メディアミックス作品「ウマ娘 プリティーダービー」において初期から登場し、ボーイッシュなキャラクターとして描かれているのが、牝馬として64年ぶりにGI日本ダービー(東京・芝2400m)を制したウオッカである。史実では好敵手だったダイワスカ…

 メディアミックス作品「ウマ娘 プリティーダービー」において初期から登場し、ボーイッシュなキャラクターとして描かれているのが、牝馬として64年ぶりにGI日本ダービー(東京・芝2400m)を制したウオッカである。史実では好敵手だったダイワスカーレットとの関係は、「ライバルであり無二の親友」として描かれている。



前年2着の雪辱を果たし、2009年のヴィクトリアマイルを制したウオッカ

 実際のGIオークス(東京・芝2400m)では、ダイワスカーレットが感冒で出走を見送ったため対戦がなかったのに対し、ゲーム版ではオークスで対戦を選択できる『if』も用意されている。

 しかし、ダイワスカーレットが生涯をとおして一度も連対を外したことがなかった(12戦8勝2着4回)のに対して、ウオッカは常に安定していたわけではなく、とりわけ日本ダービーを勝利したあとから7連敗を喫したスランプともいえる時期があった。その7戦目にあたるのが、4歳時に出走したGIヴィクトリアマイル(東京・芝1600m)である。敗れはしたものの、2着となって前年のダービー以来の連対を果たした。

 現役中、7つのGIを制したウオッカであったが、意外にも牝馬限定のGIとは相性がいいほうではなかった。例えば、3歳時はGI桜花賞(阪神・芝1600m)やGI秋華賞(京都・芝2000m)でそれぞれダイワスカーレットに敗れているほか、GIエリザベス女王杯(京都・芝2200m)は当日に跛行(はこう/歩行に異常をきたしている状態)で出走を取り消した。

 そして4歳時のヴィクトリアマイルは、もちろん勝ったエイジアンウインズの走りもすばらしかったが、ウオッカ自身もキャリアをとおして最低体重となる478kgでの出走だったのも勝ちきれなかった要因のひとつでもあった。

 だが、敗れはしたものの前年の桜花賞以来となるマイル戦への出走がいい刺激となったのか、続くGI安田記念(東京・芝1600m)で1年ぶりの勝利を果たす。そして、秋にはダイワスカーレットとの最後の直接対決となる天皇賞・秋(東京・芝2000m)で歴史的な好勝負の末に、2cmという僅かな差でライバルを下し、その後の活躍へと繋げた。

 ゲーム中でも、3歳時にあたるクラシック級での有馬記念出走のあと、負けを受け入れることに慣れすぎた自分を省みた末、自身の進む道としてヴィクトリアマイルを目標に据える場面がある。そしてそれは、ウオッカのストーリーのなかで重要な転換点となっている。

 天皇賞・秋でダイワスカーレットにクラシックの雪辱を果たしたウオッカは、5歳となり、最大の好敵手が志半ばで引退したあとも走り続けた。そして前年同様、ドバイ遠征からの帰国初戦でヴィクトリアマイルに再び出走。この時は494kgと前年のように体重を落とすことなくレースに臨み、横綱相撲で単勝1.7倍の圧倒的支持に応えた。

 今年のヴィクトリアマイル(5月15日・東京)も、ソダシ(牝4歳)やレイパパレ(牝5歳)にレシステンシア(牝5歳)、そして約1年ぶりの出走となるデアリングタクト(牝5歳)ら、迷えるGI馬が顔を揃える。このレースを機に、ウオッカのように高みに上る馬は現れるか、興味は尽きない。