スポルティーバ足ワザファイル 第5回世界トップレベルのサッカースターたちの華麗なテクニックは、どういうカラクリで繰り出さ…

スポルティーバ足ワザファイル 第5回

世界トップレベルのサッカースターたちの華麗なテクニックは、どういうカラクリで繰り出されているのか。その詳細を明かしていく。今回は、元日本代表の福西崇史氏に、2021-22シーズンに欧州サッカーで見られた数々のテクニックを実演・解説してもらった。

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華麗なワンタッチで相手をかわす、ドルトムントのマルコ・ロイスphoto by Getty Images

【動画】福西崇史実演! ボールタッチの工夫でかわす足ワザ集

ワンタッチで相手をかわすテクニックが重要

 現代サッカーは組織的な守備戦術が進化し、スペースも時間の余裕もどんどん狭く、短くなっています。そうしたなかで、ワンタッチのテクニックで状況を打開し、相手からのプレッシャーをいなすプレーは、より重要なものになっていると思います。

また、1対1の勝負やゴール前、球際の局面で、ワンタッチによって一発で相手を凌駕するシーンは、サッカーの駆け引きにおいて醍醐味のひとつです。

 ワンタッチで相手の逆を取ったり、かわしたりする場合、ポイントとなるのは相手のタイミングをずらすことです。

 相手が寄せてくるタイミング、体重移動のタイミング。そうしたタイミングをこちらがずらせると、はじめてワンタッチで相手を外すことができます。このタイミングをずらせないと、相手の逆を取ろうと思っても反応されたり、ついてこられたりします。どんなに巧みなテクニックでも、その効果は発揮できません。

 相手のタイミングをずらすために大事なのは、状況判断です。

 相手の立ち位置や重心、周辺のスペースなどを把握し、そうした情報を素早くインプットしておく。時間もスペースも限られているからこそ、そこの精度はとても重要になります。

 情報を素早く入れることで、「どこにコントロールして相手の逆を取ろうか」「ボールを守りながら相手をいなそう」など、状況に合わせて相手のタイミングをずらして打開していく、テクニックの判断が下せるわけです。

瞬時の状況判断が伴っている

 今回はワンタッチのテクニックで状況を打開した足ワザを紹介してきます。

 1つ目のエデン・アザールの「足裏ターン」は、足裏でボールを引きながら体重移動で体もスムーズに運び、DFの逆を突いていった非常に難しい足ワザです。

 相手が背後から追いかけてくる状況では、ボールを止めながら、相手とボールの間に自分の体を入れてキープするプレーはよくあると思います。でもアザールはキープするためのタッチではなく、次のプレーでシュートや中の味方にパスができるところへ足裏でボールを引いています。

 ボールを、キープする場所ではなく、相手をかわす場所に置くと、そのあとはどちらがスムーズに体重移動できるかという勝負になります。アザールはそこのキレに自信があるから、あのターンを選択できたのだと思います。

 3つ目の原口元気の「コンパスターン」は、味方のズレたパスを、体を回転させながらコントールし、ワンタッチでうまく次のプレーにつなげた足ワザです。

 味方のパスがズレるのはサッカーではよくあることですが、だからといってそこでコントロールがうまくいかないと相手に詰められてしまう原因になります。原口は、パスはズレたけど、ボールスピードをうまく利用しながらターンにつなげました。

 このワザで難しいのは、そのボールスピードを生かしながら、コントロールする自分の足も振りつつボールタッチしなければいけない点です。その力加減を間違えば、ボールを足元に置くことができません。

 原口は咄嗟の判断のなかで進行方向の状況も把握しながら、ボールスピードを殺さず、絶妙なタッチの力加減でターンしました。体を回転させるコーディネーション能力と、ボールタッチのセンスは見事でした。

 マルコ・ロイスの「股抜き&アウト裏通り」は、瞬間的なプレー判断が連続した、かなり難易度の高い足ワザです。

 まず狭いスペースのなかで、相手が詰めてくるところを突破しなければいけない状況。なおかつ、自身のスピードは殺さず、ボールの勢いは抑えなければいけません。

 それがあった上で1人目を股抜き、2人目を裏通りでかわしていく瞬時の判断をしました。さらにただ抜いていくだけではなく、そのあとGKのタイミングを外しながら、フィニッシュまでスムーズに完結させているスーパープレーです。

 最後のトーマス・ミュラーの「足裏キックフェイント」は、状況をうまく利用した足ワザだと思います。



キックフェイントからの足裏コントロールで、相手のブロックのタイミングをずらす

 最初のボールタッチで、ミュラーはシュートを打つこともできました。しかし、そこでキックフェイントを入れてDFを飛び込ませ、GKの反応のタイミングもずらしています。これでより確実にシュートが打てる状況を作りました。

 一見、トリッキーに見える足ワザも、瞬時の状況判断が伴ったテクニックであることを意識しながら、マネしてもらいたいと思います。

福西崇史
ふくにし・たかし/1976年9月1日生まれ。愛媛県新居浜市出身。新居浜工業高校から95年にジュビロ磐田入り。ボランチのポジションで活躍し、多くのタイトルを獲得。チームの黄金期の主力としてプレーした。その後、FC東京、東京ヴェルディでプレーし、09年に現役引退。J1通算349試合出場、62得点。日本代表では02年日韓W杯、06年ドイツW杯に出場。国際Aマッチ64試合出場、7得点。現在は解説者として活躍中。