埼玉・むさしの村ローンテニスクラブを練習拠点とする住澤大輔にインタビュー今年1月に開催された全豪オープンで3回戦進出を果たしたダニエル太郎(エイブル/世界ランキング104位)がかつて練習していた埼玉…

埼玉・むさしの村ローンテニスクラブを
練習拠点とする住澤大輔にインタビュー

今年1月に開催された全豪オープンで3回戦進出を果たしたダニエル太郎(エイブル/世界ランキング104位)がかつて練習していた埼玉・むさしの村ローンテニスクラブ(以下MLTC)。ここを練習拠点としているのが、山崎*純平(日清紡ホールディングス)、齋藤惠佑(富士住建)、住澤大輔(橋本総業ホールディングス)、正林知大(Team REC)の4選手である。2年ほど前から一緒に練習し、切磋琢磨している4選手に迫った。

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第3弾は、住澤大輔にインタビュー。ジュニア時代には、2011年全国選抜ジュニア12歳以下男子シングルスや2016年全日本ジュニア18歳以下男子ダブルスで優勝するなどトップレベルで活躍。2017年にプロ転向し約5年が経つ今、どのようにテニスに取り組んでいるのか聞いた。



――練習拠点をMLTCにした経緯について、教えてください。
MLTCにはちょうど新型コロナウイルスが流行する直前ぐらいに来たので、約2年が経ちました。MLTCに移った理由は、テニスに集中できる環境が整っているから、という点です。以前は神奈川の実家から拠点としていたテニスクラブに通っていて、プロなどの選手たちがいるところ(都内)へ練習しに行ったりしていました。それだと移動時間がかかったりして、なかなか効率よく時間を使えないなと思っていたんです。そこで、実家を出て自分で生活して、練習はこちらでお世話になることにしました。練習するための移動時間もなくなり、午前・午後に練習してその後トレーニング、というタイムスケジュールをきっちり組んで練習できる。それが一番のメリットかなと思っています。

――武正真一コーチとはジュニアの頃からやりとりがあったのでしょうか?
ジュニアの頃のコーチが武正コーチと面識があって、たまにMLTCで練習させてもらっていました。武正コーチは、本当にテニスに対して熱い気持ちを持っていて、そういうことが練習をしていてもとても感じました。また、プロに転向して1〜2年目は納得のいくような成績がなかなか出ず、“何か自分に変化が必要なのかな”と捉えて、少し大きな変化をと思ってここにきた、ということもあります。

「サーブを生かしたダイナミックなプレーが持ち味」

――日々の練習は、基本的に午前2時間(10:00〜12:00)、午後2〜3時間(14:00〜16:00/17:00)行い、トレーニングを2時間(16:00/17:00〜18:00/19:00)行っているんですよね。
そうですね。内容については、午前中は基本的な練習を、午後はサーブからのポイント形式など、午前中にやったことを実戦でどう生かしていけるか、というふうに練習しています。MLTCでは僕を含めてプロが4人いますが、同じメニューをやっていても、それぞれプレースタイルが違って課題も違うので、僕だったら“この練習の時は、こうしたところを意識する”というふうに取り組んでいます。



――住澤選手はどのようなことを意識して練習していますか?
プレースタイルとしては、僕はベースラインからストロークでウィナーを狙っていくのではなく、徐々にコートの中に入っていって、最終的にはネットに出てボレーで決めていく形を意識しています。そこで、午前の練習ではベースラインでのストロークからネットプレーにつなげることを意識して練習し、午後はサーブからの3球目、つまり相手からのリターンに対してどう展開していくのか、そのあたりを今は重点的に練習しています。

――重複するかもしれませんが、自信のあるプレー、または得意なところはなんですか?
サーブを生かしたダイナミックなプレーだと思っています。あとは、フットワークに自信があるので、走りまくって、ボールを拾って、拾って……というプレーですね。フットワークを生かして、タイミングを早くして前に詰めていく展開など、サーブからの展開とフットワークの素早さが長所ではないかなと思っています。

――ジュニアの頃は小柄なイメージがありましたが、今は身長がかなり伸びましたよね!
身長は、高校1〜2年生ぐらいから伸びてきて、プロになったあたりぐらいでかなり伸びました。ジュニアの頃はサーブが武器なんて全然言えませんでしたね(笑) オールラウンドにプレーしていたと思います。自分の長所に関しては、武正コーチが各選手に対して明確に伝えてくれるんです。僕だったら、“大輔はサーブとフットワークがいいから、そこをさらに磨いていこう”という感じで。わかりやすく長所を教えてくれて、そこを伸ばしていこう、磨いていこう、と言葉にして伝えてくれます。自分としても、“あ、ここを武器にしてやっていっていいんだな”と自信を持てるし、“ここをもっとやっていけばいいんだ”と明確な方向性を持って取り組むことができます。逆に、今まではそういうことを言われたことがなかったので、そういう面でも新しい刺激になっています。今は試合になっても、“ここはオレの武器だ”って自信を持って臨めています。



――得意のサーブはどのようなことを意識して打っていますか?
まずは消極的にならないようにしています。リターンゲームの時など、ストローク戦が続いてうまくポイントが取れなかった時に消極的になってしまいがちですが、サービスゲームは自分から始まるゲームなので、サーブでは積極的にプレーしよう、と心がけるようになりました。逆に言えば、今はサーブがあるからこそ、消極的なほうに気持ちがいっていたとしても、“よっしゃ! もう一回サーブから積極的にいこう!”というふうに流れを自分の中で変えていこうという意識につながっていますね。

「サーブではトスを変えずに
球種を打ち分けられるように意識しています」

――重点的に取り組んでいる課題は、どんなところですか?
あまり言いたくはないんですけど(笑)、やっぱり自分の中でサーブが一番の武器だと思っているので、サーブの打ち込みを結構やっています。単にサーブを打つだけではなくて、確率やサーブを打ってからの3球目をどう打ってポイントにつなげていくのか、といったことを意識していますね。特に今はサーブから次の展開までを意識した練習に取り組んでいます。ファーストサーブが入れば、自分のやりたいプレーの方向にどんどん進んでいくことが多くなってきているので、その点はここ1年半ぐらい取り組んできた成長なのかなと感じています。
基本的にファーストサーブはフラットで押していこうと思っていて、セカンドサーブでは確率を重視する時はしっかり回転をかけること。そして、タイミングを外したり、コースを浅めに打ったり、または深くするといったことを意識しています。

――サーブは、コースを狙うのが得意ですか? もしくは回転をかけるほうが得意ですか?
コースを狙うほうが得意だと思います。コースを打ち分ける際に意識しているのは、トスを変えないで打つこと。例えば、スライスサーブだとトスを打ちやすいように体の遠くから打ってボールの外から回転をかけたり、スピンサーブだったらちょっとトスを落として下から上にかけるという方法があると思います。でもそれだと、トスで相手に球種がバレてしまうんですよね。そのあたりは一番意識しているところで、トスを変えずにいろいろな球種のサーブを打ち分けるようにしています。



――実際にスピンサーブとスライスサーブではどのように打ち分けているのですか?
そこまであまり意識したことはないんですけど……トスを変えずに体のねじり具合を変えたりしているかなと思います。コースを隠して外側から打つとスライスサーブになったり、体をそこまでひねらずに少し下に入り込んで打てばスピンサーブになるので、そのようなイメージで打ち分けています。サーブを打ち込んでいく中で、どうやって相手にバレずに打ち分けられるか、自分で研究しながらやっていますね。サーブはどんな時でも、一人で練習できるショットです。ストロークなど他のショットはラリーの相手が必要ですが、サーブは自分一人だけで練習できるので、そのあたりは意識してやっています。

「団体戦で勝つのは、個人戦よりも何倍もうれしい」

――高校卒業後プロに転向して5年ほど経ちますが、その中で印象的だったことを教えてください。
印象に残っていることは結構ありますが、一番は、今所属している橋本総業のチームの一員として日本リーグ(第34回)で優勝したことです。男子チームが設立して1年目から所属させていただいていますが、実業団チームとして東京都リーグから出場し、関東リーグ、全国リーグと勝ち上がっていって、4年目にしてようやく日本リーグで優勝できたことがとてもうれしかったです。僕は今までのテニス人生で、団体戦を経験してこなかったんですね。高校も通信制だったので、インターハイなどもありませんでした。そういう意味で、プロになってから団体戦を戦って、チームで勝利する喜びや日本一になったことが、自分の中ではとても印象に残っています。
団体戦では、試合に出場した際に緊張したりプレッシャーも感じますけど、勝って結果が出れば個人戦で優勝するよりも、さらに何倍もうれしいんだなと感じました。普段、団体戦をする機会は年に一度の日本リーグぐらいなので、他にも出場できる機会があったら出てみたいなと思います。



――橋本総業にも練習できる環境(吉田記念研修テニスセンター[TTC]・千葉)はありますよね。そちらでは練習していないのですか?
そうですね、普段の練習はしていなくて、チームでの練習会や日本リーグ前の合宿などが行われる時は、TTCで練習することもあります。ここMLTCで練習して、なおかつTTCでも練習できる機会があるので、環境は充実していますね。

――昨年(2021年)を振り返ると、どのような1年でしたか? 
一昨年(2020年)は新型コロナウイルスの影響もあって、あまり試合を回ることはできなかったんですけど、昨年はしっかりとスケジュールを立てて海外の試合に出場できました。年始はエジプトやトルコに、全日本選手権前にはヨーロッパにも行くことができ、その中でも海外のランキング上位選手と戦えて、勝つこともできました。MLTCで取り組んできた練習は間違っていなかったんだなと思うとともに、自分のプレースタイルを貫いてやっていける、ということをとても実感できた1年でした。それでも、まだまだ連続して勝っていくのは難しく……予選から勝ち上がって本戦でも勝ち進んでいくことの難しさを痛感した1年でもありましたね。

――連続して勝つためにどのように取り組んでいこうと思いますか?
試合は毎日、毎週と続いていくので、単に練習するだけでなく、少し試合を意識したポイント練習を増やして、練習時でも“試合が毎日ある”ということを意識するようにしています。日によって調子は変わると思いますが、練習だからといって、“今日は調子が悪い。あーダメだ”とか、または“今日は調子がいいな、どんどんいこう”というふうに調子の波があると、それが試合にも出てしまうと思うんです。そうした波を練習で減らすことで、試合で調子が悪くても“練習の時に、これぐらいでもこんなプレーができたな”と、下がることなくキープしていけると考えています。大会は1週間続くので、調子を維持していくのがとても重要です。試合を想定して練習することが大事だと思っています。



――2022年はどのように活動する予定ですか?
今年は短い期間で、海外のクラブなどを拠点にやってみたいなと考えています。例えば、アメリカやヨーロッパのクラブに行って、練習しながら試合に出場する。また、そこへ戻って練習して試合に出る、という形を予定しています。新型コロナウイルスの影響で日本に帰国すれば隔離期間が設けられる場合もあり、その期間がもったいないので、今年は海外にいてツアーを回ってみたいと考えています。

「オリンピックで国の代表として戦ってみたい」

――今年の目標を教えてください。
第一優先は、世界ランキングを上げることです。今はまだ1000番台なので、500番台ぐらいにまで上げたい。今年の後半ぐらいまでには、フューチャーズをしっかり勝ち上がって、チャレンジャーにも挑戦していけるぐらいのランキングまで上がりたいと思っています。そして、去年はフューチャーズのダブルス(M15カイロ大会/7月26日〜8月1日/エジプト・カイロ/クレーコート/賞金総額1万5千ドル/ペア:齋藤惠佑)で優勝できたので、今年はシングルスでも優勝を狙います。

――将来の夢はありますか?
グランドスラムで勝ち上がられるような選手になりたいです。あとは、オリンピックに出場したいという気持ちがあります。昨年の東京オリンピックを見て、日本を背負ってプレーをしたい、ということをすごく感じました。テニスを含めて、普段のニュースではあまり報道されない競技でも、オリンピック期間中はたくさん報道されていて、いろいろな人に見られる機会が増えて感動を与えられるんだなと思いました。もちろんグランドスラムで勝てば報道されますが、オリンピックで日本を背負って勝つことは、また違ったものがあるのかなと。テニスだけではなく、新種目のスケートボードや野球などさまざまなスポーツを見て、やはり多くの人たちに感動を与えられるし、そのスポーツをさらに盛り上げることもできるのではないかなと感じました。スケートボードは競技人口も増えているという報道もあるので、テニスももっともっと盛り上げていきたいなと感じています。




〈武正コーチから見た住澤大輔〉
大輔は、厳しい練習や激しいトレーニングに対して先陣を切ってチャレンジしていくタイプです。性格的に挑戦するタイプで、明るくてみんなを盛り上げていく、という感じですね。体については柔軟性が非常に高く、日々の努力の賜物だと思っています。テニスでの大輔のよさは、サーブからのネットプレーで、とても器用な選手です。試合では自分のプレースタイルをしっかり出していけるように、もっと自信を持てるといいと思います。いいものを持っているので、あとは本当に自信だけですね。


MLTCで充実した練習ができていると笑顔を見せていた住澤。実際に、2月上旬に行われたJOP大会(キープスマイリングツアー)では単複で優勝し、結果を残している。ボレーやスライスなどタッチ系ショットも器用にこなす住澤の今後の活躍に注目だ。



【プロフィール】Daisuke Sumizawa(すみざわ・だいすけ) ■プロテニスプレーヤー ■所属:橋本総業ホールディングス ■1999年1月31日生まれ(23歳)、神奈川県横浜市出身 ■身長175cm、体重67kg ■右利き(両手打ちバックハンド) ■プロ転向:2017年 ■ATP世界ランキング1093位(2022年4月4日付)、JTAランキング47位(2022年4月5日付)


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