国内メジャー今季初戦・ワールドレディスサロンパス杯最終日 女子ゴルフの国内メジャー今季初戦・ワールドレディスサロンパス杯最終日が8日、茨城GC西C(6680ヤード、パー72)で行われた。「新世紀世代」の20歳・山下美夢有(加賀電子)が3バー…

国内メジャー今季初戦・ワールドレディスサロンパス杯最終日

 女子ゴルフの国内メジャー今季初戦・ワールドレディスサロンパス杯最終日が8日、茨城GC西C(6680ヤード、パー72)で行われた。「新世紀世代」の20歳・山下美夢有(加賀電子)が3バーディー、2ボギーの71で回り、通算12アンダーで初のメジャー優勝を大会史上初の完全Vで飾った。ツアー優勝は昨年のKKT杯バンテリンレディスオープン以来2勝目。2位は通算9アンダーの青木瀬令奈、3位は通算6アンダーで稲見萌寧、石川明日香の2人。2位から出た安田祐香(NEC)は通算4アンダーで7位だった。(取材・文=THE ANSWER編集部・柳田 通斉)

 最終18番パー4。60センチのウイニングパットを決めた山下はニコリと笑って、キャディーと強く手を握った。スタート前、6打あった差は3打に詰められたが、初日から首位を守る堂々の完全優勝。約1年前の初優勝は無観客試合だったが、この日は6642人の観客が詰めかける中、2勝目とメジャー初優勝をつかんだ。

「昨日の夜から緊張していました。こんなたくさんのギャラリーの前でプレーすることも初めてで、終わってからも緊張していました(笑)」

 コーチでもある父・勝臣と決めたマネジメントと目標は「センター狙いでノーボギー」だったが、どちらもできなかった。同組の安田、青木が1番パー4からバーディーを奪い、自身はなかなかスコアを伸ばせなかった。前半終了時で2位青木とは3打差になった。11番パー4では「攻めていかなければ」と思い、第2打をグリーンオーバーしてボギー。焦りは増したが、青木もボギーで救われた形になった。

 そして、12番パー5で3メートルのパットを決めてバーディー。15番パー3でもスコアを伸ばし、16番パー4は78ヤード残った第3打をピン下1メートルに寄せてパーセーブした。終わってみれば71。山下はそれがうれしかった。

「これだけプレッシャーがかかる中で、スコアはアンダーで回れたことが自信になります。今日は(64をマークした)初日と同じで100点です」

 会見では「最近、焦りがあった」と打ち明けた。笹生優花、西郷真央と同じ2001年度生まれの「新世紀世代」で、高3でプロテストに合格。ツアー初優勝は早かったが、その後、思うようなゴルフができずに優勝から遠ざかっていた。その間に笹生が全米女子オープン(21年6月)を制し、西郷は今季序盤で4勝を飾った。一方で自身は前週まで3週連続予選落ちで「精神的にもつらいところでした」と振り返った。

今週から取り入れた新ルーティン「迷いが消えました」

 救世主はコーチの父だった。普段は仕事があって会場入りできないが、今週はゴールデンウィークを利用して練習日から会場入り。まずは「同期が優勝するのはいいことだけど、焦らず、マイペースでやりなさい」と言われ、技術面でも「ハンドファーストになり過ぎ」「トップで間を取ってリズムを取る」の2点を伝えられたという。そして、山下は本来の力を取り戻した。

「私自身もやるべきことをやっていこうと決めて、それが(優勝に)つながったと思います」

 その1つが今週から取り入れたルーティンだ。

(1)ボールの後方に立って狙いを定める。
(2)ボール30センチ手前にクラブフェース面を合わせる。
(3)ヘッドを軸にしたまま左に回ってスタンス。

 これを全てのショットで繰り返し、山下は「なかなか決めたところに構えられなかったのですが、これでできるようになりました。迷いが消えました」と振り返った。

 初の国内メジャー制覇で3年シードを獲得。世界ランキングのアップが予想され、20歳にして笹生のように米女子ツアーに挑戦する条件は整ってきた。だが、山下は「足元を固める」べく、出場権を得ている全米女子オープンにもエントリーせず、国内ツアーに出場し続けるという。

「その先のことはまだ考えていませんが、今季の目標は複数回優勝なので、そこを目指していきたいです」

 勝臣さんも「かなりの努力家」と認める20歳は、マイペースを忘れずにこのまま前進していく。(THE ANSWER編集部・柳田 通斉 / Michinari Yanagida)