香川真司(シント・トロイデン)インタビュー@前編 昨年12月にPAOK(ギリシャ)との契約を解除した香川真司が心機一転、…
香川真司(シント・トロイデン)インタビュー@前編
昨年12月にPAOK(ギリシャ)との契約を解除した香川真司が心機一転、シント・トロイデン(ベルギー)との契約を発表したのは、今年1月10日のこと。
以来、新天地では第27節のロワイヤル・ユニオン・サン=ジロワーズ戦(2月13日)を皮切りに、リーグ戦5試合で途中出場。そしてリーグ戦最終節のスタンダール・リエージュ戦(4月10日)では初めて先発出場を果たし、後半65分までプレー。1アシストを記録するなど、チームの勝利に貢献した。
残念ながらチームはプレーオフ出場権を逃したために、予想外に早いシーズンオフを迎えることとなったが、シント・トロイデンで過ごしたこの約4カ月は、香川にとってどんな日々だったのか? 現在クラブから求められている"新しい香川真司"像も含め、新天地での取り組みとプレーポジションについて、香川自身が語ってくれた。
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香川真司にシント・トロイデンでの4カ月を振り返ってもらった
---- 最後のスタンダール戦は約7カ月ぶりのスタメンでした。どんな気持ちでしたか?
「もちろん、僕自身は久々のスタメンで気持ちが高ぶる部分もありました。でも、監督からスタメン起用を伝えられてからの約1週間は、メンタル的なコントロールをしながら、自分に対して過度なものを求めすぎず、これまで練習でやってきた感覚をしっかり出せれば必ず結果は残せると信じて、試合に入ることができたと思います」
---- それまでは途中出場で5試合。見ている限り、調子は上向いているように見えましたが、どれくらいトップフォームに近づいている感覚がありましたか?
「正直なところ、なかなか自分のなかでトップフォームという物差しを作れていないのが現状なので、正確に答えるのは難しいですね。それでも、かなり練習をハードにやってきたので、コンディション的にはよかったと思います。
ただ、練習で調子がよくても、試合は別物ですから。結局、ゲーム体力というものは公式戦でしか補えないと思うので、そのチャンスがいつやってくるのか、そのタイミングに注意しながら準備していました。
そもそもチームは2月から負けなしの状態が続いていましたから、スタメンを変更する要素もなかったですしね。チームが勝っている以上、僕自身もそれを理解していたので、とにかく高まる気持ちを抑えながら、そのチャンスとタイミングを待つということを自分自身に言い聞かせながら、日々取り組んでいました」
---- プレーオフ出場権がかかった大事な試合で、貴重な先制点をアシストしました。アタッカーとして数字を残せたことについては、どう感じていますか?
「もちろん、数字を残せるに越したことはないですし、それは自分のなかでも毎試合こだわってやっていることですから。とはいえ、途中出場という限られた時間のなかで数字を残すことは簡単ではなくて、逆にスタメンで出られれば出場時間が増えるので、そうなれば必然的にその確率が上がるとは考えていました。
そういう意味でも、あの試合でアシストを決めてしっかり結果を残せたことについては、とてもよかったと思っています」
---- アシストを決めた場面ですが、自陣でフリーの状態でボールを受けてから、前線にロングパスを送るまでの時間がとても短かった。ドリブルで前進することもできたなか、あのタイミングでパスを出せたということは、自分のなかで狙いとして持っていたということですか?
「そうですね。チームとしても、常にボールを奪ったら速く前へ、裏へというスタイルで、それがこのチームのストロングポイントでもありますから。あとは(原)大智が本当にいい動き出しをして、相手の逆を突いてくれたのが大きいですね。
自分にもそれは目に入っていて、明らかに裏のスペースが空いていたので。お互いの意思とタイミング、それとパスとトラップの精度が見事に合致した、すばらしいゴールだったと思います」
---- ああいった美しいゴールをアシストする喜びというのは、ゴールを決めた時とは違う喜びがあるものですか?
「もちろん、ゴールに直結するアシストを決めることはうれしいです。でも、やっぱりゴールに勝る喜びはないですよ(笑)」
---- シント・トロイデンでは、3−5−2の2列目のインサイドハーフでプレーしていますけど、あのポジションで監督から求められている仕事はどんなことですか?
「まずはボールを落ち着かせること。そして、試合をコントロールすること。それは特に、このチームにとっては重要な部分だと思っています。監督もその仕事を僕に強く求めてくれているので、自分のなかでもかなり意識してプレーしています。
あとは、いかにゴールに直結するラストでの局面で、違いを生み出していけるか。残念ながら今シーズンは終わってしまいましたけど、そこは来シーズンもより自分に求められるタスクだと思いますし、現在の自分が求めているタスクでもありますね。
もちろん、来シーズンに向けてどのような形でやるかはわからないですけど、監督も4−3−3という話を以前にしていたこともあったので、僕としてはぜひそれをチャレンジしてみたいという気持ちが強いです。
シント・トロイデンというチームの立ち位置については、実際に加入するまではわからなかったですけど、加入してからベルギーリーグ全体を見てみると、来シーズンのチーム目標はもっと高く設定する必要があるんじゃないかと。それだけのポテンシャルが、このチームにはあると思っています」
---- 4−3−3の場合、どのポジションでのプレーをイメージしていますか?
「もちろんインサイドハーフ、インテリオールです」
---- たしか加入時には、立石敬之CEOも「新しい香川真司」という発言をしていました。つまり、たくさんボールに触ってゲームを作るという部分ですが、ご自身もそのことを頭に入れてチームでトライしている感じですか?
「ええ、そのポジションで自分のベストを生み出せると思っていますし、そう信じているので。だから来シーズンも、そのポジションでどこまで勝負できるのか、自分でも楽しみにしています」
---- 以前も中盤に降りてさばく作業をしていましたが、現在はインテリオールとして、もっとその仕事を意識しているということですか?
「いや、意識自体は変わってませんよ。というのも、サラゴサ時代も僕は4−3−3のインテリオールでプレーしたいと思っていて、実際プレーオフでもそのポジションでプレーしていましたし。
もっと言えば、ドルトムント時代や(ハビエル)アギーレさん時代の代表でも経験していますから。その頃から常にインテリオール、8番でプレーすることの楽しさを感じていましたし、そこが自分に一番合っていると感じていたので。
もちろんみんなは、ドルトムントや代表で僕が10番としてプレーしていた頃をイメージしがちかもしれないですけど、それはそれとして、僕のなかでは以前からボールによく絡めて、前にも行けて、攻守両面に関われるポジションとして、インテリオールが自分に一番合っていると思ってやっています」
---- 少しパブリックイメージとのギャップがあるんですね。
「そうですね、そう思われがちですよね(笑)。でも、そこは気にしていません」
---- 8番の楽しさはどんなところにありますか?
「やっぱりインテリオールはボールに触れる回数がトップ下よりも明らかに多いですし、場合によってはトップ下のエリアでボールを受けることもできる。だから、両方できるというか、自由度が上がるという感覚があります。
わかりやすい例として、アギーレさんの日本代表で言わせてもらえば、ハセさん(長谷部誠)が6番で、ヤットさん(遠藤保仁)が8番。
ヤットさんはわりと作る作業で、僕は10番のポジションでプレーしましたが、たまに僕が8番的に作って、代わりにヤットさんが10番に上がるとか。そのバランスが感覚的にうまくやれる人が集まると、すごく面白いサッカーができると、当時から感じていました。
ドルトムント時代も、(イルカイ)ギュンドアンや(ユリアン)ヴァイグルと一緒にプレーして、そういったバランスがオートマティックにできていました。僕が下がってボールを受けてから前に入って行けるということを、自然にみんなが見てくれていましたしね。
インテリオールは、そういう自由にやれる部分がある。そこにすごくやり甲斐を感じていて、自分のよさを一番出せるポジションだと思っています」
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2018年ロシアW杯以降、4年間で5チームを渡り歩いた香川真司。その間には無所属の時期もあるなど、なかなか思いどおりのプレー環境を得られない時間が長く続いたが、彼の話を聞くと、シント・トロイデンでは物事が好転し始めている様子が伝わってきた。
とりわけ現在は、自分のよさが一番出せるというインテリオールでプレーする。それは、現在取り組んでいる"新しい香川真司"を確立するにはうってつけの環境であり、もしかしたら日本代表復帰への道筋になる可能性をも秘めている。
果たして、香川の視線の先には日本代表とカタールW杯は映っているのか。後編では、そのあたりについて、本音を語ってくれた。
(後編につづく)
【profile】
香川真司(かがわ・しんじ)
1989年3月17日生まれ、兵庫県神戸市出身。2006年にセレッソ大阪に加入し、プロ2年目からレギュラーに定着。2008年、日本代表に初選出される。2010年のドルトムント移籍後は欧州を舞台に活躍し、マンチェスター・ユナイテッドではプレミアリーグでアジア人初のハットトリックを達成。2019年からベシクタシュ(トルコ)→レアル・サラゴサ(スペイン)→PAOKテッサロニキ(ギリシャ)と各国クラブを渡り歩き、2022年にベルギーのシント・トロイデンに移籍。ポジション=MF。身長172cm、体重68kg。