5月3日、平塚。J1第11節、17位の湘南ベルマーレは、16位の清水エスパルスを本拠地に迎えている。序盤戦とはいえ、残…

 5月3日、平塚。J1第11節、17位の湘南ベルマーレは、16位の清水エスパルスを本拠地に迎えている。序盤戦とはいえ、残留を争う両チームの今後の命運を占う一戦となった。

 結果から言えば、湘南が1-4で清水に大敗した。では、負けた湘南は窮地に陥り、勝った清水は窮地を抜け出したのか?

 前半30分まで、湘南は清水を相手に優勢に戦っている。ダブルボランチへのシステム変更が功を奏したか、ポジション的優位を取れるようになって、攻撃も守備も先手を奪っている。実際、清水のMFとDFのラインの間を何度も自分のものにしている。つないで持ち込んでも、カウンターで攻め上がっても、そこを起点にゴール前に迫った。

「前半の前半までは0-0でしたが、自分たちが主導権を握っている感じで。いいリズムでプレーすることができていました。ただ、ワンプレーでチャンスを作られるシーンがあったので、そこは選手の責任感(が足りない)というか」(湘南・山田直輝)

 集団としてのデザインは見えたが、1本のパスを通される脆弱性もあって、悪い予感は的中することになった。

 前半32分、清水が湘南の弱さをえぐり出した。自陣でパスカットに成功すると、相手のボランチ2人が同時に前に出たところで、鈴木唯人がその背後を取った。ここから前を向いたプレーで、右サイドを駆け上がる中山克広にパスが通る。そして右足の一撃をゴール左に打ち込んだ。

 清水は戦術的に、個人に頼っていた。チームとしてのデザインはほとんど見えなかった。プレッシングもリトリートもなく、ライン間もゆるく、練度は低かったと言える。しかし、個の力で局面を上回り、単なる相手DFの裏に蹴ったボールに鈴木唯人、チアゴ・サンタナが走り込むだけでアドバンテージを作った。



湘南ベルマール戦の清水エルパルスの勝因はGK権田修一の存在だった

 何より、清水を支えていたのは、日本代表GK権田修一だった。前半から苦境を耐えるセービングを連発。入ってもおかしくなかったミドルシュートをはじき出し、1対1の決定機もブロックした。率直に言って、彼の存在が勝負を分けたと言える。

湘南の問題は得点力とメンタル

 一方、出足は悪くなかった湘南は失点後、明らかに意気消沈した。負け続けている自信のなさなのか。呆気なくやられる格好で、たて続けに失点したのだ。

 36分にはCKからマンマークにもかかわらず完全に敵を見失い、頭で合わされる。GKがブロックした後も再びシュートを打たれ、もう一度防ぐも、さらにフリーだった鈴木に蹴り込まれた。38分にも左サイドに容易にパスを通され、裏返される格好で鈴木のスピードに振り切られる。簡単にクロスを上げられると、中央に走り込んだ白崎凌兵のマークも外しており、ゴールにボールを叩き込まれた。無残な守備だった。

「(チームが)失点で崩れる現状は間違いなくて。戦術云々よりも、メンタルの部分が大きいと思います。1点獲られて下を向いている場合ではない」(湘南・池田昌生)

 気落ちしている間に、3点を放り込まれた。これでは勝負にならない。後半、1点を返したが、再びCKから失点し、以降、スコアボードは動かなかった。攻撃にパワーを使っただけに、余力は残っていなかったのだろう。

 湘南は、得点力とメンタルの問題が浮かび上がった。優勢な時間帯で先制できていたら、違った展開も望めただろう。また、チームとしての守備は鍛えられているが、個人があまりに簡単にやられすぎていたし、やられた後のメンタルリカバリーは致命傷だった。ふたつの問題点を解消するか、問題を違う形で補うことができないと、降格の現実が近づくことになるだろう。

「(日本代表GK谷晃生ではなく富居大樹を使ったのは)富居の調子がよかったのもあります。チームとしての流れがよくなかっただけで、刺激を与えたいという思いで。思いきった違いを示したかったのですが......」

 湘南の山口智監督は試合後に語っているが、変化が必要なのは誰よりも承知しているはずだ。

 一方の清水は、GK権田、FW鈴木、サンタナなど、個人が軸になることで、勝ち点は奪えるかもしれない。しかし、1本のパスで裏を抜くような戦い方がはまるのは、下位相手だけ。チームとしての戦い方が整備されない限り、再び厳しい局面にさらされるだろう。

「県内の新聞ではネガティブな表現ばかり並んでいたので、今日はポジティブな感じで......」

 試合会見後、暫定で12位に上昇した清水の平岡宏章監督は、地元記者とのやりとりで、冗談めかして言った。ただ、大勝は喜ばしいが、内容そのものはそこまで変わっていない。

 残留争いは、これからますます混迷を深めるだろう。現在はヴィッセル神戸、ガンバ大阪、浦和レッズ、名古屋グランパスのようなクラブが下位に低迷しているが、彼らは資金力があるだけに立て直す余力はある。17位に沈んだままの湘南、12位にジャンプアップした清水は、置かれた立場はそう変わらない。熾烈な残留戦を勝ち抜くには、今から「石にかじりついても」という戦いが求められる。