これを「2部リーグ」と言ってしまっていいのだろうか......。 4月16日、大田スタジアムでの東都大学野球2部リーグの3試合を見て、そんなうなり声をあげてしまった。東都2部にひしめくドラフト候補 東都大学リーグは今季から「プレユニ22(…

 これを「2部リーグ」と言ってしまっていいのだろうか......。

 4月16日、大田スタジアムでの東都大学野球2部リーグの3試合を見て、そんなうなり声をあげてしまった。

東都2部にひしめくドラフト候補

 東都大学リーグは今季から「プレユニ22(プレミアムユニバーシティズ22)」を新愛称にすると発表している。22の加盟校が切磋琢磨する思いが新愛称に込められているが、いまだに「戦国東都」のほうが通りはいいだろう。

 1部リーグは國學院大、駒澤大、青山学院大、亜細亜大、日本大、中央大の6校がしのぎを削り、現在2部に在籍するのは拓殖大、専修大、東洋大、立正大、国士舘大、東京農業大の6校。昨春まで1部リーグで戦っていた立正大の奈良間大己(常葉菊川)は、その壮絶さをこう語る。

「1部と2部の差があまりなくて、簡単には勝てない手ごわい相手が揃っていると感じます」

 2009年秋のリーグ戦を制し、明治神宮大会も優勝して日本一に輝いた立正大が、翌2010年春のリーグ戦では最下位になり、入れ替え戦も敗れて2部に転落する出来事もあった。逆に言えば春は2部所属でも、秋には大学日本一を狙える。それが生き馬の目を抜く東都の世界なのだ。

 今季はとくに2部にドラフト候補がひしめいている。前出の奈良間は自身の肉体とバットをうまく使いこなせる、華のある遊撃手。投手では力感のない投球フォームと正確なコントロールが光る専修大の菊地吏玖(札幌大谷)。最速156キロの剛速球を武器にする東洋大の羽田野温生(汎愛)。下級生を含めれば、どの試合にもドラフト候補が見つかる豪華さなのだ。

圧巻の豪華投手リレー

 なかでも2部リーグの目玉といえる存在が、東洋大の3年生左腕・細野晴希(東亜学園)だ。視察に訪れたベテランスカウトの山田正雄スカウト顧問(日本ハム)は、目を丸くしてこう語った。

「彼はすごいねぇ。まだ3年生でしょう? 今年のドラフトでも間違いなく上位候補に入るでしょうね」



東洋大の3年生左腕・細野晴希

 最速152キロの空振りを奪える快速球に、スライダー、カットボール、スプリットを武器にする。4月16日の初戦(東京農業大戦)では4回二死までノーヒットピッチングを続けたものの、一塁ベースにゴロが当たる不運で初安打を許した。結局7回を投げ、13奪三振と圧巻の内容だった。

 今年に入って、細野のマウンド姿は明らかに変わった。投球フォームを大きくモデルチェンジしたのだ。

 昨年までの細野は右足を勢いつけて高々と蹴り上げる、ダイナミックなフォームだった。だが、今春の細野は静かに右足を上げ、力感のないフォームになっていた。その理由を尋ねると、細野はこう答えた。

「足を高く上げると疲れるので。リーグ戦で長いイニングを投げたり、連投したりすることを考えると厳しくなるなと。あとは少ない力でも球速が出るようになったので、この形になりました」

 細野の言う「少ない力でも球速が出るようになった」は大きなポイントだろう。打者からすれば、涼しげに左腕が振られたと思ったら、152キロものスピードボールが迫ってくるのだ。しかも、捕手に向かって加速するような体感の、上質のストレートである。変化球の精度も高く、その落ち着いたマウンド姿は「プロ即戦力」というより、すでにプロで何年も実績を挙げた投手のような貫禄がある。

 この日は細野が7回まで0点に封じた後、2年生右腕の一條力真(常総学院)を挟み、羽田野で締めくくる豪華投手リレーだった。一條も高校時代にプロ志望届を出していれば、上位指名濃厚だった好素材だ。189センチの高身長からしなやかに放たれるストレートは最速151キロをマーク。羽田野は「コースに投げ切れず、力を出し切れなかった」と本調子ではなかったものの、それでも最速152キロを計測。2部リーグというより、大学日本代表クラスの陣容だった。

東都リーグ3年生の逸材たち

 東洋大の杉本泰彦監督にあらためて3投手の可能性について聞くと、こんな答えが返ってきた。

「ポテンシャルはすごいものを持っています。我々は才能の世界で生きていますが、彼らはそこで生き抜く才能は持っています。あとはその才能をもっともっと高めていって、突き抜けていけるかだなと思います」

 細野は高卒3年目。つまりは佐々木朗希(ロッテ)、奥川恭伸(ヤクルト)、宮城大弥(オリックス)らと同学年になる。佐々木が最速163キロを計測したU18高校日本代表候補研修合宿のメンバーに、細野も選ばれていた(春季大会期間中のため合宿は不参加)。

 プロで完全試合をやってのけてしまうような同級生の存在は、細野にとって刺激になるのか。それとも、別世界での出来事なのか。そう尋ねると、細野は質問に被せるように「いや、刺激になっています」と答えた。

「レベルが高いなかで、ああやって結果を残すのはすごいと思います」

 人材の宝庫である東都大学リーグには、細野以外にも楽しみな3年生が多い。1部を含めれば青山学院大の常廣羽也斗(投手/大分舞鶴)、中央大の西舘勇陽(投手/花巻東)、駒澤大の岩本皓多(捕手/関西)、亜細亜大の天井一輝(外野手/広島商)、国士舘大の重吉翼(投手/日本航空石川)といった好素材がひしめく。

 1部の全試合は東都大学野球連盟が運営する「プレユニ.TV」でも配信されるが、2部の試合は野球場へ行かなければ見られない。

 1部のチームにとっても、2部の動静は脅威でしかないはずだ。1部で戦う監督の多くは、優勝を目指す前に「入れ替え戦回避」を念頭に戦っている。一度でも2部に落ちれば、簡単に浮上できない恐ろしさを誰もが知っているからだ。

 シーズン終了後の6月には、東都大学リーグの1〜4部にまたがる入れ替え戦が行なわれる。生き残りをかけた熱い戦いは、まだ始まったばかりだ。