選手だと思っているので、そのなかでたくさんボールを触って散らしながらリズムを作る部分では、自分の特徴を出せるところはありました」

 そう手応えを語った加藤は、「セカンドボールや守備のところは、まだまだ力不足だと感じました」と反省の言葉も口にしている。それでも試合経験を積み重ねるなかで自信を深め、必要な戦力になっていくはずだ。

 成長著しい若手の台頭は、柏の明るい未来を予感させている。

 もっとも柏には、数年前にも同様の期待感があった。中村航輔(→ポルティモネンセ)、中谷進之介(→名古屋グランパス)、中山雄太(→ズヴォレ)の若き3人が守備陣を牽引した2016年・2017年当時は、しばらくこのチームは安泰かと思われた。しかし、彼らはいずれもステップアップを求めてチームを去った。これも育成型クラブの性である。

 それでも、若手の存在はやはり宝である。彼らの成長は、チームの成長にリンクする。発展途上にある分、その期待感は大きい。