■守護神・南のPKストップで流れが変わる 5連戦の2試合目となったミッドウィークのナイトゲームで、もっとも大きな興奮に包…

■守護神・南のPKストップで流れが変わる

 5連戦の2試合目となったミッドウィークのナイトゲームで、もっとも大きな興奮に包まれたのはNACK5スタジアム大宮だっただろう。ホームの大宮アルディージャが、ザスパクサツ群馬からドラマティックな勝利をつかんだからだ。

 1勝3分7敗で21位に沈んでいた大宮は、開始早々にビハインドを背負う。ペナルティエリア外にも見えた接触プレーが反則となり、PKを献上してしまうのだ。古巣対戦となる岩上祐三に決められ、いきなり追いかける立場となる。

 27分には2点目を奪われる。CBのクリアが相手選手の足元にピタリと収まり、そのままゴール前へ侵入されて難なく押し込まれた。勝利に恵まれていないチームは、小さな不運が失点につながってしまう。

 前半のうちに0対2とされるのは、前節のモンテディオ山形戦と同じである。しばしば不安定と言われるスコアも、現在の大宮にとっては鉄の扉のように重い。過去11試合で10得点にとどまる攻撃陣は、1試合3得点を記録したことがないのだ。

 すでに追い詰められているチームを、さらなる試練が襲う。31分に2度目のPKを献上してしまうのだ。またしても微妙な判定だったが、だからといって覆ることはない。再び岩上がペナルティスポットへ向かう。

 判定に対する不満が立ち込めるスタジアムに、悲しい予感が漂う。数秒後には絶望が広がるかもしれなかったそのとき、GK南雄太がチームを救った。1本目と同じ右スミを狙ってきた一撃を、鮮やかにストップしたのだ。

 大宮の霜田正浩監督は、「雄太が流れをこちらに戻してくれた」と、42歳の守護神のビッグセーブを讃えた。前半が0対2で終了するのは前節と同じでも、後半へ向かっていくチームの空気は明らかに違っていた。

■ピッチ内に響いた「これを続けていけば大丈夫」

 2点差を追いかける展開となった大宮だが、前半からボールを動かすことはできていた。群馬の守備ブロックの外側を循環する時間は長かったものの、前半終了間際には相手ゴールへ迫ることができていた。

 果たして、後半は開始早々から敵陣でゲームを進めていく。守備ブロックの内側へパスを差し込めなくても、大宮の選手たちに焦りはない。2試合ぶりの先発となった矢島慎也は、「前半から意図的にまわすことができていた。これを続けていけば大丈夫という声が、ピッチ内で聞こえていた」と言う。4-1-2-3のシステムでインサイドハーフを務めてきた背番号19は、4-4-2で戦ったこの日はセントラルMFを任され、ボールに数多く触って攻略の糸口を探っていた。

 57分の1点目は、その矢島のパスが起点となった。ペナルティエリア右奥へのパスを武田英寿が頭で落とし、河田篤秀がワンタッチでゴール前へ通す。GKとDFラインの間へ入り込んだ菊地俊介が、左足で抜け目なくプッシュした。菊地は今シーズン初スタメンで初ゴールだ。

 スタジアムの空気が変わった。ファン・サポーターの絶え間ない拍手が、追いかける者の勢いを加速させていく。両CBも敵陣に入ったポゼッションで右CKを獲得すると、西村慧祐がゾーンディフェンスの外側からヘディングでゴール左スミを射止める。62分、同点に追いついた。背番号24を着けるCBも、今シーズン初得点だ。

■後半3ゴールで試合を引っ繰り返す!

 0対2から2対2に追いついたのは、群馬戦が初めてではない。横浜FCとの開幕節も0対2から同点へ持ち込んだが、後半終了直前のPKで敗れた。そこから横浜FCは上昇気流に乗り、大宮は勝ち切れない試合が続くこととなる。

 J3降格圏に沈む現状から抜け出すためには、大きなうねりを起こしたい。勝点1では足りない。追いつくだけでなく、勝ち切りたい。

 この日の観衆は4761人で、全11カードのなかで2番目に多かった。1000人を切る試合もあったなかで、チームを後押しする熱気が充満している。

 68分、大宮を後押しするオレンジ色の熱気がさらに高まる。敵陣中央左寄りのFKを、武田がゴール前へ供給する。空中戦に強い相手CBに制空権を握られたが、ボールはペナルティエリア右へ流れた。フリーの矢島が収め、迷わず右足を振り抜く。クロスを予想した相手GKの逆を突き、強烈な一撃がニアサイドを破った。チームメイトの祝福を受けた矢島はゴール裏へ向かってガッツポーズする。ついに試合を引っ繰り返した。

 残り時間は20分以上もある。守備に軸足を移すには、まだ少し早い。霜田監督が、両手を広げて下へ下げる。落ち着け、というシグナルだ。ピッチ上の選手たちも、同じシグナルを出し合う。

 78分、ピッチに座り込んだ矢島が交代する。

 86分、同じくピッチに座り込んだ菊地もベンチに下がる。誰もが限界までハードワークをして、勝利を手繰り寄せようとしている。

 89分、群馬が退場者を出す。大宮は数的優位に立つものの、アディショナルタイムは6分だ。86分からは5バックにして守備に重心を移したものの、GK南が思わず見送ったシュートがあった。11対10にもかかわらず、明らかに押し込まれている。終了のホイッスルが鳴り響くまで、気を抜くことはできない──。

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