村田諒太、VSゴロフキンへ「ちゃんとやって、ちゃんと勝ちます」 日本ボクシング史上最大の試合が迫っている。9日にさいたまスーパーアリーナで行われるWBA世界ミドル級スーパー王者・村田諒太(帝拳)とIBF王者ゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタ…

村田諒太、VSゴロフキンへ「ちゃんとやって、ちゃんと勝ちます」

 日本ボクシング史上最大の試合が迫っている。9日にさいたまスーパーアリーナで行われるWBA世界ミドル級スーパー王者・村田諒太(帝拳)とIBF王者ゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)の王座統一戦。期待されるのは、ハードパンチャー同士による“究極のド突き合い”だ。歴史的選手との一戦へ、不利予想を受ける村田は一つだけプランを明かしている。戦績は36歳の村田が16勝(13KO)2敗、40歳のゴロフキンが41勝(36KO)1敗1分け。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)

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 昨年11月の対戦発表時、ネットでは村田の勝敗について悲観的なコメントが多かった。いわゆるアンチとされる人たちが記すのは散々な内容。しかし、その中にも「そんな自分を見返してほしい」「1%の可能性に夢を見たい」などと付け加える人が目立った。ワンチャンスを期待してしまうのが、村田の右拳なのだ。

 3月3日の囲み取材は緊張感が漂っていた。延期を経て、今度こそ行われるビッグマッチ。村田が明かした試合プランは、たった一つだった。

「僕が詰めていく。その展開だと思います。あとは彼がどう対応するか」

 村田の強靭なフィジカルに裏打ちされた鉄壁のガードは、ミドル級屈指のレベル。階級内でも長身とされる182センチの体で壁を押し込むように圧力をかけ、相手を後退させながら追い詰めていく。右の強さもハイレベル。一撃必殺に近い右ストレートや左ボディーで仕留めるのが、これまでの勝ちパターンだった。

 ゴロフキンは179センチ。サイズでは村田が有利だ。ただ、相手はスピード、テクニック、対応力もある。村田の強打がどれほど当たるのか、本当にゴロフキンを後退させられるのか。手を出さなければ、一方的に相手の拳を受けてしまう。17戦連続KO防衛を果たした異次元パンチャーの連打に耐えられるのか。

 村田が「詰める」という展開は、防御力を駆使した接近戦からのド突き合いだろう。ゴロフキンは付き合うのか。過去の試合前の村田は、内容の真偽は別として戦術を明かすことが多かったが、今回ばかりは口を閉ざした。「ファイトプランがあるがゆえにあまり話したくない」。取材エリアの緊張感はさらに増した。

 3月28日の公開練習でも、接近戦を試みること以外は明らかにしなかった。「1ラウンド目が勝負になると思います」。2019年7月、ロブ・ブラント(米国)との再戦で2回TKO勝ちの王座奪還。この試合も第1戦で完敗した村田が圧倒的不利と予想されていた。しかし、これまでの防御重視のスタイルを一変させ、魂の豪打で燃えるような大歓声を浴びながら番狂わせ。今回、もう一度リングを燃やせるのか。

試合を実現させた帝拳ジム会長の信頼「予想は1対9になるかもしれないが…」

 本来なら昨年末に行われていた試合。コロナ禍で延期になり、調整期間を多く得られた。秘めたプランは延長があったから固まったものなのか。「間違いないです」。断言した日本人王者は「試合が12月だったら時間が足りていなかった。スパーリングの量も含めて足りていなかったですね」と付け加えた。

 帝拳ジムの浜田剛史代表は「時間が十分にあったので、いろんな練習ができた。今、完成に近い状態にあるんじゃないか」と自信を見せた。本田明彦会長も「村田に一番期待するのは、頭と気持ちの強さとガード。ここで勝負するしかない」。ガードと強打を最大限に生かしつつ、新たな引き出しで捕まえる青写真。ボクシングオタクを自負し、知略家の村田が立てた戦略は期待を膨らませる。

 悲観的な声が多いのは百も承知。それもそのはず、ゴロフキンに1勝1分けの「カネロ」こと世界4階級制覇王者サウル・アルバレス(メキシコ)を除き、世界中どんなボクサーもゴロフキンを前にすれば分が悪い。心から応援するファンでさえも、村田の不利を理解している。今回対峙するのは、それほど歴史的に強い選手なのだ。

「勝算はありますか」。問われた村田は強く返した。

「勝算という言葉は使いたくない。ちゃんとやって、ちゃんと勝ちます。勝算があるかって言われると、『勝てねぇだろ』って言われている気持ちになるわけですよ。そういう気持ちがないわけです。勝てないと思っていない。勝てないという気持ちでリングに上がらない」

 日本のボクシング界を約50年間見てきた本田会長は、ビッグマッチ実現に尽力した。負けるとわかって試合を用意するはずがない。「予想は2対8や1対9になるかもしれません。でも、私はかみ合うと信じています」。期待されるのは究極のド突き合い。悲観的予想を拳で覆せ――。(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)