今季J2で前評判が最も高く、J1昇格最有力候補と目されていたのは、横浜FCで間違いないだろう。 昨季J1で最下位(20…

 今季J2で前評判が最も高く、J1昇格最有力候補と目されていたのは、横浜FCで間違いないだろう。

 昨季J1で最下位(20位)だった横浜FCは、J2降格にはなったものの、主力の大量流出を回避。J2では頭ひとつ抜けた戦力を擁しているのだから、戦前に高い評価を受けるのも当然だった。

 実際、第9節終了現在、7勝2分けとJ2唯一の無敗で首位に立っており、評判どおりの強さを見せつけている格好だ。

 その一方で、J1昇格の大本命に次ぐ2位につけているのは、少々意外なクラブと言ってもいいのかもしれない。

 東京ヴェルディである。



今季J2で好スタートをきった東京ヴェルディ

 昨季の東京Vは、2019年から指揮を執ってきた永井秀樹監督が3年目を迎え、ボールポゼッション重視の攻撃的なスタイルを結果へとつなげる、実りのシーズンとなるはずだった。

 ところが、シーズン序盤から失点がかさんで勝ち点が伸びず、そんな折に、永井監督のパワハラ疑惑が取り沙汰される。ピッチ内外で落ちつかない1年を過ごすことになった東京Vは、一時はJ3降格が危ぶまれるほどに低迷した。

 結果、3年連続のふた桁順位となる12位に終わり、昇格争いとは無縁のシーズンを送ったとあって、今季開幕を前に東京Vを昇格候補と見る向きは少なかった。

 ところが、新シーズンが幕を開けるや、東京Vは開幕からの8試合を5勝3分けとスタートダッシュに成功。第9節のロアッソ熊本戦で初黒星を喫したものの、依然2位をキープし、J1自動昇格圏内につけている。

 昨季途中から東京Vの指揮を執る堀孝史監督は、強さの理由について「特別なものは何もない」と言い、こう語る。

「トレーニングから選手がモチベーション高く、いい競争をしてくれている。チームの力が一番大きい。これを続けていくのがベースになる。出てくる課題に、選手と一緒にとり組んでいきたい」

 堀監督がチームにもたらしたものを、ひと言で表すなら、攻守のバランスということになるのだろう。

 昨季までの東京Vは、ボールを保持して相手ゴールに迫る攻撃で、確かに得点数は多かった(昨季総得点62は、リーグ5位)。だが、その一方で複数失点を喫する試合も多く、失点の多さが勝ち点を伸ばせない要因となっていた(昨季総失点66は、リーグワースト3位タイ)。

 対照的に、今季の東京Vはというと、必ずしもボールポゼッションで対戦相手を圧倒し続けるわけではない。実際、第8節の大分トリニータ戦のあとに、堀監督は「守備の時間が長くなり、勇気を持って自分たちのボールにすることができなかった」と話している。

 だが、そんな試合も終わってみれば、1-0の勝利。指揮官は「連戦だったし、相手も強い。いつも狙いどおりにはできないが、選手が助け合ってやってくれた」と、粘り強く"守りきった"選手を称えた。

 永井監督時代の"つなぎ倒してゴールを仕留める"サッカーも、それはそれで面白かったが、今季の東京Vは、いわば理想と現実の折り合いをつけながら、自分たちの特長をうまく結果に結びつけているように見える。

「ヴェルディのほうがもっと細かく攻撃してくるのかな、という印象だったが、意外とダイナミックな攻撃できた」

 大分戦後、対戦相手の下平隆宏監督がそんなことを話していたが、言い換えれば、今季の東京Vが長いボールも効果的に混ぜ、より柔軟なサッカーを展開している証拠だろう。

 それでも、東京Vの今季ここまでの総得点は19点。横浜FCをも凌ぐJ2トップの数字は、堀監督が失点のリスクを低減させながらも、従来の攻撃的なスタイル――それがすなわち、東京Vの魅力でもあるのだが――を捨てたわけではないことを表している。

 アンカーを務める、MF山本理仁が語る。

「ヴェルディはボールを持つサッカー。(速く攻撃に)いくところもあれば、いかないところもあるし、相手の隙を見て(攻撃に)いこうっていう感じなので、攻撃の緩急はすごく意識している」

 加えて、20歳の山本をはじめとする、自前のアカデミー(育成組織)出身選手の活躍が2位躍進につながっていることも、東京Vの大きな魅力だ。

 山本と同じく20歳のMF石浦大雅や、21歳のMF森田晃樹らの成長株だけでなく、チーム得点王(4ゴール)の28歳、FW杉本竜士にしても、今季横浜FCからの移籍加入ながら、元をたどればアカデミー育ちの選手である。

 このところ、MF井上潮音(ヴィッセル神戸)、MF藤田譲瑠チマ(横浜F・マリノス)ら、東京Vのアカデミーで育った選手が"個人昇格"を果たすケースが続いていたが、卓越した育成力をそろそろクラブ自体のJ1昇格につなげたいところだ。

 そんな東京Vも、直近の熊本戦で連続無敗試合が8でストップ。しかも、スコアこそ2-3の惜敗だったが、相手のマンツーマンプレスに苦しみ、本来の特長を消されての敗戦だった。

 過去のJリーグを振り返ると、開幕から好調だったチームが、最初の黒星をきっかけに低迷するケースは珍しくない。

 前評判を覆し、ここまで快調に飛ばしてきた東京Vにとっては、だからこそ敗戦直後の次節、レノファ山口戦が非常に重要な意味を持っている。

 前線の中心的役割を担い、今季3ゴールを挙げているFW佐藤凌我は言う。

「リーグ戦は40試合以上あるので、こういう(熊本戦のような)試合も必ずあるが、これをどう生かすかが大事。しっかり反省して、連敗しないように。次は勝ち点3をとれるようにしたい」

 全42試合という長丁場のJ2においては、長く無敗を続けることより、むしろひとつの負けを引きずらないことのほうが大切だ。勢いに乗れば連勝もするが、負け始めたら歯止めが利かないのでは、J1復帰はおぼつかない。

 東京Vは、本当にJ1昇格に足る力を備えているのか。

 2008年以来となる、実に15シーズンぶりのJ1復帰を目指すJリーグ初代王者にとって、次戦は真の実力が試される最初のチェックポイントになりそうだ。