「スペイン代表が(スカウトとして)声をかけてこないなら、日本代表のスカウトになって秘策を授けよう(笑)」 『Web Sp…
「スペイン代表が(スカウトとして)声をかけてこないなら、日本代表のスカウトになって秘策を授けよう(笑)」
『Web Sportiva』で日本代表を分析するご意見番のひとり、スペイン人指導者ミケル・エチャリはそう言って、カタールW杯グループリーグでスペインが日本と同組になったことを祝った。
昨今、スペインのサッカー関係者が日本と関わりを持つ例が増えている。
Jリーグで指揮を執ったミゲル・アンヘル・ロティーナ、フアン・マヌエル・リージョはスペイン国内でもトップレベルの名将。ルイス・カレーラスのような目を覆う失敗例もあったが、リカルド・ロドリゲス(浦和レッズ)、アルベル・プッチ(FC東京)、リュイス・プラナグマ(ヴィッセル神戸)ら、母国ではほぼ無名ながら、J1で采配を振るスペイン人は今や少なくない。
神戸に在籍するアンドレス・イニエスタを筆頭に、選手も続々と入ってきている。
「イニエスタに、どのようにスペインに勝つべきか、聞くつもりです」
スペイン大手スポーツ紙『アス』は、森保一監督のそんなコメントを紹介している。はたして、日本がスペインに勝つチャンスはあるか。

東京五輪で対戦したペドリと久保建英。カタールで再び相まみえるか
筆者はスペイン、バルセロナで5年間、サラマンカで1年間生活し、他にもラ・コルーニャ、グラナダなどで長期滞在を経験している。大きなスタジアムから小さなスタジアムまで訪れ、有名選手から無名選手まで取材を続けてきた。スペインには盟友と言える人間がいる。冒頭のエチャリだけでなく、かつて神戸を率いたリージョもそのひとりだ。
過去30年間で、スペインと日本のサッカーの「距離」は確実に近づいてきた。
同時に、日本が勝てる確率は高まってきたと言える。「10回戦ったら必ず10回敗北する」という可能性は限りなく低い。何かが起きるところまで、日本は強くなった。
カテゴリーは違うが、2012年のロンドン五輪でも日本は優勝候補の筆頭だったスペインを鮮やかに撃破した。永井謙佑を中心にした"鬼のプレッシング"によって、スペインDFをいらつかせて退場処分に追い込み、虎の子のカウンター1点で金星を挙げている。「こんな戦い方をするチームとやったことはない」とスペインの選手を唖然とさせ、"奇襲"が功を奏した形だ。
全盛期は10年前、無敵ではない
ただ、その時と同じ戦いを志向するべきではないだろう。年齢制限のある年代では思いどおりにいかないことに対する耐性が弱く、メンタル的問題が出やすいと言える。そのためユース年代では大番狂わせが多く、日本も1996年のアトランタ五輪は当時最強を誇ったブラジルを下して「マイアミの奇跡」という歴史を作り、1999年のワールドユースでは準優勝している。
しかし、歴戦の強者が揃うフル代表の選手は、すぐ戦いに適応し、切り替えることができる。極端なプレッシング程度で面喰ったりしない。試合中、何度も攻め手、守り手を変える修練を積んでいるのだ。
スペインは単純に強い。ペドリは世界最高のサッカー選手と言えるし、その彼がセルヒオ・ブスケッツと並ぶと、"無敵感"が出る。各ポジション、少々ケガ人が出たとしても、ほとんど同じレベルでバックアップがいる。
ただ、無敵ではない。実際、前回のロシアW杯ではどうにかベスト16に進んだが、史上最弱の開催国のひとつ、ロシアに敗れ去った。大会開幕の前々日に監督が交代する騒動も影響したが、つまりはそういう問題を抱える国なのだ。
スペイン代表が真にひとつになったのは、EURO2008で名将ルイス・アラゴネスが率いて優勝したあたり。後を継いだビセンテ・デル・ボスケが2010年の南アフリカW杯、EURO2012で優勝し、一時代を築いた。しかし名将の統率力でひとつになっていたが、本来スペインはひとつではない。各地域、民族同士の遺恨は消えず、それが国内サッカーの醍醐味にもなっているほどだ。
「マドリードに対し、恨みを持っている」
今のスペイン代表を率いるルイス・エンリケ監督は、そう揶揄されている。現役時代、レアル・マドリードで不遇を囲ったが、移籍したFCバルセロナでは優遇され、その後は監督を経験し、タイトルも獲得した。必然的にバルサ寄りとなるだけに、レアル・マドリードからひとりも代表選手を選出しないという決断を下した時には、マドリードメディアの猛反発に遭っている。
メディアの関心も決勝トーナメント以降
戦力的にはドイツよりも強いが、ドイツにある骨太感はない。そしてスペインは日本に対し、慢心を消し去ることはできないはずだ。
「ベスト16、ベスト8で当たるのはどこの国? 優勝までの道筋は?」
今回の組み合わせ後、スペインメディアはそんな調子で報じていた。日本に関しては、「攻撃にいい選手はいるが、戦術的には発展途上」というのが総合的評価。日本が最終予選でオマーンやベトナムなどと同組になった時と似た意識だ。
「Jリーグのレベルに驚いた」
日本に来たスペイン人関係者はそう言うが、リップサービスもあるにせよ、日本を"その程度"と捉えていたことの裏返しと考えるべきだろう。
しかし、日本の技術、俊敏性を生かした連係は世界に通じ、久保建英、三笘薫、鎌田大地は武器になる。吉田麻也、冨安健洋、酒井宏樹はどの国の代表でもメンバーに入っておかしくないディフェンダー。遠藤航、田中碧、守田英正、橋本拳人といったMFも実力者だ。
「(古橋)亨梧は欧州のトップと比べても遜色はない」
リージョはそう語っていたが、古橋、南野拓実、上田綺世は強豪国を脅かすゴールセンスの持ち主である。
臆する必要はない。一発勝負はサイコロを振る「度胸」と粘り強さがモノを言う。なんとか勝ち筋を見つけたい。