今季のセ・リーグは開幕から1カ月が経過し、2年ぶりの優勝を狙う巨人が首位を走る(今季の成績は5月4日時点、以下同)。1…

 今季のセ・リーグは開幕から1カ月が経過し、2年ぶりの優勝を狙う巨人が首位を走る(今季の成績は5月4日時点、以下同)。12球団最速で20勝に到達し、貯金は最大11を記録。4月29日からの阪神戦から今季初の4連敗を喫したが、チーム成績を見ると得点と本塁打はリーグトップを記録している。ここまでの強さの理由と今後のポイントはどこにあるのか。解説者の山本昌氏に聞いた。



巨人の不動の1番として活躍する吉川尚輝

勢いをもたらした新戦力の台頭

 今年のセ・リーグは抜けたチームがなく、戦力的には"横一線"でスタートしたと思います。ジャイアンツの下馬評はそれほど高くなく、投手陣に不安がありました。それが4月の時点で最大貯金11を記録したのは、タイガースが開幕9連敗とつまずいたこともひとつの要因ですが、やっぱり新戦力が機能したことが大きい。

 去年はエリック・テームズが一軍初出場でアキレス腱を断裂、ジャスティン・スモークはコロナ禍で家族が来日できずに6月に退団。8月に入団したスコット・ハイネマンも9月末には体調不良で帰国しました。

 今年は一転、野手ではグレゴリー・ポランコとアダム・ウォーカーがスタメンに名を連ね、先発のマット・シューメイカーもいい。

 またルーキーの赤星優志は2勝を挙げ、2年目の山﨑伊織も4月28日のベイスターズ戦でプロ初勝利を飾りました。堀田賢慎は4月22日に登録抹消されましたが、ここまで新しい顔ぶれを使える原辰徳監督と桑田真澄投手チーフコーチはすごいですよ。彼ら若手ピッチャーが「やっぱり、まだ無理だったか......」となっていたとしたら、今の順位にはいないはずですからね。

 ジャイアンツのいいところは、ベテラン、中堅、若手が揃っていることです。坂本勇人という大黒柱がいて、開幕戦には左腹斜筋の負傷で出られなかったけれども3試合目から戻ってきて上位打線に座りました。4月30日の阪神戦で右膝の靭帯を損傷し、登録抹消となってしまいましたが......。

 岡本和真は主軸の自覚が出てきて、すでに2ケタ本塁打を記録。丸佳浩は去年4月後半に打率1割台の時もありましたが、今年はチーム2位の打点を記録するなど、ポイントゲッターとして活躍しています。

攻守で躍動する吉川尚輝

 そして、攻守で一番大きい活躍をしているのが吉川尚輝。腰に不安を抱えていますが、もともとセンス抜群の選手。守備範囲が広いし、打ってもパンチ力がある。今年は開幕から元気で打率3割を超す活躍を見せています。吉川が1番に入り、上位打線は安定していますね。

 ジャイアンツの場合、もともと打線が強いなかで、ポランコ、ウォーカーという新外国人がうまくはまりました。ポランコは196センチ、108キロというデカさで、スイングがすごく速い。慣れてくればもっと打ちますよ。ウォーカーも196センチ、104キロとデカくて、こちらもスイングが速いバッターです。

 ただし、ふたりとも守備が気になりますね。決して「うまい」という感じではなく、とくにレフトのウォーカーはスローイングに不安を感じます。そうした情報は各球団に流れているはずで、レフトの左右に打球が飛んで来たら次の塁を狙われるかもしれません。東京ドームはそれほど広くないですが、甲子園やバンテリンドームでどう対処するかですね。

 とはいえ、打線的にはふたりの加入は本当に大きい。そのおかげで、1番から7番くらいまで安定しています。キャッチャーの大城(卓三)がスタメンを外れることもありますけど、小林(誠司)も含めてキャッチャー陣に当たりが出てくると、相当強力な打線になるという感じはしますね。

 "新顔"というところでは、抑えの大勢がすばらしい活躍です。とにかく球が速いし、キレを感じます。抑えにこれほどはまるとは......開幕前は誰も思っていなかったでしょう。それが4月13日のベイスターズ戦で8セーブ目をマークして球団新人記録をつくるなど、誰もが認める守護神に成長しました。これだけ好調の要因が揃っていれば、ジャイアンツが首位を走るのは当然かなという感じがしますね。

菅野&坂本の離脱の影響は?

 とはいえ、「盤石」とまでは言えません。菅野智之が4月30日に「右ヒジの違和感」で登録抹消されました。「なんでもない」というコメントでしたが、エースがなんでもないのに3回降板は常識的に考えにくい。さらに、同日の試合では坂本も負傷して戦線離脱となりました。

 先発陣では戸郷翔征が頑張っていて、シューメイカーとC.C.メルセデスの状態がよく、山﨑も形になってきました。赤星が二軍降格となり、あとひとりローテーションに入ってこないといけないのが髙橋優貴です。

 今年はリリーフでの登板もありましたが、本来は先発で投げるべきピッチャーです。首脳陣としては「なんとかしたい」と思ってリリーフで出しているのでしょうが......。5月1日の阪神戦では今季初先発し、6回途中2失点と結果はまずまずでした。去年より投球フォームが横振りになっていますが、その分チェンジアップは抜けているので、うまく使っていけばいいと思います。

 中継ぎでは畠世周、鍬原拓也、今村信貴などが頑張っていますが、盤石にするにはもう1枚加えたいところですね。

 3、4月という短期間で貯金10前後を稼いで、ここからどれだけ増やせるか。20までいけば、「優勝争いトップ」と言えます。25まで貯めると、「優勝するぞ!」となる。ジャイアンツとすれば、あと10個ちょっとをどうやって増やしていくかですね。

 心配な点を挙げれば、菅野と坂本の登録抹消がチームに影を落とさないかどうかです。そう考えると、丸と岡本がチームの中心として引っ張っていけるかがポイントになると思いますね。