ビーチバレーボールの国内ツアー開幕戦、『マイナビ ジャパンビーチバレーボールツアー2017 第1戦東京大会』(5月3日~5日)が、東京・お台場で行なわれた。 3年目のシーズンとなる注目の坂口佳穂(21歳/マイナビ)は、藤井桜子(26歳…

 ビーチバレーボールの国内ツアー開幕戦、『マイナビ ジャパンビーチバレーボールツアー2017 第1戦東京大会』(5月3日~5日)が、東京・お台場で行なわれた。

 3年目のシーズンとなる注目の坂口佳穂(21歳/マイナビ)は、藤井桜子(26歳/市進ホールディングス)とのペアで1回戦を突破したものの、2回戦で敗退。その後、敗者復活戦にも敗れて、最終順位9位で今季初戦を終えた(今大会はダブルエリミネーション・トーナメント方式)。



国内ツアー開幕戦に臨んだ坂口佳穂 前述のとおり、坂口の今シーズンのパートナーは藤井となった。藤井も5年目の若いプレーヤーだが、高校時代にはジャパン女子ジュニア選手権を制し、高校日本一になっている。2014年には、国内ツアーで優勝。日本代表として仁川アジア大会でも戦っており、豊富な経験を持つ。

 藤井のよさは、パワフルなスパイクと闘志あふれるプレー。彼女がいかに坂口の能力を引き出し、チームとしてのポテンシャルを高めていくかがニューペア上昇のカギとなる。坂口も「(藤井は)プレーは力強いし、経験もあるのでパートナーとして頼りになる」と話す。

 1回戦では、そのニューペアのよさが存分に発揮された。

 第1セットは動きが硬く、立ち上がりから松山紘子(31歳)&坂本実優(25歳)ペアにリードを許す展開。そのまま18-21でセットを落としてしまったが、「試合の初めは緊張していたが、力を抜いてプレーできるようになってからうまくいった」と坂口が語るように、第2セットでは動きが一変した。

 戦術的にも、ブロック力が向上している坂口をブロッカーとしてネットにつかせ、藤井がレシーバーとして後ろから指示をするディフェンスシステムに変更。それによって、第1セットでやられていた坂本の軟打にも対応した。

 さらに、サーブの質も変えて、調子のよかった坂本ではなく、松山にボールを集中させた。「そこが試合のポイントだった」と藤井が語るとおり、その戦法が見事に功を奏した。相手のミスを誘って勝負の流れを引き寄せると、坂口のスパイク、藤井のサービスも決まり出して、第2セットは21-12でモノにした。

 完全に勢いに乗った坂口&藤井ペアは、第3セットも15-6の大差で奪取。セットカウント2-1と逆転勝利を飾った。



1回戦では逆転勝利を飾った坂口(右)&藤井ペア だが一転、2日目は厳しい試合を強いられた。

 2回戦では、昨年の坂口のパートナーである鈴木悠佳子(29歳)と、現在「ナンバー1プレーヤー」の呼び声もある石井美樹(27歳)ペアと対戦。難敵相手にまったくいいところがなかった。

 第1セットから、石井の重いサーブが標的となった坂口を襲う。坂口はたまらずレシーブミスを連発。前日のようにブロックやサーブなどで変化を試みても効果はなく、反撃の糸口をまったく見つけられないまま試合は進んだ。そして最後も、石井のサーブを坂口が弾いて試合終了。0-2(7-21、10-21)という完敗を喫して、坂口は天を仰いだ。

 続く敗者復活戦でも悪い流れは変えられなかった。

 坂口と同学年の石坪聖野(21歳)&柴麻美(21歳)ペアに対し、第1セットを14-21と簡単に落としてしまう。第2セットこそ、決して調子がよくはなかった石坪&柴ペアのミスにも助けられて21-12で奪ったが、1回戦のときのようにそこで流れをつかんだわけでもなかった。

 第3セットは序盤に点差をつけられると、一向に追いつくことができず、正確性を欠いたプレー、連動性のない攻撃が目についた。その挙句、焦る気持ちばかりが先走って、最後もその姿をあざ笑うかのように軟打を落とされてゲームセット。セットカウント1-2で敗退した。

 試合全体を通して、相手の軟打主体の攻撃に対応できずじまい。坂口のブロックの後ろに難なくボールを落とされ、失点を重ねるシーンが目立った。攻守において藤井との息が合わず、掛け合う声も次第に小さくなっていった。

 坂口は肩を落として試合を振り返る。

「(相手が)強打で攻めてこないことはわかっていたが、対応できなかった。そのうえ、ミスが多かった」

 シーズン前にはアメリカ・ロサンゼルス合宿を2度行なって、基本技術の土台作りから十分な練習を積んできた。その成果について、坂口が語る。

「個人的には、パス、トスの技術、決定力のアップなどをポイントにして合宿をこなしてきた。それで、スパイクなどはよくなっていると思う」

 ただ、それが結果としては表れなかった。坂口は、「よくなっている部分もあるけど、試合ではまだ調子に波がある」と言って、唇を噛み締めた。

 指導する瀬戸山正二コーチは、今大会の敗因についてこう分析する。

「ひとつひとつの技術は、それほど悪いわけではなかった。試合のリズムが作れない、勝負どころがわからなかったなど、チーム力が足りなかった」

 確かに、連続失点を重ねたり、有利である風下側のサイドで得点できなかったり、試合の流れを自ら手放す場面は結構あった。

 とはいえ、坂口個人の技術だけをクローズアップすれば、スパイクの強度やブロック時の動きなどは昨シーズンより上回っており、確実に進歩の跡が見られた。今後もこうした敗戦を糧にして、さらなる成長を重ねていくことが大事だ。

 あるベテラン選手が言う。

「やはりビーチは経験のスポーツ。過去のオリンピック選手でも、初めは(結果が出せない今の坂口と)同じだった。(厳しい状況ではあるが)坂口も今をいかに耐えられるか、我慢できるかだと思う」

 シーズンはまだ始まったばかり。我慢の時を経て、第一関門であるベスト4入りを果たす日は必ず訪れるはずである。

 全9戦行なわれる今季のジャパンビーチバレーボールツアー。坂口&藤井ペアが歓喜する瞬間を心待ちにしたい。



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