「ウマ娘 プリティーダービー」に登場する個性的なキャラクターたちのなかでも、異彩を放っているのが、覆面を被ったアメリカからの帰国子女として描かれているエルコンドルパサーだ。アメリカ生まれながらメキシコ仕込みを伺わせるプロレス好きという設定で…

「ウマ娘 プリティーダービー」に登場する個性的なキャラクターたちのなかでも、異彩を放っているのが、覆面を被ったアメリカからの帰国子女として描かれているエルコンドルパサーだ。アメリカ生まれながらメキシコ仕込みを伺わせるプロレス好きという設定で、アニメ版シーズン1では主人公であるスペシャルウィークのライバルの1人として登場、ダービーは同着優勝で分け合った。



1998年NHKマイルCを制したエルコンドルパサー

 それに対してスマホゲーム版では、3歳時に当たるクラシック級において、三冠競走ではなく"世界最強"を目指し、「クラシック級でのジャパンカップ制覇」を目標とするストーリーになっている。

 史実のエルコンドルパサーは1995年生まれのアメリカ産馬。3歳(旧表記・現2歳/以下同)の11月に東京ダート1600mの新馬戦でデビュー。このデビュー戦ではスタートで行き脚がつかず、馬群の最後方を追走する一見すると苦しい展開となるも、直線だけで前を行く各馬をごぼう抜き。それだけでなく、後に重賞を勝つ2着馬に7馬身差をつける圧勝という、とんでもないパフォーマンスを発揮して、大活躍へと繋がる片りんを見せる。

 続く2戦目もダート1800m戦で圧勝し、3戦目に満を持しての芝レースのGIII共同通信杯を選択。ところが、大雪の影響で芝コースが使用できず、ダート変更・格づけなしの重賞となり、芝への挑戦はここを勝って臨んだGIIニュージーランドトロフィー(東京/芝1400m)でようやく果たすことができた。

 初の芝だけではなく、距離短縮、メンバーの大幅強化とあったなか、エルコンドルパサーは中団追走から難なくゴール前で抜けだして勝利。続くGINHKマイルカップ(東京/芝1600m)の大本命として不動の評価を得ることとなった。

 この年、春のクラシックはスペシャルウィーク、セイウンスカイ、キングヘイローが、いわゆる"三強"を構成していた。エルコンドルパサーも、これだけの馬ならこの3頭に割って入ってもおかしくないはず。しかし、エルコンドルパサーがそこに加わることが叶わない事情があった。

 今では、外国産馬は当たり前のように日本のGIレースに出走することができるが、史実のエルコンドルパサーが活躍していた当時は、4歳のクラシック競走や春秋の天皇賞には出走が叶わない規則が存在した。これがゲーム版のストーリーで"クラシック級でのジャパンカップ勝利を目指す"における背景となっているのは言うまでもない。

 そして、当時の皐月賞やダービーに出走できない外国産馬(と短距離適性の馬)たちの4歳春シーズンの目標となるよう、1996年に創設されたのがNHKマイルCであったのだ。

 迎えたNHKマイルCでは、エルコンドルパサーのほかに、3歳時のGIIIラジオたんぱ杯3歳(阪神・芝2000m)でキングヘイローを破って3戦無敗のロードアックス、マイルでも2勝があり前走のGIIIクリスタルカップ(中山・芝1200m)を勝って4戦無敗のトキオパーフェクト、2戦2勝で重賞初挑戦のシンコウエドワードと、無敗馬が4頭も顔を揃えた。だがエルコンドルパサーは、これまでにない好スタートを切ると、直線では楽々と突き抜け、単勝1.8倍の断然人気に応えてみせた。

 こうして、5戦無敗でGIタイトルを手にしたエルコンドルパサー。しかし、これはまだその後に続く大活躍の序章に過ぎなかったが、この続きについてはまた別の機会としたい。

 その後、2000年代に入って段階的に外国産馬の出走制限は緩和され、G Iレースへの門戸が開かれるようになったが、そのあともNHKマイルCは外国産馬の登竜門的な存在として、クロフネや昨年のシュネルマイスターなどが勝ち馬として名を連ねている。