J1リーグでいま最も目を引くチームは京都サンガではないだろうか。元気みなぎるサッカー、高い位置からプレスをかける勇まし…
J1リーグでいま最も目を引くチームは京都サンガではないだろうか。元気みなぎるサッカー、高い位置からプレスをかける勇ましいサッカーで、今季の昇格チームながら現在5位と奮闘している。前節は、同じように開幕から好調を維持していた柏レイソルに2-0と完勝。ダークホースに名乗りを挙げた格好だ。
昇格チームが高い位置からプレスをかける攻撃的なサッカーで成功した例として想起するのが、2002-03シーズンのセリエAで5位という成績を収めたキエーボ・ベローナだ。チームを率いていたルイジ・デルネーリ監督に当時、話を聞けばこう答えたものだ。
「セリエBで戦っていた選手にとって、セリエAは憧れの舞台であるが、同時に、自分のプレーが通用するだろうかと不安を抱えているものだ。そうした後ろ向きになりがちな精神を少しでも前方向に持っていこうとした時、後ろで守るサッカーは適さない。不安を解消させるためには、自ら打って出るプレッシングこそが最適な戦術になる」
京都サンガのJ1復帰は12シーズンぶりだ。選手とクラブは別物とはいえ、3シーズンぶりに復帰したジュビロ磐田より、不安要素ははるかに多かったはずだ。それがいま全く表面化していない状態にある。なぜだろうかとその理由を考えた時、状況が重なる当時のキエーボの監督の言葉が脳裏に蘇ったというわけだ。
その、ボールを一気呵成に奪いにいくサッカーには、荒々しささえ覚えるほどだが、それは先頭を牽引する、切り込み隊長役を務める選手と深い関係にある。

今季ここまで7得点で得点ランキング首位のピーター・ウタカ(京都サンガ)
ピーター・ウタカがJリーグにやってきたのは2015年。最初に所属したチームは清水エスパルスだった。当時すでに30歳を超えていた。元ナイジェリア代表選手の肩書きが目に止まったが、峠を過ぎた選手なのかと思っていた。
その昔、1990年イタリアW杯を沸かせたロジェ・ミラを想起させる。40歳の選手が4ゴールを挙げるなど、実年齢を怪しみたくなる活躍をしたカメルーン代表のストライカーの姿が、現在38歳のウタカと重なって見えるのだ。
今季9試合にほぼフル出場
2016年に移籍したサンフレッチェ広島で得点王に輝いたものの、翌2017年はFC東京で8ゴール。翌年、日本を去り、デンマークのクラブチームに移籍したのも頷ける結果だった。しかし2018年、34歳になったウタカはシーズン半ばに再来日を果たす。J2徳島ヴォルティスでは19試合で6ゴールと、あまり話題にならなかったが、翌2019年、J2ヴァンフォーレ甲府に移籍すると、20ゴールを挙げ、得点ランクで4位に入る活躍を見せた。
そしてその翌2020年、京都に移ると22ゴールを挙げ得点王に輝く。昨季も同2位となる21ゴールを挙げ、文字通りチームをJ1昇格に導く活躍を見せた。
38歳で迎えた今季は、9試合を消化して7ゴールを量産している。得点王争いで、2位の鈴木雄斗(ジュビロ磐田)に2ゴール差をつけ、堂々首位を走る。さらに驚かされるのは出場時間だ。途中交代したのは湘南ベルマーレ戦1試合のみ。それも後半44分という、事実上の時間稼ぎの交代だった。選手交代5人制で行なわれるリーグで、38歳のアタッカーが9試合で通算809分も出場しているチームは、おそらく世界広しといえど京都だけだろう。
とにかく圧倒的なのだ。柏戦を見て連想したのは、一昨季まで3シーズン、柏に在籍したマイケル・オルンガだ。J1に復帰した2020年、32試合に出場し28ゴールを叩き出した怪物ストライカーと、現在のウタカはイメージが重なる。オルンガ同様、他の選手の追随を許さない断トツのすごみに満ちている。
ヘビー級のボクサーを彷彿とさせる、前方の障害物をなぎ倒していく馬力、パンチ力。左右両足から繰り出される振りの速いシュートは、まさにボクサーの強烈なパンチのようだ。ドリブルもうまいし、シュートもうまい。ゴール前の混戦でも強さを発揮する。動体視力に優れているのだろう。反応が抜群に速いのだ。回転力、反転力といった身のこなしもスムーズだ。抜群の決定力を誇る。
オルンガとの違いは上背だ。193センチの長身だったオルンガに対し、ウタカは179センチと日本人選手的だ。だが、ずんぐりむっくりに見えるほど、厚い胸板をしている。日本人ではまず見かけない体型だ。ヘアバンドを巻いたその独特な風貌と相まって、敵の守備者が迂闊に近づけない、威嚇するような雰囲気を発露させている。
アシスト役に回る賢さも
柏戦では2点目のダメ押し点をゲットした。右からMF川﨑颯太の折り返しをGKが弾くや、即詰めるアイスホッケー選手ばりの動体視力及びポジショニングで奪ったゴールだった。ウタカらしいゴールと言えるが、より圧巻だったのは、その前の試合、対サガン鳥栖戦で奪った3点目のゴールだ。
ウタカが、必死に食らいつく相手CB原田亘とGK朴一圭をキックフェイントで切り返すと、2人はずっこけるように大きく転倒。楽々とゴールを奪う姿に、そのすごみは凝縮されていた。
12シーズンぶりにJ1を戦う京都にとって、これほど頼もしい存在はない。心配は彼にケガをされることだが、ケガをしそうもない安心感も備えている。プレーに万事、余裕があるので、動きに無理がない。強引のようでいて、アシスト役に回る賢さもある。外国人選手にありがちな我の強さもない。
さらにはプレッシングにも貢献する。追われた相手選手はついビビる。蛇に睨まれたカエルのように足をすくませる。先述の鳥栖のCB、原田がそんな感じだった。
ウタカが健在である限り、京都の失速はないと見る。勇気づけられることで、その攻撃的な姿勢はさらに活発化しそうだ。ピーター・ウタカ率いる京都。今季のJ1の台風の目となりそうである。