チャンピオンズリーグ(CL)準々決勝第2戦、アトレティコ・マドリード対マンチェスター・シティの一戦はゴールレスドローで…
チャンピオンズリーグ(CL)準々決勝第2戦、アトレティコ・マドリード対マンチェスター・シティの一戦はゴールレスドローで終了。特に後半は苦戦を強いられたが、最終的にはホームでの第1戦を1−0で勝利していたシティに軍配が上がった。
これにより、シティは通算3度目となる準決勝進出が決定。チームを率いるペップ・グアルディオラにとっては、あのジョゼ・モウリーニョ(現ローマ監督)を追い抜き、監督としてCL史上最多となる「9度目のベスト4進出」の偉業となった。

名将グアルディオラはシティを初のCL優勝に導けるか
「第1戦とは異なる試合になるはずだ。(アトレティコは)よりアグレッシブになり、きっと我々が問題を抱える時間があるだろう。それでも我々は、我々の試合をしなければならない。これまでも、そうだったようにね」
これは、アトレティコとの第2戦の前日会見におけるペップの発言だ。
どんな相手に対してもボールの保持にこだわり、攻撃的スタイルを貫きながらゴールと勝利を目指すのがペップのスタイル。その揺るぎなきフィロソフィーがあるからこそ、近代サッカーの戦術を大きく変えることができたのだろう。
そういう意味で、ペップこそ、究極のロマンチストと言えるかもしれない。
しかしその一方で、理想を追求しながらも、ペップがこれまで数々のタイトルに導いてきたのも事実。バルセロナ時代は、CL=2回、国内リーグ=3回、国内カップ=2回。バイエルン時代は、国内リーグ=3回、国内カップ=2回。そしてシティでも、国内リーグ=2回、国内カップ=1回、国内リーグカップ=4回。これらのタイトルは、ペップが理想と現実を両立させてきた証であり、勲章でもある。
ただし、近年のCLにおいては、タイトル獲得に苦労している部分は否めない。
初めて監督としてチームを率いたバルセロナ時代こそ、初年度に優勝、2年目にベスト4、3年目に優勝、4年目にベスト4と、華々しいキャリアのスタートを切った。だが、バイエルンを率いた3シーズンは、いずれもベスト4止まり。
CLとの相性が一転して悪化
もちろん、監督キャリアを歩み始めてから7回連続でベスト4以上の成績を収めたこと自体は異次元だ。しかし、2016--17シーズンにシティの監督に就任してからのペップは、CLの舞台で"勝負弱さ"を見せるようにもなっていた。
まず、シティ初年度の2016--17シーズンは、ラウンド16で伏兵モナコと対戦。ホームでの第1戦を5−3で勝利しながら、アウェーの第2戦を1−3で落としてしまい、アウェーゴールの差でまさかの敗退。2試合連続ゴールを決めた神童キリアン・エムバペのセンセーショナルなCLデビューの引き立て役となってしまった。
2年目の2017--18シーズンは、一歩前進してベスト8に進出。しかし、就任3年目のユルゲン・クロップが率いるリバプールに対し、2試合合計1−5(第1戦0−3、第2戦1−2)というスコアで完敗。苦手としていたクロップの狙いどおりの展開で、無残に散った。
続く2018--19シーズンにペップの前に立ちはだかったのは、準々決勝で対戦した同じプレミア勢のトッテナムの指揮官マウリシオ・ポチェッティーノ(現パリ・サンジェルマン監督)だった。
アウェーでの第1戦を0−1で負けたあとのホームでの第2戦は、一転して序盤から激しい打ち合いに。シティは後半59分のセルヒオ・アグエロのゴールで4−2とリードしたにもかかわらず、73分に途中出場のフェルナンド・ジョレンテに決められて4−3となり、2試合で合計4−4。アウェーゴールの差でトッテナムに上回られた。
しかも、試合終了間際にはラヒーム・スターリングによるゴールで劇的な勝利を収めたかに見えたシティだったが、VARによってオフサイドが判明。壮絶な戦いは結局、ペップとCLの相性悪化を示す象徴的試合にも見えた。
さらに2019--20シーズンは、コロナ禍で開催された中立地リスボンでの一発勝負で、準々決勝に進出したシティはリヨンと対戦。下馬評では上回りながら、シティ対策として3バックを導入したリュディ・ガルシア監督の術中にハマり、カウンターにやられて1−3で敗退した。
つまり、それまでベスト4以上しか経験していなかったペップが、シティでは一転、4シーズン連続でベスト4に手が届かない状況が続いてしまったのである。
ペップのペップたるゆえん
ようやくその負のサイクルを抜け出せたのが、就任5年目の昨シーズン。ボルシアMG、ボルシア・ドルトムントを破ってベスト4進出を果たすと、準決勝ではパリ・サンジェルマンを撃破する。
シティにとってクラブ史上初となるCL決勝戦の相手は、シーズン途中からトーマス・トゥヘルが指揮を執るチェルシー。下馬評ではペップのシティが優勢と見られていた。
ところが、前半42分にチェルシーのカイ・ハフェルツが決めたゴールが決勝点となり、せっかくのCL制覇のチャンスを逃すことに。そして、その試合で議論の的となったのは、中盤にフェルナンジーニョやロドリを起用せず、イルカイ・ギュンドアン、ベルナルド・シルバ、フィル・フォーデン、そしてトップ下にケヴィン・デ・ブライネを配置するという超攻撃的布陣で大一番に臨んだペップの采配だった。
「勝つためにクオリティのある選手を揃える決断をした」とは、敗軍の将ペップの弁明だ。
たしかに、そのハイリスクな攻撃的姿勢が敗因のひとつなのかもしれない。しかし、一発勝負の決勝戦でも自身の哲学を貫き通すあたりが、ペップのペップたるゆえんでもある。
究極のロマンチストにとって、自身の哲学を曲げてまでタイトルを手にしても意味はない。アトレティコ戦のコメントを深読みするならば、今回も同じ姿勢でCLのタイトルを目指す構えと見て間違いなさそうだ。
シティが準決勝で対戦するレアル・マドリードを率いるのは、ボブ・ペイズリー(リバプール)、ジヌディーン・ジダン(レアル・マドリード)と同様、CL史上最多となる優勝3回を誇る名将カルロ・アンチェロッティだ(チャンピオンズカップ時代含む)。
しかもレアル・マドリードには、パリ・サンジェルマン、そしてチェルシーと、ホームのサンティアゴ・ベルナベウで2度も劇的な勝利を収めて勝ち上がってきた勢いもある。おそらく準決勝も、シティにとってはマドリードで開催される第2戦が鬼門となるだろう。
果たして、就任6年目のペップはシティをCL初優勝に導くことができるか。CLという最も難しい舞台で理想と現実を両立させるためには、あとふたつの壁を乗り越える必要がある。