登山YouTuber・モデル山下舞弓インタビュー 前編本格的な登山からゆるっと楽しむ山旅まで素敵な映像で紹介しているYouTubeチャンネル『オトナ女子の山登り』が人気の山下舞弓さん。彼女の美しさに惹きつけられるのもそのはず、キャリア20年…

登山YouTuber・モデル
山下舞弓インタビュー 前編

本格的な登山からゆるっと楽しむ山旅まで素敵な映像で紹介しているYouTubeチャンネル『オトナ女子の山登り』が人気の山下舞弓さん。彼女の美しさに惹きつけられるのもそのはず、キャリア20年以上のモデル・タレントなのだ。今や登山関連のメディアに引っ張りだこの彼女だが、どのように登山に目覚めたのだろう。春のハイキングを楽しみながら、インタビューした。


モデルで登山YouTuberの山下舞弓さん

「なにこれ、山ってすごく楽しい!」

ーー昔ながらの登山のイメージはキツくて、汚くて、汗臭いですが、山にこんな美しい人がいるなんて......とうれしい驚き。山下さんはどういうきっかけで登山を始められたのですか?

山下舞弓(以下、山下) 10年くらい前ですかね、登山に出会う少し前からマラソンをしていました。当時、名古屋に住んでいたんですけど、夏は暑くて練習ができなかったんですよ。困っていたら、友人が「山は、夏でもダウンを着るくらい涼しいんだよ!」と教えてくれて。それで連れて行ってもらった初登山が、八ヶ岳の赤岳でした。

ーーいきなり八ヶ岳の最高峰(2899m)とは、チャレンジャーですね。

山下 友人に「フルマラソンを完走したこともあるし、体力あるからいけるよ!」と言われて。1泊2日で硫黄岳〜赤岳〜阿弥陀岳という縦走コースだったんですけど、その登山が本当によかったんです! 稜線を歩くのがとにかく楽しくて。雲ひとつない青空が広がっていて、富士山が眺められて、岩場や鎖場をよじ登るのも新鮮で......。「なにこれ、山ってすごく楽しい!」と惚れて、ちょこちょこ行くようになりました。



取材は春の岩殿山(山梨県)で行なった





ーー山下さんは長野県内のテレビ番組やCMで活躍されていて、地元では「舞弓おねえさん」と親しまれる有名人。長野には、いい山がいっぱいありますよね!

山下 テレビの仕事をするために長野に通っていた約10年間、いつも眺めていただけだった南アルプスや中央アルプスに登るようになってどんどん登山にハマっていきました。連れて行ってくれる友人が本格的な山志向だったので、当時は軽いハイキングとかではなく、けっこうハードな登山ばかり。ウエアや装備は、最初借りようかなと思ったんですけど、「借りたら続けなくなってしまう」と言われて、そろえました。「一式そろえたんだからやるしかない!」と(笑)。

ーー登山の次のステップになったのは?

山下 始めて3年目くらいにひとりで山へ行こうと思い、それからはソロでも月1回のペースで登るように。低山のハイキングなどでは、山ごはんづくりも楽しむようになりました。

 山は、行くたびに表情が全然違うのがすごく新鮮で。春夏秋冬、天候によっても、同じ山でもまったく違う景色を見せてくれる。一期一会が楽しくて、飽きることなく続けています。

 2019年に長野県伊那市に移住してからは、フィールドがすぐそばになって。クルマで1時間以内でいろんな登山口へ着けるので、2週間あけることはなかったですね。

ーー2020年からYouTubeチャンネル『オトナ女子の山登り』を始められました。

山下 それまでもモデルとしてのアカウントでInstagramはしていて、そこで山のことを発信すると評判がよかったんです。もっと情報を増やして山の楽しさを伝えたいという思いが強くなり、YouTubeでも発信するようになりました。

ーーYouTubeでは映像や音楽に、すごくこだわっている印象です。

山下 山の美しい映像と心地よい音楽を合わせて、ひとつの作品のようにしたいと思っています。そうすることで、山に登らない人にも楽しんで見ていただけるかなと。なるべく自分を写すというより、山の景色や、私が感動したもの、たとえばきれいなお花を撮って、それを音楽と合わせて映像にしている感じです。地味に大変ではあるのですが、曲は毎回変えるようにしています。

 私の動画はあんまり説明がないんですよね。危険な箇所とか「ここは伝えなきゃ」というところはテロップで説明を入れていますが、基本的には楽しんで見てもらいたいなという思いでつくっています。偉そうには言えないですが、山登りをしてみたい方の入口になればいいな......という思いがあります。



カメラを使ってYouTube用の動画を撮影する山下さん







ホットサンドは焦がしがちだという

ーー撮影や編集は、自分で?

山下 「本当にひとりで撮っているの?」と言われることもありますが、出演も撮影も編集も、全部ひとりなんです。人に任せたいと思ったこともありますが、こだわりが強すぎてお願いするのが申し訳なくなるんです。『オトナ女子の山登り』は、いつもだいたい金曜夜9時に新しい動画をアップするんですけど、何度も手直しして、ギリギリまで編集しています。形に残るものだから、中途半端なまま出したくなくて。

山はポジティブになれる場所

ーー今では登山関連の雑誌やウェブメディアにも数多く出演されています。

山下 モデルの仕事って(容姿や身長、年齢など)架空の「こういう人で」と事務所にお仕事の依頼が来ることが多いんです。でも登山関係では「山下さんで」と依頼をいただくので、すごくうれしくて。私のキャラクターを必要としてもらえているんだって。

ーーYouTubeが人気になり、以前より山で顔バレするようになったのでは?

山下 ベレー帽が私のトレードマークになっているので、うれしいことに山を歩くと声をかけられることもあります。最近はちょっと意識しながら、誰かとすれ違う時は、ツラそうな顔をしないようになりました(笑)。

 山登りは、「あまりおしゃれできない」、「メイクも汗で崩れちゃうからできない」というイメージがあると思うんですけど。今は高機能でかわいいウエアがたくさんあるから、イベント感覚?で「今日はあの山に登るから、これを着てみよう」とファッションも楽しんでいます。





ーー自分らしく、山を楽しんでいますね。

山下 モデルとして日焼けには気をつけて、メイクもできる範囲で楽しみながら。ピークハント(登頂)だけを目指すのではなく、山でおいしいものを食べたりのんびり過ごしたり、自分らしく楽しめたらなと思っています。私が山から感じる喜びやうれしさを動画にすることで、視聴者の方にも一緒に楽しんでもらえたらいいですね。

 山は私にとってポジティブマインドになれる場所なんです。モヤモヤすることがあったり、ずっと引きこもって編集したりしていると、「山に行きたい!」となります。リフレッシュできる場所でもあります。登っている時は夢中になって登っているし、山頂で絶景を見た時には「なんでこんなことで悩んでいたんだろ」、「明日から頑張ろう!」と、とても前向きになれます。山はすべてを包み込んでくれる、そんな居場所なのです。

ーーこれからチャレンジしてみたいことは?

山下 もともと旅が好きなので、山と旅をつなげたコンテンツを発信していきたいです。日本全国にいいところがあるし、いい山もいっぱいあるから。昔からリサーチするのが好きなので、自分がいいなと思ったところをお伝えしていけたらと思います。登山したあとにおいしいお店や温泉、お土産情報があると山だけでなく旅も楽しめる、いいとこどりをできたらいいなと。楽しみにしていてくださいね!



【取材当日のコーディネート】ベレー帽=THE NORTH FACE、トップス(グレーTシャツ)=and wander、ウィンドシェル=atelierbluebottle、ショートパンツ=THE NORTH FACE、タイツ=mont-bell、シューズ=salomon×and wander、バックパック=RawLow Mountain Works、サコッシュ=Okara/ai nitta

インタビュー後編「おすすめ山小屋5軒」へつづく

【プロフィール】
山下舞弓 やました・まゆみ
モデル・タレント業の傍ら、YouTubeチャンネル『オトナ女子の山登り』で登山の魅力を発信中。登録者数5万人以上(2022年4月現在)。山登りの様子や山ごはん、お気に入りの山グッズなどを紹介している。