森口祐子プロが徹底解剖シーズン序盤で躍動する注目選手(後編)前編はこちら>>西村優菜(にしむら・ゆな)2000年8月4日生まれ。大阪府出身。身長150cm。血液型O型。ツアー通算4勝。2022年シーズン最高位2位タイ。トップ10入り5回。メ…

森口祐子プロが徹底解剖
シーズン序盤で躍動する注目選手(後編)

前編はこちら>>



西村優菜(にしむら・ゆな)
2000年8月4日生まれ。大阪府出身。身長150cm。血液型O型。
ツアー通算4勝。2022年シーズン最高位2位タイ。トップ10入り5回。
メルセデスランキング5位。賞金ランキング6位(獲得賞金3113万7961円)。
※成績などの数字は2022年5月10日現在(以下同)

「今シーズンの西村さんは、顔つきが違います。ラウンド中の笑顔に変わりはないのですが、自らが納得できないプレーをした時やミスをした時など、昨季(2020-2021シーズン)までは見られなかった厳しい表情を見せるな、と感じています。その表情からは、もう一段階追い込んで、さらに上を目指そうと思っているのだろうな、という気持ちがうかがえます。

 表情と言えば、ふだんの笑顔のイメージから、彼女は細かいことを気にしないタイプに見えるかもしれません。でも、ナショナルチームのメンバーだったアマチュアの頃から彼女を見ている人に話を聞くと、練習ラウンドでのコース情報の収集は綿密で、ヤーデージブックへの書き込みの入念さは『宮里藍さん以上じゃないか』と言われているらしいです。

 すべてのスタッツで高い成績を残していますし、ボギーが少ないというのは、情報収集に基づいたセーフティゾーンの把握といった、マネジメントがしっかりできている証拠。昨シーズンは賞金ランキングも、平均ストロークも5位でしたから、今季はより上を目指していて、賞金女王も視野に入っているのかもしれませんね」




吉田優利(よしだ・ゆうり)
2000年4月17日生まれ。千葉県出身。身長158cm。血液型O型。
ツアー通算2勝。2022年シーズン最高位2位タイ。トップ10入り3回。
メルセデスランキング11位。賞金ランキング11位(獲得賞金1804万3333円)。

「力強いスイングで、パッティングも上手い。いわゆるアスリート的なゴルフをする選手です。性格的にはいい意味でわかりやすいタイプで、"負けたくない"という気持ちを持ちながらも、露骨に敵愾心を出すようなこともせずに戦っていける選手です。

 自分に負けないようにゴルフをするタイプと、勝利をつかみにいって本領を発揮するタイプといるけれど、彼女は後者。だから、見ていて魅力的なプレーヤーだと思います。

 彼女が初優勝した時に、あとで『どんな感じだった?』と聞いたら、『いやぁ、そりゃ心中穏やかではなかったですよ』と言っていました。そういうネガティブな部分は隠す人もいるなかで、それをサラッと言える爽やかさがまた、いいんですよね。

 負けず嫌いがゴルフにおいては邪魔をすることもありますが、そういう自分の弱さや恥ずかしい部分を認めることができたうえでの負けず嫌いなら、ゴルフにもプラスになるでしょう。今季はパーオン率が悪いので、今後もう一段、全体のレベルを上げるためには、アイアンショットの精度をよくすることが必要かな、と思います」




稲見萌寧(いなみ・もね)
1999年7月29日生まれ。東京都出身。身長166cm。血液型A型。
ツアー通算10勝。2022年シーズン最高位2位タイ。トップ10入り4回。
メルセデスランキング10位。賞金ランキング9位(獲得賞金2036万2833円)。

「昨シーズン9勝を挙げた稲見さんですが、今季はいまだ優勝がありません。どこに違いがあるのかスタッツで確認してみると、昨季は33位だったドライビングディスタンスが今季は16位にアップしている一方で、フェアウェーキープ率は昨季の10位から今季は26位までダウンしているのです。

 これは昨季、米女子ツアーへの参戦やオリンピックなどの経験から、世界で戦ううえでの飛距離の必要性を感じたからでしょう。シーズン当初はドライバーのシャフトを替えていましたが、フジサンケイレディスの時には元のシャフトに戻すなど、いろいろと試行錯誤しながらやっているようです。

 よく飛距離を求めた結果、スイングをおかしくして、その後にスランプに陥ったりすることがありますが、ショットの正確性を表わすパーオン率(1位)とボールストライキング(3位)は悪くないですから、稲見さんにその心配はなさそうです。

 では、昨季の稲見さんと今季の彼女とでは何が一番違うのか。それは、パッティングだと思います。スタッツで見ると、平均パット数(パーオンホール)が昨季は2位でしたが、今季はここまで39位です。

 自分でも話しているように、彼女はもともとパッティングが得意ではなかったのですが、昨年奥嶋誠昭コーチのアドバイスによって、ボールから体を少し離してセットアップすることで、ストロークがスムーズにできるようになりました。それが今年のヤマハレディースの時に見たら、ボールから離れていることでストロークが微妙に揺れているように、私には見えました。

 昨季よかったことが、今季もいい結果をもたらすとは限らないというのがゴルフの難しいところです。今後中盤戦に向けて、このパッティングをどう修正してくるのか、楽しみにしています。いずれにせよ、もうすぐ勝てそうな気がします」




上田桃子(うえだ・ももこ)
1986年6月15日生まれ。熊本県出身。身長161cm。血液型A型。
ツアー通算16勝。2022年シーズン優勝1回。トップ10入り3回。
メルセデスランキング8位。賞金ランキング7位(獲得賞金2989万7500円)。

「4月のヤマハレディースの時に、現地で上田さんのスイングを見て『近々、どこかで勝つんじゃないかな』と思いました。それほど、いいスイングになっていたんです。

 もともと彼女はダウンスイングからインパクトにかけて、右肩を下げてドローボールを打つタイプ。それがヤマハレディースの際には、ダウンスイングでの右肩の下がり方が抑えられて、その分、体がきれいにターンできているな、という印象を受けました。

 そして、そのスイングの仕上がりのよさを証明したのが、今季初優勝を遂げた翌週の富士フイルム・スタジオアリス女子オープンの、最終日のスタートホールでした。パー5の2打目はやや左足下がりで、ピン手前にはふたつのバンカーが待ち構えていました。

 そこで、ドローヒッターの上田さんはどう攻めてくるのかなと見ていると、前週に見たとおりの、右肩をあまり下げずに体のターンを利かせたスイングでフェードボールを打ち、2オンに成功。イーグルを奪いました。

 彼女は年齢を重ねるにつれて、モチベーションのもっていき方みたいなものが練れてきている感じがしますね。厳しいコースとか、難しいピン位置を前にすると、ことさらチャレンジ精神が沸くのか、ギアを一段上げて爆発的なエネルギーを発揮するような気がします」




小祝さくら(こいわい・さくら)
1998年4月15日生まれ。北海道出身。身長158cm。血液型A型。
ツアー通算6勝。2022年シーズン最高位5位。トップ10入り4回。
メルセデスランキング15位。賞金ランキング15位(獲得賞金1599万1125円)。

「昨年限りで、プロ入り前から見てもらっていた辻村明志コーチから離れる選択をしました。本人は『自分なりにやってみたいことがある』と話していて、それを私は、彼女的には今がそういうタイミングなのだろうなと思って聞いていました。

 昨シーズンの前半戦は、小祝さんが賞金女王争いを引っ張る形でした。しかし後半になると、得意のショットが低迷。結局、賞金ランキング3位に終わったこともあって、期するものがあったのかもしれません。

 昨年のスタッツを見ると、初日のスコアが最もよく、最終日が悪いという傾向がありました。そういった点も、本人としては納得がいかなかったのでしょう。『最終日が一番大事だと思うので、最終日に向けて(調子を)上げていく流れを作っていくこと。今年はそれも課題にしています』と言っていました。

 そして、それを実行したのがフジサンケイレディスでした。初日の前半、彼女は1バーディー、5ボギー、1ダブルボギーという乱調で、79位タイと出遅れました。それでも、3日間の戦いを終えた時には、通算6アンダー、6位タイでフィニッシュ。

 初日の前半9ホールで6オーバーも叩いて、そこから予選通過を果たし、最終的には6位タイまで順位を上げてくるというのは、なかなかできないこと。本当にすごい。『まあ不思議な子だなぁ』と思いましたね」




渡邉彩香(わたなべ・あやか)
1993年9月19日生まれ。静岡県出身。身長172cm。血液型A型。
ツアー通算4勝。2022年シーズン最高位4位タイ。トップ10入り3回。
メルセデスランキング13位。賞金ランキング12位(獲得賞金1772万5666円)。

「新型コロナウイルス感染拡大の影響で統合シーズンとなった2020年の開幕試合は、渡邉さんが4年7カ月ぶりの復活優勝を飾りました。圧倒的な飛距離を武器に『海外でも通用する逸材』と言われながら、2016年シーズンの途中から調子を崩して、2018年シーズンにはシード陥落。2019年シーズンの賞金ランキングは、115位まで下げてしまいました。

 そんな彼女の復活は、ゴルフ界が待ち望んでいたと言っても過言ではないと思います。一時期はスイングイップスみたいになっていて、アドレスの向きが合っていない、クラブをなかなか下せない、という感じでした。それでも彼女は、ショットの曲がり方が酷かった時でもインパクトで球に合わせにいかず、とにかく恐れずにクラブを振りきることだけは続けたと言います。

 2018年から彼女のキャディーを務める川口淳さんの存在も大きかったと思います。どんなに成績が悪くてもキャディーをやり続け、気持ち的にも支えになったのではないでしょうか。

 さらに、昨年の2月に結婚して精神的にも安定し、振る舞いも、プレーも落ちついた感じがします。彼女のポテンシャルからすれば、私はもう少し存在感を示してもいいかなと思っていますが、今季はここまで予選落ちがわずか1回。さらに上の活躍が期待できるのではないかと思っています」