野球界で「なぜ岩手から怪物が続けて出てくるのか」という議論がSNSなどで話題だ。

 高卒3年目でプロ野球28年ぶりの完全試合を達成したロッテ佐々木朗希投手(20=大船渡)は陸前高田市出身。メジャーで21年MVP(ア・リーグ)を獲得した二刀流のエンゼルス大谷翔平投手(27=花巻東)は奥州市出身。岩手で生まれ、岩手で育った2人に、日本だけでなく海外メディアも熱い関心を寄せる。

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 佐々木の完全試合を特集した英紙ガーディアンは「同じ岩手県出身の大谷に続くのか」の見出しで将来的なメジャー移籍に言及。米ヤフースポーツも「日本のライジングスター」と佐々木が岩手で過ごしたルーツなどを探っている。

 大谷、佐々木の共通点は190センチを超える長身。長い手足は、160キロ超の剛球を投げるのに絶対的に有利だ。総務省の調査(16年)によると、岩手は「早起き」日本一。平均起床時刻6時17分は全国1位で、睡眠時間7時間54分も4位。「大きく育てたいと思って、小さいころから夜9時には部屋を暗くして早く寝かせていた」と話すのは佐々木の母陽子さん。「寝る子は育つ」というが、早寝早起きの習慣がビッグサイズの成長に影響した可能性はありそうだ。

 ほかにも、岩手の全国トップが中学生の運動部参加率で98.6%(17年スポーツ庁)。岩手ではもともと野球熱が高く、まず野球から始めるという男子は多い。大谷は「関西や関東では、厳しい指導者のもとで、高校野球の強豪校みたいなものが少年野球のころからある。でも個人的には子どものころに楽しく、のんびり野球ができたことが良かった。楽しくできたおかげで野球を嫌いになることは1回もなかった」と語っている。

 好きこそものの上手なれ。好きで始めた野球を嫌いになってやめてしまう要因は、指導者によるところが大きい。岩手では、こどものころは勝利至上主義を子どもに押しつけない指導が主流。楽しさ優先で野球を続ける環境があれば、たとえば長身が有利な他のスポーツに流れる可能性は低くなり、結果的に豊かな素質が伸び伸びと開花しやすいといえる。


 それでも岩手から怪物が多発する理由とはいえない。県野球関係者の話を総合すると、「菊池雄星(30=ブルージェイズ)の存在が、岩手県野球界のすべてを変えた。甲子園優勝が遠い夢物語でなく現実的な目標になり、子どもたちは自信を持ち、指導者が変わるきっかけになった」という。

 菊池も岩手の盛岡市出身で、大谷の3つ年上の高校先輩にあたる。花巻東時代のエース菊池は2009年春のセンバツで準優勝、夏の選手権で4強入りを果たした。全国で1勝できればいいほうだった岩手県代表の常識をくつがえす活躍ぶりで、県民は熱狂。「岩手のために」「岩手でもできる」と菊池が繰り返すメッセージには、大きな発信力があった。

 一方、菊池が甲子園の連投で故障したことが、指導者の意識改革につながったという。ケガをせず技術を向上させるために勉強し、指導者同士で連携し、小中高やリトルシニアリーグとも情報共有し合っている。大船渡の国保陽平監督が、成長通に悩む佐々木について、大谷を育てた花巻東・佐々木洋監督にアドバイスを求めるなど、敵味方の垣根を越えて、金の卵を大事に育てる土壌がある。

 菊池との出会いから多くを学んだという花巻東・佐々木監督は「岩手にはもともと才能のある選手がいたけど、うもれていた。逆にいえば、指導によって才能がつぶされてきた。指導者の意識が変わり、才能を伸ばす指導が増えてきたんだと思います」。

 菊池が甲子園、プロで活躍して道を切り開き、大谷、佐々木が続いた。さらに花巻東には1年生で50本塁打以上を放った佐々木監督の長男・鱗太郎内野手(2年)が「新怪物」候補として控えている。指導者がレベルアップし、育成段階から高校まで、無理せず、楽しく、自ら考えて野球に取り組める環境こそが、スペシャルな才能が岩手で次々と開花する理由なのかもしれない。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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