10年間、北海道日本ハムファイターズを指揮した栗山英樹が侍ジャパンの監督に!来春開催予定のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)で優勝が期待されるなか、栗山新監督はどんな選手を選び、どのようなチームを作ろうとしているのか? テレビ朝…

 10年間、北海道日本ハムファイターズを指揮した栗山英樹が侍ジャパンの監督に!
来春開催予定のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)で優勝が期待されるなか、栗山新監督はどんな選手を選び、どのようなチームを作ろうとしているのか?

 テレビ朝日の人気スポーツ番組『GET SPORTS』の書籍化にあたり、番組のメインMCとして20年以上、栗山を間近で見てきた南原清隆が直撃した!



侍ジャパンの栗山英樹監督(左)と南原清隆さん

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今ならもう一度、全力で野球ができる

南原 10年間、北海道日本ハムファイターズの監督、おつかれさまでした。そして、侍ジャパンの監督就任、おめでとうございます! と言っていいんでしょうか。「大変ですね」と言ったほうがいいんでしょうか。

栗山 本当に、大変ですね(笑)。昨シーズンの最終戦まで、チームのために、選手のために野球をやり続けるんだと思っていて、日本ハムの監督をやめたあとのことはまったく考えていませんでした。しばらくして、侍ジャパンの話が動き出して。

南原 受けるかどうかの決断を下すまで、時間はありませんでしたよね。責任の重い仕事を引き受けると決めるまで、どのような心の動きがあったんですか。

栗山 日本ハムの監督を引き受ける時と一緒で、「僕でいいんですか」という話をしました。その時に思ったのは、もし監督をやめて時間が経っていたらお受けできなかっただろう、ということでした(11月1日に日本ハムの監督退任会見、12月2日に侍ジャパン監督就任会見)。

南原 どうしてですか?

栗山 監督という職業があまりにもしんどすぎて......。一度離れてしまうと、もう二度と戻れないだろうと思ったんです。

南原 「栗さん、休んだほうがいいよ」という声もあったと思いますが。

栗山 みなさんにそう言われました(笑)。

南原 自分に問いかけて「いける!」となったということですか。

栗山 「いける!」というよりも、野球に対して、あまりにも申し訳ないというか、情けないというか......そういう思いがありました。日本ハムの監督になった初めの5年間(2012年にリーグ優勝、2016年に日本一)のことは完全に頭の中から消えているんです。あとの5年間(2018年が3位、2017年と2019年以降は5位)はダメダメな監督として過ごしてしまった。このまま終わってもいいのか......悶々とした思いはありました。

南原 なるほど。

栗山 悔しさを晴らすチャンスを野球が与えてくれたのかもしれない。そう考えて、「僕でいいんですか」という思いもありますが、「もう一回野球ができるのならやるべきだ!」となりました。今ならもう一度、全力で野球ができる。



侍ジャパン・栗山監督

南原 日本ハムの監督時代は、ある意味"フィールドディレクター"でした。球団側が用意した選手の能力を最大限に引き出して、チームを勝利に導くのが仕事だったと思いますが、今回はちょっと違って、選手を選ぶ立場ですよね。

栗山 監督時代、チームが苦しい時には記者たちと、「ダルビッシュ有、田中将大、大谷翔平、菊池雄星、前田健太というローテーションを組めたらなぁ」なんて話をしてたんです。今回は、それができる可能性があるわけじゃないですか。でも、選ぶほうになったら、そんなに簡単なものじゃないことがよくわかりました。

南原 「いいピッチャーを順番に起用すればいいじゃん」と思いますが、そうじゃないんですか?

栗山 本当に大変なんです。だけど、ナンチャンが言ったみたいな感覚を持たないといけないなと思いますね。責任ばかりが大きくてなりすぎて。「テレビゲームで勝ってやろう」というくらいの遊び心がないと、苦しすぎますね。

勝てるキャッチャーは誰か?

栗山 もしナンチャンが侍ジャパンの監督なら、キャッチャーは誰にしますか。



ウッチャンナンチャンの南原清隆さん

南原 国際試合の経験も豊富なので、ソフトバンクの甲斐拓也捕手でしょうか。

栗山 日本ハムの監督時代、甲斐捕手がマスクをかぶっている時は、攻撃のサインを変えることもありました。彼はキャッチングもうまいし肩が強い。ランナーを走らせたい場面でも、盗塁やヒットエンドランのサインは出しにくい。

 相手にそこまで考えさせるキャッチャーの存在は貴重だし、大事なんです。パ・リーグで昨年まで戦っていたのでだいたいのキャッチャーのことはわかるんですが、セ・リーグにもいいキャッチャーがたくさんいますよね。

南原 昨年、日本一になったヤクルトには中村悠平選手がいますね。

栗山 先輩の古田敦也さんの教えもあって、成長しましたね。中日の木下拓哉選手も素材がすばらしくて、西武の森友哉選手のように打力もある。阪神の梅野隆太郎選手もいますね。

南原 ほう。

栗山 得点を取らないと勝てないという展開になったら、打力のあるキャッチャーに「頼む!」となります。一度、先入観を消して「勝てるキャッチャーは誰か?」という観点で探していこうと思っています。

 キャッチャーだけは実際に一緒に戦ってみて、しぐさとか会話の仕方から出るものがあって、それを見て「この選手と心中したい」と思えるかどうか。こればかりは試合を戦ってみないとわからない。だから、3月に行なう予定だった強化試合が中止になったのは本当に痛いです。

WBCでは感情を捨てる

栗山 WBCのような短期決戦は、リーグ戦とはまったく違う戦いだと思っています。「別ものなんだ」と割り切らないといけない。決断が遅れちゃいけない。

南原 遅れちゃいけない?

栗山 「この選手なら」と思って使い続けるんだったらいいけど、「難しい」と感じた時は思い切って代えないと。「あの時に決断しとけばよかった」と後悔しないように、これまで日本シリーズのような短期決戦ではそうやって戦ってきました。一番大事なことは、短期決戦で勝ちやすい形を整えることです。

南原 なるほど。

栗山 「情に流されるなよ、引っ張られるなよ」と自分に言い聞かせています。

南原 栗さんは情が深いですからね。

栗山 情が深いというか、「おまえならやってくれる!」と選手を信じて野球をやってきたんで。「おまえは苦しいだろうけど、俺は信じてるぞ」というメッセージを送りたい。「初めに信じた以上は最後まで」とこれまでは思ってきました。「それで負けたらしょうがない」というのが僕の個人的な感情です。

南原 WBCでは感情を捨てると。

栗山 日の丸を背負っている以上、代表である以上、勝つためにやる。「その決断ができないんだったら、監督をやめなさい」と僕は思っています。

南原 侍ジャパンの監督就任会見で「思い切ったことをやります」と栗山監督がおっしゃいました。具体的には、どこをどう思い切るんですか。

栗山 たとえば、ダルビッシュ投手(サンディエゴ・パドレス)が先発したとします。それで状態が悪かった時に、1回途中で降板させるという判断ができるかどうか。勝つために、このピッチャーよりも別のピッチャーを、という判断をしたんだったら、そうしなければいけない。それが優しさだし、誠意だと思う。毎日、そんなイメージをしています。

南原 ほう。

栗山 彼だけじゃいないんですが、侍ジャパンには実績のある選手が集まってきます。僕が降板させてはいけないようなピッチャーに「交代」と言えるように、"名前に引っ張られるな"ということ。日本が勝つために必要な決断ならば、僕は思い切ってやります。僕は現役時代にダメな選手だったから、彼らに対するリスペクトは誰よりもあります。今でも憧れがある。でも、監督という仕事はそういうものではないので、正しく判断できるように準備しています。

日本の野球を世界に見せつけてやる!

南原 これまで取材者として、WBCをどのように見ていましたか?

栗山 甲子園を目指すような試合を、プロ野球選手がやるとこうなるんだなと。こんなに緊張するのか、ガチガチになるんだなと。プロ野球でそういう姿を見ることは少なかったので、「これだけ追い込まれるのか」と恐怖のようなものも感じました。

南原 日本ハムの監督時代はアメリカの野球を取り入れてきました。今はどのように考えていますか?

栗山 侍ジャパンの監督は特別ですね。「日本の野球を世界に見せつけてやる! 日本の野球が一番なんだ!」と思っています。準備の仕方、努力の仕方は世界でも負けないんだと。ファイターズの最後の3年間は負け続けて(3年連続5位)、自分に伝えたいのは「勝たないとダメ」ということ。勝たないと自分の思いが相手に伝わらないことを、嫌というほど感じたので。勝つことで日本野球のすばらしさを伝えていきたいと考えています。

南原 最後に、WBCに向けて「こういう野球をやる」というのを教えてください。

栗山 一瞬たりとも、全力を尽くさない時はない。そう自信を持って言えます。選手、コーチもデータ班も、チームすべてがやるべきことをやり尽くす。その瞬間、瞬間を見てほしい。絶対にそうなるようにします。ひとつひとつの積み重ねがあれば、勝つチャンスが巡ってくると信じています。