殊勲の秋田・中山拓哉、残り4.2秒からの攻撃で劇的なハーフコートシュート タイムアップまで残り4.2秒。秋田ノーザンハピ…
殊勲の秋田・中山拓哉、残り4.2秒からの攻撃で劇的なハーフコートシュート
タイムアップまで残り4.2秒。秋田ノーザンハピネッツの中山拓哉は、10日に行われたバスケットボールB1リーグ・川崎ブレイブサンダース戦で、2点差を追いかけるラストオフェンスのボールをコートに投じる。ジョーダン・グリンからボールを受けると、素早いドリブル突破で川崎・篠山竜青のマークを振り切り、ハーフラインを越えた場所から、長身のニック・ファジーカスにブロックされる前にフローターシュートを放った。
高い放物線を描いたシュートは、ゲームクロックが「0.0秒」を指すのとほぼ同じタイミングでゴールネットを射抜く。87-86――試合終了のブザーが鳴り響くなか、秋田の選手たちは刹那の間に生まれたヒーローを荒々しいバンプと抱擁で称えた。
前節のサンロッカーズ渋谷戦でコルトン・アイバーソンが負傷し、ゴール下で力を発揮する選手を欠く苦しい状況の秋田は、9日の川崎との第1戦で68-82と大敗。翌10日の第2戦でも序盤から川崎に試合を優位に進められ、第3クォーター終了時点で53-65と12点のビハインドを負ったが、試合前に「まずは自分たちができることをやる」「40分間ディフェンスをアグレッシブにやり続ける」と意思を統一していたチームは、白旗を上げなかった。
第4クォーター開始前のチームの雰囲気について、中山は「点差はついたけど『まだ10分ある』という思いがあったし、やるべきことをやり続けようという雰囲気だった」と述懐。開始2分少々でビハインドが19点に積み重なり、残り3分、12点ビハインドという状況で最後のタイムアウトを使い切っても秋田は屈さない。前田顕蔵ヘッドコーチ(HC)が指示したディフェンスで川崎のターンオーバーを誘発し、アレックス・デイビスのアタックとジョーダン・グリンの連続3ポイントで、残り41秒で76-83と7点差にまで縮めた。
残り5秒のミスから試合を決めるブザービーターへ
ここからの流れは、時間経過とともに紹介しよう。
・残り41秒=デイビス(秋田)、フリースロー(○×)/76-83
(秋田、ここからファールゲームを展開)
・残り32秒=ジョーダン・ヒース(川崎)、フリースロー(××)/76-83
・残り24秒=グリン→古川孝敏(秋田)、3ポイントシュート/79-83
・残り15秒=中山→デイビス(秋田)、3ポイントシュート/82-83
(デイビスのシュートが決まると、川崎ファンが大挙するとどろきアリーナは不穏なざわめきで満たされた)
・残り14秒=藤井祐眞(川崎)、フリースロー(○○)/82-85
・残り5秒=中山(秋田)、レイアップシュート/84-85
(前田HCはこの場面でスリーを指示したが、警戒した川崎にパスの出しどころを阻まれた中山は、自ら2点を決めるプレーを選択。試合後の会見で「あのシュートは僕のミスです」と苦笑していた)
・残り4.2秒=藤井(川崎)、フリースロー(×○)/84-86
秋田のスローインでリスタート。そして、冒頭で紹介した中山のブザービーターで激闘に終止符が打たれた。
この時の状況について、中山は「シューターにスリーを打たせたかったんですけど、ディフェンスがタイトでボールが出せなかったので、ボールを受けた時には『自分がやらなきゃ』という気持ちしかなかったです」とコメント。自分で犯したミスを自ら挽回した中山のこのシュートは、彼にとっては初めての、試合を決めるブザービーターとなった。
あきらめない気持ちが引き寄せた幸運な勝利
試合後の会見で総括を求められた前田HCは、以下のように話した。
「選手たちが最後まであきらめずに戦ってくれた結果だと思います。40分を通して苦しい展開ではあったんですけど、アグレッシブにあきらめずにやってくれたことが勝利につながりました。苦しい状況ではあるんですが、こういったゲームをモノにすることで自信をつけて、成長していかなければなりません。そういった意味でも、今日の勝利は大きかったと思います」
中山のラストショットについて、前田HCは「普通なら入りません」と苦笑。また、1点差に迫ったデイビスの3ポイントは、川崎の佐藤賢次HCいわく、グリンに3ポイントを打たせるための秋田のセットプレーを封じ、最終的にアウトサイドの決定率が低いデイビスに“打たせた”ものだった。
このような点を踏まえると、秋田の勝利は、さまざまな幸運が重なった綱渡りの勝利と表現することもできる。ただ前田HCは、最終的な決定打が運であろうとも、とにかく勝てたことが大きいと言う。
「コルトンがいなくなって、正直チームとしては自信をなくした状況でした。昨日の完敗から今日勝つことができれば、チームは自信を得られるはず……。そんな考えが僕自身の大きなモチベーションになっていましたし、選手たちに自信を与えるためにも、なんとかして自分たちのスタイルを表現した上で勝ちたいと思っていました。あの(中山の)シュートが入ったから勝ちましたが、ずっと苦しい展開だったのは間違いありません。でも10点以上ビハインドがあっても、あきらめずにディフェンスをしていればチャンスがある。それを今日、選手たちが表現してくれました」
4月12日現在、秋田は27勝17敗で東地区5位、ワイルドカード2位の位置につけている。クラブ史上初のプレーオフ進出に向けた道のりには、琉球ゴールデンキングスや千葉ジェッツ、宇都宮ブレックスといった強豪との対戦が控えているが、前田HCは「選手たちのコンディションを上手くマネジメントしながら、自分たちのスタイルを表現して勝ちをできるだけ多く積み重ねたい」とコメント。加えて、日本人選手の得点アップと、最後まであきらめないマインドがキーになると話した。(青木 美帆 /Miho Aoki)