近年のJリーグでは、スペイン人監督が増えている。J1のビッグクラブであるFC東京と浦和レッズも、今季はスペイン人監督に…
近年のJリーグでは、スペイン人監督が増えている。J1のビッグクラブであるFC東京と浦和レッズも、今季はスペイン人監督に率いられているが、その手法はまったく別なものである。2人のチームづくりをサッカージャーナリスト・後藤健生が考察する。
■選手を入れ替えたロドリゲス監督
前述したように、FC東京のアルベル・プッチ監督は、前任の長谷川健太監督時代と大きく変わらないメンバーのまま、新しいスタイルのサッカーを構築しようとしている(監督の方針というより、クラブの方針と言うべきかもしれないが)。
しかし、浦和レッズのリカルド・ロドリゲス監督はそれとは反対に、自らの就任以前から在籍していた槙野智章や興梠慎三などのレジェンド級の選手の多くを放出し、次々と新戦力を獲得して新チームを作り上げている。
リカルド・ロドリゲス監督就任前から在籍している選手で現在も先発メンバーに名を連ねているのはGKの西川周作、DFの岩波拓也、MFの柴戸海、関根貴大くらいのもの。昨シーズンのキャスパー・ユンカー、アレックス・ショルツに続いて、今シーズンもダヴィド・モーベルグやアレックス・シャルクといった北欧やオランダ出身の選手も獲得している。
現有戦力を使って新しいサッカーを構築しようとしているのがアルベル監督であるとすれば、自身の好みの選手を次々と獲得してまったく新しいグループを作ろうというのがリカルド・ロドリゲス監督と言える。つまり、両者はまったく対照的な手法を採っているのである。
■ACLで生きた浦和の手法
対照的なのは、新戦力の獲得だけではない。
リカルド・ロドリゲス監督は、昨年就任して以来、多数の新戦力を加えていくとともに、毎試合のように先発メンバーを変更し、多くの選手を複数のポジションで起用し続けている。その姿勢は、就任直後から1年半近くが経過した現在まで全く変わらない。
左のサイドバックをやっていたかと思うと、次の試合で(あるいは試合の途中から)FWとしてプレーする明本考浩などはまさにマルチ・プレーヤー。リカルド・ロドリゲス監督の申し子のような存在だ。
試合によって異なったメンバーで戦うことを昨年以来繰り返してきたことは、4月後半に行われたAFCチャンピオンズリーグ(ACL)グループステージの戦いでは大きなアドバンテージとなった。
高温多湿の気象条件の中で「中2日の6連戦」を戦わなければならない過酷な大会では、どのチームも当然ローテーションしなければ、こなしきれるものではない。だが、浦和の選手層はアジアのライバルより明らかに厚かったし、毎試合のようにメンバーが変わるのは、浦和にとっては普段の国内リーグと同じことだったのだ。
■2つの顔を見せる浦和
ただ、一方で、リカルド・ロドリゲス監督の手法は安定感を欠く原因にもなっている。
昨年来、うまく機能した時の浦和は素晴らしい攻撃を見せてくれる。
トップでは江坂任が優れた攻撃的なセンスを発揮。この江坂とユンカーのコンビネーションが決まれば、流れるようなプレーから得点が生まれる。トップから攻撃的なMFまで広い範囲をカバーする伊藤敦樹や先ほども触れたが複数ポジションをこなす明本の攻撃参加など、リカルド・ロドリゲス監督就任によって抜擢された選手の組合わせによって、浦和は非常にバリエーション豊富で、魅力的な攻撃を見せるチームになった。
だが、それが安定しないのだ。
1つの試合の中でも、素晴らしいサッカーをしていたかと思うと、後半になって停滞してしまうことも多かった。今年の元日に行われた天皇杯決勝でも、前半の途中まではJ2降格が決まっていた大分トリニータを圧倒して先制ゴールも決めた。だが、その後はすっかりとプレーが低迷。後半に入ると、攻撃的なシステムに変更した大分に反撃を許して、一度は同点に追いつかれてしまったのである。
また、素晴らしい内容のサッカーをしたので、次の週も期待してスタジアムを訪れると失望を味わわされることも多々あった。
その不安定さの原因はいろいろあるのだろうが、やはりメンバーが毎試合変更されることも原因の一つなのではないだろうか? 試合によって自分の周囲で戦う顔ぶれがまったく異なっているのでは、やはり選手たちにとってはやりにくいのだろう。
これに対して、FC東京のアルベル監督はあまりメンバーをいじらない。