つい先日までは、強いパーマのかかった黒髪を根元で編み込んでいた風だった。しかし5月10日という日は、ヘアの波を整髪剤などで引き延ばし後方へなでつけてきた。「ビジネス」のドレスコードがかかった一大イベントを終え、ラグビー日本代表の堀江翔太は…

 つい先日までは、強いパーマのかかった黒髪を根元で編み込んでいた風だった。しかし5月10日という日は、ヘアの波を整髪剤などで引き延ばし後方へなでつけてきた。「ビジネス」のドレスコードがかかった一大イベントを終え、ラグビー日本代表の堀江翔太は言った。

「どの国が来ても強いと思っていた。いいことと言えば、どんな準備をしなきゃいけないかが明確になったこと。それが選手のモチベーションになればいいかな、と」

 この日は京都迎賓館で、4年に一度あるワールドカップの2019日本大会・プール組分け抽選会があった。日本代表はプールAでアイルランド代表、スコットランド代表、さらには未決定の「ヨーロッパ地区予選1位」「ヨーロッパ地区とオセアニア地区のプレーオフを勝ち抜いたチーム」とぶつかることとなった。

 くじびきをスーツ姿で見つめていた堀江は、一緒に会場にいた日本代表選手たちとの会話を「皆、僕と一緒の考えだった」と明かす。2019年9月の開幕まで約2年。前回のイングランド大会では副将を務めた31歳は、改めて誓った。

「どの国が良かったとか、話は一切してないですね」

 アイルランド代表は今年3月、イングランド代表のテストマッチの連勝を18でストップ。6月には来日して日本代表と2連戦をおこなう予定と、国内外で注目を浴びている。日本代表は本番で、「ヨーロッパ地区予選1位」を含めた3つのヨーロッパ勢とぶつかることとなった。相手の特徴を鑑み、HOの堀江はこうも話す。

「ヨーロッパはフィジカル。セットプレーで攻めてくることも多いと思うし、身体の大きい選手も多い。こちらのFWの選手がどれだけ対応できるか…というところ。(対戦の続くアイルランド代表との)駆け引きはスタッフがやることなので、選手は目の前のことを100パーセントやるだけかな、と思っています」

 前回は南アフリカ代表を撃破するなど歴史的な3勝を挙げながら、8強入りはならず。昨秋着任のジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチのもと、悲願の準々決勝進出を目指している。

 もっとも、話が同大会で唯一敗れたスコットランド代表に及んだ際、こんな調子で先を語っていた。

「あの時のメンバーがどれだけ次にも出るのかは、わからない。僕自身も、あのワールドカップはもう過去のことだと思っていて。あの試合がどうのこうのといったことは、あまり思っていないです。(2019年には)新しいスコットランド代表が来るでしょうし、戦術戦略も変わると思う。僕らのチームがどれだけひとつになって、どう準備をして、それをどれだけ理解するかにフォーカスしたいですね」

 以前カメラを向けられた際、対戦したい国にニュージーランド代表やイングランド代表を挙げたことがある。特にイングランド代表は、前日本代表ヘッドコーチのエディー・ジョーンズが率いるチームだ。

 ジョーンズ本人が「イングランド代表が日本で支持されていることを私は知っています」と言うように、ジャパンとの直接対決を望むファンも多かった。もっともこの日になれば、堀江は「あぁ…。それは、テレビ的なコメントじゃないですか。ハハハハ!」と笑顔を浮かべる。

 事実、件のカメラに対応した際もこう付け加えている。

「あそこがええな、あそこがよかったな、と言う前に、決まった相手に対してどんな準備をするかが大事」

 のびやかな口調に、毅然とした態度をにじませる。(文:向 風見也)