昇格1年目の京都サンガが、今季J1で台風の目になろうとしている。 J1第9節、京都は柏レイソルを2-0で下し、今季初の…

 昇格1年目の京都サンガが、今季J1で台風の目になろうとしている。

 J1第9節、京都は柏レイソルを2-0で下し、今季初のリーグ戦2連勝。直近4試合負けなし(3勝1分け)の好調ぶりで、順位も5位まで上げてきた。



攻守において、前へ前へと仕掛けていく京都サンガ

 京都の武器は、何といってもハイプレス。高い位置から果敢にプレッシングを仕掛け、奪ったボールは素早く前に運んで相手ゴールへと迫る。

 攻撃でも、守備でも、ファーストチョイスは常に前。相手に息つく暇を与えない。

 ピッチ上で躍動する京都の選手たちからは、あたかもバーチャルCGのごとく、大きな矢印が突き出ているのが見えるかのようだ。

 この日の柏戦でも、継ぎ目なく攻守を繰り返すハイテンポなゲーム展開に相手を巻き込み、柏の選手たちに落ちついてサッカーをさせなかった。

 象徴的な存在が、4-3-3のアンカーを務めるMF川﨑颯太だ。

 アンカーとはもともと、船の錨を意味する言葉だが、川﨑の場合、決してピッチ中央にとどまっていたりはしない。

 守備では、前線の選手と連動して高い位置からプレスを仕掛け、攻撃では、敵陣深くまで進入し、時にフィニッシュにも絡む。

 柏戦では後半に足がつり、77分で途中交代となったが、試合後、ロボットのような歩き方でゴール裏のサポーターの前に歩み寄る姿は、自らの任務を全うしたことの証だった。

 いけるところまでいく、と言わんばかりにハイプレスを仕掛けるため、足がつり、交代を余儀なくされる選手は川﨑だけではなかったが、それもまた、サンガらしさということになるのだろう。

 試合終盤、DFを増やして5-3-2へとシフトチェンジしてもなお、前線からのプレスが弱まることはなかった。

 事実、2点を追う柏は選手交代で活性化を図り、反撃を試みようとはしていたが、チャンスを作るどころか、思うように前進することさえできていない。

 先制ゴールを決めたDF荻原拓也が、誇らしげに語る。

「90分を通して疲れたなかでも集中力をきらさず、予測を持ってプレーできたと思う」

 だが、アグレッシブなプレスで相手を封じ込める京都も、逆説的に言うならば、その成否のカギを握っているのは、"最も守備をしない選手"なのではないだろうか。

 すなわち、FWピーター・ウタカである。

 センターフォワードを務めるウタカは、当然ピッチ上の最前線に立っている。京都はハイプレスを武器にしているチームなのだから、ポジション的にはその先陣を切る役割を担っていても不思議はないが、ウタカの場合、そうではない。

 もちろん、まったく守備をしないわけではない。だが、他の選手のハードワークと比較すれば、実質免除されていると言ってもいいだろう。

 ウタカは今季リーグ戦全9試合に先発出場し、うち8試合はフル出場。残る1試合にしても89分の交代だから、事実上、全試合にフル出場している。ハイプレスが売りのチームのセンターフォワードとしては、ほとんどありえない出場時間である。これこそが、守備を免除されていることの確かな証拠だろう。

 では、ウタカは何をしているのか。ファーストディフェンダーとして守備に奔走するのではなく、最低限のタスクだけをこなしたあとは、攻撃に切り替わった瞬間に備えるのである。

 つまり、常にピッチ上をふわふわと漂い、味方がボールを奪った瞬間、ゴールに直結する動き出しを見せるのだ。

 それが表れていたのは、前半8分のシーンである。

 MF武田将平が高い位置で相手のパスをインターセプトするや、ウタカはすぐさま半身の姿勢で相手DFとの間に距離をとり、パスコースを作る。

 その動きを見逃さなかった武田がすぐにパスを送ると、ウタカは独力でシュートまで持ち込んでみせた。

 結果的にシュートは相手DFにブロックされたものの、鮮やかな速攻だった。

 試合開始早々にこれを見せられてしまうと、柏の選手たちは大胆、かつ主体的にポジションをとって、ビルドアップすることが難しくなる。

 柏のキャプテン、DF古賀太陽は「ウタカ選手に対するリスク管理をもっとやらないといけない。そこでうまく起点を作られた」と話していたが、言い方を変えれば、ウタカのマークを気にするあまり、柏のDFはビルドアップ時のプレーが小さくなり、結果的に悪いボールの失い方を増やした、とも言えるだろう。

 ウタカの存在自体が守備に貢献している。そう言ってもいいのかもしれない。

 柏の選手にしてみれば、ただでさえハイプレスを仕掛けられているうえ、常にウタカの脅威にさらされたのでは、余裕を失うのも無理はなかった。「ボールの失い方が悪く、相手に前向きにボールを与えてしまった」とは、古賀の弁だ。

 この試合で貴重な追加点となる2点目のゴールを決めたウタカは、今季ゴール数を7に伸ばし、J1得点ランクのトップに立つ。チャンスメイクだけにとどまらず、J1屈指の決定力も備えているのだから、多少守備には目をつぶってでも、この武器を活用しない手はないだろう。

 MF福岡慎平は言う。

「(ウタカは)頼もしすぎる。本当に38歳なのかと疑うぐらい走ってくれるし、決めてくれる。本当にチームにとって頼りになるFWです」

 優れたストライカーの能力を持て余すことなく生かしつつ、チームの武器であるハイプレスの強度も落とさない。上り調子にある京都は、その"いい塩梅"を見つけ出したように見える。

 裏を返せば、ウタカの脅威を背中で感じながらも、いかにハイプレスをかいくぐって攻撃を組み立てるか――。

 今の京都は、対戦相手にかなり難しい課題を突きつけている。