スペイン・マドリッドで開催されている「ムトゥア マドリッド・オープン」(ATP1000/5月7~14日/賞金総額543万9350ユーロ/クレーコート)の男子シングルス準々決勝で、第4シードのラファエル・ナダル(スペイン)が第9シードのダビ…

 スペイン・マドリッドで開催されている「ムトゥア マドリッド・オープン」(ATP1000/5月7~14日/賞金総額543万9350ユーロ/クレーコート)の男子シングルス準々決勝で、第4シードのラファエル・ナダル(スペイン)が第9シードのダビド・ゴファン(ベルギー)を7-6(3) 6-2で下し、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)の待つ準決勝に進出した。第2シードのジョコビッチは、第6シードの錦織圭(日清食品)が右手首の故障の再発のため大事をとる形で棄権したあと、不戦勝でベスト4に駒を進めていた。◇     ◇     ◇

 見ごたえある、ハイレベルの試合だった。かつてのナダルが戻ってきたように見えたとしたら、それも、対するゴファンの素晴らしい抵抗があってこそのことだったのだろう。そして必ずしもスコアとは比例しないことに、終りが近づくにつれ、その凌ぎあいの激しさは強度を増していったのだ。

 いわゆるスーパーショットが出始めたのは、お互いにストロークで互角に揺さぶり合いながらたどりついたタイブレークをナダルが制したあとのことだった。第2セットの第3ゲーム1-1から、ナダルはゴファンのサーブをブレークしようと食い下がり、しぶといディフェンシブ・プレーから、一瞬のスキをついて攻める側に転じる能力を、非常に高いレベルに引き上げていく。

 例えば、ゴファンのスマッシュを拾ってロブで返し、それを追ってベースラインに戻ったゴファンの返球をすかさず叩いて、フォアのダウン・ザ・ラインのエースを奪った場面。ゴファンがシャープなストロークをライン際に連続で打ちこんでいく中、ナダルは恐るべきしぶとさでそれを切り返し、長く激しい打ち合いの末に、ゴファンが最後にはミスをさせられるという結末が増え始めた。

 しかしゴファンも決めきるために集中力を高め、実際、何本もの素晴らしいショットで観客をうならせる。ブレークされて1-2とされた次のゲームでは、直ちにブレークバックすべく猛攻をしかけ、フォアの強打と鋭角なバックハンドクロスを決めて、3度ブレークポイントを握りもしたが、その都度巻き返されることになった。

 2-4からの第7ゲーム、ゴファンの渾身のフォアのダウン・ザ・ラインが決まったかと思われた瞬間に、ナダルがランニング・フォアのダウン・ザ・ラインで切り返し、逆にエースを奪い返したあとには、会場から「トレロ!(闘牛士)」の声が上がった。ゴファンのドロップショットに追いつき、次のゴファンのボレーをボレーで返してポイントした場面、鋭く打ちこまれて追い込まれながら、ランニングバックハンドで逆に相手を走らせてミスさせた場面――多くのスーパーショットの応酬があったこのゲームでは、『強いナダルの帰還』を知らせる警報が、はっきりと鳴り響いていた。

 結局ナダルは、挽回を目指し勇敢な攻撃を仕掛けたゴファンに打ち勝ち、この壮観な戦いの勝者に。試合後、プレーの質の高さを指摘されたナダルは、「ああ、本当に素晴らしい試合、高いレベルの、観ていて楽しい試合だったと思う。僕、ゴファンの双方が、本当にハイレベルのプレーを見せた」と、手放しで満足感を表現した。

「第1セットはどちらにも転び得た。でも、たぶん僕のほうがよりオプションがあり、幾分優勢だったかもしれない。でもスコアが見せる以上に厳しい試合で、勝つには最高レベルでプレーする必要があった。これは、アドレナリンで満ちた状態で家に帰る、というタイプの試合のひとつだね。自分がやったプレーに満足している」

 一方、昨年と比べての実力の伸び、復活ぶりを指摘されると、ナダルは「昨年も、ここではいいプレーしていた。違いはただ、昨年はここマドリッドのこのラウンドでケガをしてしまった、ということだけだ。そのせいで、そのあとが非常に難しくなってしまった」と返答した。

 これに先立って行われた、パブロ・クエバス(ウルグアイ)とアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)の準々決勝の質の低さゆえに、ナダル対ゴファンの試合の質は、いっそう際立って見えた。それでもベストの力を出した老兵クエバスにとって、それは美しいストーリーだったろう。「準決勝に至れて本当に嬉しい。ここ2試合とてもいいレベルでプレーしているよ」と言ったクエバスは、粗いプレーを繰り返すズベレフを3-6 6-0 6-4で下し、31歳にして初となるマスターズ1000大会での準決勝進出を成し遂げた。

 また、夜に行われた若手対決、ドミニク・ティーム(オーストリア)対ボルナ・チョリッチ(クロアチア)は、6-1 6-4でティームに軍配が上がった。23歳対20歳の対決は、特に第2セット、お互いに打ちながらもミスを減らして粘り合う、なかなかの好試合に。しかし、ショットの種類や回転に多彩さを持つティームが、持ち前の強烈なストロークのウィナーに加え、バリエーションでもチョリッチのリズムを崩し、ほぼ危なげなく勝利をつかんだ。

 これで、ベスト4が出揃った。準決勝の顔合わせは、ナダル対ジョコビッチ、ティーム対クエバスとなっている。(テニスマガジン/ライター◎木村かや子)

※写真は「ムトゥア マドリッド・オープン」の準々決勝で対戦したラファエル・ナダル(右)とダビド・ゴファン(左)

Photo: MADRID, SPAIN - MAY 12: Rafael Nadal of Spain congratulates David Goffin of Belguim at the net after winning during day six of the Mutua Madrid Open tennis at La Caja Magica on May 12, 2017 in Madrid, Spain (Photo by Clive Rose/Getty Images)