バイエルンの優勝が早々と決まった1部とは対照的に、ブンデスリーガ2部はしびれる状況が続いていた。2節を残して首位シュツットガルトは勝ち点66、2位ブラウンシュバイクが63、そして3位のハノーファーも63(1位、2位は自動昇格。3位はプ…

 バイエルンの優勝が早々と決まった1部とは対照的に、ブンデスリーガ2部はしびれる状況が続いていた。2節を残して首位シュツットガルトは勝ち点66、2位ブラウンシュバイクが63、そして3位のハノーファーも63(1位、2位は自動昇格。3位はプレーオフに回る)。第33節、ハノーファーとシュツットガルトは昇格を目指して直接対決。一方、ブラウンシュバイクはビーレフェルトに乗り込んだ。

 ちなみにビーレフェルトは試合前の時点で17位。つまり3部降格を目前にしているチームなのだが、2部の残留争いも熾烈。勝てば一気に残留圏に順位が上がるため、ブラウンシュバイクにとっては気の抜けない相手だった。

 終わってみれば、ハノーファーは1-0でシュツットガルトを下して、勝ち点で並んだ。そしてブランシュバイクはビーレフェルトになんと0-6で大敗。ハノーファーのスタジアムではブラウンシュバイクの試合経過がアナウンスされるたびに、試合そっちのけで大歓声が湧いた。最終節に上位3チームの直接対決はなく、得失点差を考えるとシュツットガルトとハノーファーは昇格をほぼ決めたと言っていい。



ここまで26試合に出場、4得点の浅野拓磨(シュツットガルト) 2戦連続で出場機会がなかったシュツットガルトの浅野拓磨は、試合後、笑顔を見せながらも首をかしげた。

「試合終わって、”なんでみんな喜んでるんやろ”って気持ちでした」

 昇格をほぼ決めたことで、シュツットガルトは敗れたにもかかわらず、喜びムードいっぱいだった。日本人は数字上、まだ逆転される可能性が残る段階で喜ぶことはなかなかできないが、ドイツ人はほぼ大丈夫という見込みで喜んでしまう。このあたりはもう国民性や文化の違いと言うしかなく、浅野はそんなチームメイトを見て不思議に思ったわけだ。

「1年間通して戦ってきて、現時点でほぼ確定というのは、考えたら嬉しいこと。僕自身はピッチに立てなかったし、いろいろな気持ちもあって素直には喜べないですけど、でもシーズン通してここまでこれてよかったなと思います」

 浅野はここまで26試合に出場し、4得点を挙げているが、ここ2試合は出番がない。さらに出場した直近の2試合でも、先発したもののそれぞれ63分と前半終了時点で交代している。前半で交代させられたニュルンベルク戦を振り返って、こう語った。

「ハーフタイムでは言われること、言われました。それから試合に出られてないので、まずはそこを改善していく(必要がある)。ピッチに立たないとなかなか改善できないので、次に出たら言われないように自分の特徴をしっかり出していく。使っても大丈夫だなと思われるように練習からしっかりやっていくしかないなと思います」

 ただその「言われたこと」というのが少々不可解でもある。

「そのときは本当に単純に、裏に走れということだけを言われた。僕自身は『走ってるけどな』と思っていましたけど。でもそこは監督が見ているところなので、言い訳できないですし、僕は本当にアピールしていくしかないと思います」

 本来FWの浅野だが、シュツットガルトではサイドMFで起用されている。主に右サイドで使われてきたが、早い時間に交代した2試合は左サイドでの起用だった。そのあたりにもなんらかの原因はありそうだが、指揮官が指摘するのは浅野の裏への走りだという。つまり今、浅野に求められているのは「ゴールよりもハードワーク」なのだ。

 浅野は以前、こんな話もしていた。

「『お前にはゴールを求めてないから、とにかくアーバイトしろ、アーバイトしろ』と。そのときは『チクショー』と思いました。そこの悔しさは常に消えることがないと思います。僕はゴール求めないといけない選手なので」

 ドイツ語の「アーバイト」とは働くという意味の動詞。ハードワークしろというニュアンスだ。FWにとってはなかなか受け入れ難い状況だが、浅野は表情を曇らせるでもなく、にこやかに心境を説明してくれた。

「得点への欲がなくなることはないですけど、ずっとチームの勝利を考えて、何ができるかを考えているからこそ、試合が終わった後はまずチームが勝ってうれしいなと思える。でも、その次くらいに、ゴールを取れなくて悔しいなと思いますけど(笑)。そこはバランスが取れているかなと思います」

 アーセナルからシュツットガルトに1年間のレンタルで貸し出されている浅野は、来季の去就も決めなくてはならない。

「こっちでも全然いいんです。このチームも好きなので。もう1年やれたらやれたで、いいチームでやれるな、と。満足してやれると思います。家もこっちにありますし、引っ越しが面倒くさかったり、というのもあると思うので」

 周囲を爆笑させると、「冗談ですよ」と付け加えた。

 一部には、レンタルの1年延長が決定しているという話も出ているが、本人は未確認のようだ。「どうなるか、まったくわからないんです。僕自身も楽しみですね」と言い切るあたりに、心の余裕や器の大きさを感じさせる。

 アーセナルに戻るよりも、シュツットガルトに残りブンデス1部で出場経験を重ねるほうが得策にも思えるが、浅野のこの夏の動向に注目したい。