J1リーグ第8節には、注目カードが複数あった。その中でも異色だったのがFC東京と浦和レッズの対戦だ。結果はスコアレスド…

 J1リーグ第8節には、注目カードが複数あった。その中でも異色だったのがFC東京浦和レッズの対戦だ。結果はスコアレスドローだったが、内容は熱戦だった。見どころ満載の一戦となった理由を、サッカージャーナリスト・後藤健生がひも解く。

■選手の新たな魅力を引き出す両監督

 FC東京の右サイドでは互角の攻防が続いた。FC東京は右サイドハーフに永井謙佑、右サイドバックには渡邊凌磨。浦和は左サイドハーフが小泉佳穂で、サイドバックが明本考浩。明本は、オリジナルポジションとしてかなり高い位置を取り、小泉を追い越す動きを再三にわたって見せる。そして、その裏を俊足の永井が狙うという構図である。

 小泉と明本は、昨シーズン、リカルド・ロドリゲス監督が就任すると同時に新たに浦和に加わった選手。いくつものポジションで起用されてきたが、攻撃的な選手である明本をサイドバックに置くというオプションは、サイドバックを使うのが得意のロドリゲス監督が作ってきたチームの一つのストロングポイントともなっている。

 一方、昨年まではワントップか左サイドで起用されることが多かった永井を右で使ったのは、今シーズンからFC東京の監督に就任した同じスペイン人指導者であるアルベル・プッチ監督のアイディアだ。MFの安部柊斗も昨年までは左のインサイドハーフが多かったが、アルベル監督は右で起用している(こうして監督が交代することによって選手の新しい能力が開花するというのも、サッカーの面白さの一つだ)。

 そう、この試合ではあちらこちらにさまざまなマッチアップが存在したのだが、何といっても大きかったのがスペイン出身の両指揮官同士の対抗心だったのではないだろうか。

■両監督に共通するポイント

 スペイン・カタルーニャ州タラゴナ県出身のアルベル・プッチ・オルトネダ監督は1968年生まれで間もなく54歳。一方、アストゥリアス県出身のリカルド・ロドリゲス・スアレス監督は1974年生まれで先日48歳になったばかりと、ほぼ同世代(スペイン人の姓名では第2姓の「オルトネダ」、「スアレス」は母方の姓)。ともに選手歴はほとんどなく、またロドリゲスが短期間ジローナ(当時、セグンダディビシオン)の監督を務めた以外、母国では監督としての経験はほとんどない。そして、日本のJリーグでもともにJ2クラブ(ロドリゲス監督が徳島ヴォルティス、アルベル監督がアルビレックス新潟)で実績を積み重ねて、満を持してJ1クラブの監督に就任。

 経歴としてもかなり共通点を持つ指導者と言っていいだろう。

 さらに、ロドリゲス監督の浦和も、アルベル監督のFC東京も、ともに首都圏のクラブで大規模スタジアムを使用する“ビッグクラブ候補”でありながら、タイトルの数は限られているという共通点も存在する。

 あらゆる意味で、どちらのスペイン人指導者が成功するのか、比較の対象となる存在なのである。当然、本人たちも意識はしていることだろう。

■華やかな時代を彷彿させた外国籍選手たち

 こうした指導者同士の対抗心が反映されたのであろうか、この試合では両チームに所属する外国籍選手たちがとても熱くなっていたのが興味深かった。

 FC東京にはアルベル監督就任以前から在籍するディエゴ・オリヴェイラアダイウトンレアンドロが在籍しており、今シーズンからエンリケ・トレヴィザンが加わってブラジル人選手が4人となった。そして、そこにポーランド代表歴を持つGKのヤクブ・スウォビィックが加入している。

 一方の浦和は、歴史的に多くの国籍の選手が在籍したことがあるクラブだが、ロドリゲス監督が就任した昨シーズンにはキャスパー・ユンカーとアレクサンダー・ショルツと、ともにデンマーク国籍の選手が入団。そして、今シーズンはスウェーデン人のダヴィド・モーベルグ、オランダ人のアレックス・シャルクが加わった。スペイン人監督の下に北欧系の選手を揃えるという面白い編成である。

 その両チームの外国籍選手たちが監督同士の対抗心を受け止めたかのように熱い気持ちを前面に出して戦い、外国籍選手同士がにらみ合う場面が何度も見られた。

 古い話で恐縮だが、1990年代にJリーグが開幕した当時、Jクラブの財政規模はヨーロッパと大差なかったため、現役のブラジル代表選手が何人もJリーグでプレーしていたものだ。

 そんな時代に、たとえば鹿島アントラーズと横浜フリューゲルスが対戦すると、両チームのブラジル代表選手たちが対抗意識をむき出しにして戦って、毎試合のように熱い戦いを繰り広げられたものだ。FC東京と浦和レッズの外国籍選手たちが見せた激しいプレーを見ていて、そんな古い時代のことまで思いだしてしまった。

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