女子格闘家ファイル(3)鈴木なな子インタビュー 後編(前編:「美女ボクサー」という紹介に「色モノにはなりたくない」>>) 昨年12月、立教大学4年時に女子日本ミニマム級の王者となった鈴木なな子。幼少期から空手を始め、ボクシングに転向し、プロ…
女子格闘家ファイル(3)
鈴木なな子インタビュー 後編
(前編:「美女ボクサー」という紹介に「色モノにはなりたくない」>>)
昨年12月、立教大学4年時に女子日本ミニマム級の王者となった鈴木なな子。幼少期から空手を始め、ボクシングに転向し、プロデビューから約4年半でベルトを手にした。
しかし、目指すのはさらにその先。世界に対する意識、女子ボクシング界全体のことについても思いを語った。
現ミニマム級日本王者の鈴木なな子
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――立教大学での4年間は、練習の毎日だったんですか?
「そうでしたが、ボクシングを第一に考えていましたからね。大学も(埼玉県の)新座キャンパスなので三迫ジムからも近く、移動もしやすかったですから苦ではなかったです」
――大学ではコミュニティ福祉学部で学んだそうですね。
「スポーツ系の学科だったので、生理学やトレーナー演習みたいなこともやりましたし、ボクシングに活かせる減量のこと、栄養学なども学ぶことができました。テーピングもやったので、ケガをした時に自分でできますね(笑)」
――試合に向けて、減量はどれぐらいするんですか?
「5、6キロです。女子選手としては、ちょっと減量の幅が大きいかもしれませんが、そんなに無理はしていないですしキツいとも感じていません」
――大学時代、鈴木選手がプロボクサーだと知らない人も多かったのでは?
「友達が試合を見に来てくれたことはありましたが、友達以外の人はほぼ知らなかったでしょうね。あまり自分から、ボクシングをやっていることを言うこともないですし」
――ボクシングを始めたのは高校2年の時とのことですが、バックボーンはフルコンタクトの空手(新極真)ですね。
「4歳から高校2年までやっていました。始めたきっかけは覚えてないんですけど、近くに道場があって『やりたい』と自分で言い出したらしくて。それが3歳の時だったのかな。道場に入ることができる4歳になるのを待って始めました」
好きなボクサーはカネロとドネア
――道場で最年少の4歳。怖がることはなかったんですか?
「幼稚園生の時は、そんなに練習も厳しいわけじゃないから楽しんでやってましたね」
――高校2年で全関東大会の女子軽量級を優勝するまでになりますが、そこからの転向。ボクシングのどこに魅力を感じますか?
「単純にカッコいいってこともあるんですが、ボクシングは一戦一戦が持つ意味がより大きく、勝った時の達成感がすごいことでしょうか。普段のオン・オフもハッキリしていて、生活に"張り"が出るんです。練習があるから週に一度の休日がとても楽しみになる。その充実している感じが好きです」
――ちなみに、好きな選手はいますか?
「カネロ(サウル"カネロ"アルバレス)選手や、(ノニト・)ドネア選手が好きです。カネロ選手は近距離でも離れても攻撃がうまい。ガードも硬いし、あのスタイルは『すごくきれいだな』と感じます」
――空手の蹴りを活かすのであれば、ボクシングではなく、キックボクシングという選択肢もあったのでは?
「もともとのきっかけは、空手のパンチがヘタだったので、上手くなるためにボクシングをちょこっとかじる程度でやっていたんです。あと、空手も流派がたくさんありましたが、キックボクシングは団体がたくさんあるので、それが統一されている競技がいいな、とも思っていました。フルコンタクトをやってましたから、ボクシングに転向することは家族からも反対されませんでしたね」
――高校3年生でプロデビューして、大学4年生で女子日本ミニマム級王者に。ここまでのボクシング人生は順調ですね。
「大学生のうちに目標のベルトが獲れたので、トータルで見たらそうかもしれません。でも、試合のスパンが開いてしまって、試合数を思うようにこなせなかったのは少し残念です」
2、3年で東洋のタイトルを目指す
――人数は少しずつ増えてきているとはいえ、女子のプロボクサーで同じ階級の選手となると限られてくると思います。スパーの相手も同じ顔触れになったりしませんか?
「どうしてもそうなってしまいますね。スパーした選手と試合をすることになる確率も高いですから、ヘタにいろんな人とできないという面はあるかもしれません。ただ、試合とスパーは別物ですから、私はそこまで気にしていません」
――鈴木選手が三迫ジムに移籍した当時(2020年1月)は、女子選手は他にいませんでした(現在は、WBO女子世界スーパーフライ級王者・吉田実代、晝田瑞希らが在籍)。男子ともスパーを行なっていたんですか?
「出稽古をしたり、男子選手ともやっていました。体重を合わせても、筋力や、パンチの硬さや強さが女子と男子は違うので、ヒヤっとすることもありました」
――そうしたことも経て日本王者になって、今後は東洋太平洋王者、世界王者が見えてきたと思います。
「まずは今のタイトルを1回でも2回でも防衛してからです。そうしてキャリアを積んで、しっかり段階を踏んでから東洋太平洋のタイトルを目指したい。2、3年以内には東洋チャンピオンになりたいです」
――焦らず、ステップアップしていく感じですね。
「慎重にいきたいタイプなので、着実に上げていきたいです。最初の防衛戦は、夏頃にできたら嬉しいですね。ジムを移籍してからの試合はずっと無観客でしたが、最近では、ちょっとずつお客さんが入れるようになってきました。次の試合がある時の状況がどうなっているかはわかりませんが、できたら満員のお客さんの中で試合がしたいですね」
色モノではなく本物。手にしたベルトはその証だ。ボクシング女子日本ミニマム級王者・鈴木なな子は、プロボクサーとしてのプライドと覚悟を胸に、自らが描いた未来予想図を叶えていく。
【プロフィール】
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(取材協力:三迫ボクシングジム)